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全ては見抜かれている

 人種の希望のために俺は笑顔でキャス様が出した魔導門(ゲート)に向かう。



「必ず! 私の元に帰ってきてくれ!」

「うん、頑張ってみるよ。 でもそれまでにその口調は直しておいてほしいな?」


 赤面するアラスカを見てからマトゥルお姉さんに目を移すと、にっこり笑って手を振ってくる。



「貴様も男なら口にした事は必ず実行しろ!」

「はい! ギルガメシュ兄さん」



 見送りに来ていた人たちに目配せをしていく。

 結局キャロはキャロのお父さんの前に姿を見せることはないままだった。







 キャビン魔道王国に戻った俺たちはキャビン女王様と【魔法の神エラウェラリエル】様の元に集まる。

 ここでも魂抜きの籠手の事が話されて、【魔法の神エラウェラリエル】様が【闘争の神レフィクル】様が神になる前の伝説の話を話してくる。



「あくまで私も聞いた話です」


 そう前ふりをしてから、俺の前に魂抜きの籠手を使ったのが誰か、その後どうなったのかも教えてくれた。

 まさかそれが先代の【魔法の神アルトシーム】様で、魂抜きの籠手のせいで命を落としたことまで教えられた。



「つまり俺も籠手に乗っ取られて死ぬんですね?」

「……かもしれません。 ですが、実際には……」

「わかりました! ではそうなる前に急いだ方が良さそうですね」


 空元気で答える。 この籠手をつけてコマンドワードを言った時から覚悟はしていた。



「それではセーラム、マイセン、リセスド、セドリック、それとディルムッド。 あなた達に世界を託します……」

「ウェラお姉ちゃん、任せておいて!」



 ここで【魔法の神エラウェラリエル】様からキャビン女王様に変わって作戦の方に映る。

 向かう先はここキャビン魔道王国から北に向かったところにある大山脈にあるロミオ・イ・フリエタ。

 その道中にあった宿場町は空中から調査した限り全滅だと言う。

 つまりはロミオ・イ・フリエタまで安全といえる場所は無いに等しく、更にはロミオ・イ・フリエタのある大山脈までは徒歩で10日はかかるのだそうだ。

 また【魔法の神エラウェラリエル】様、キャビン女王様、キャス様の魔導門(ゲート)は全て見事なまでに何かが阻害していて開くことができなくなっている。 便利だと思われる魔法も、結構制限や制約が多いようだ。



「ちょいと待ってもらえますかな? いくらなんでもむちゃくちゃすぎやしませんかな?」


 今まで黙って聞いていたが、ここでセドリックが我慢が出来なくなったようだ。



「まるで苦行を強いられている」


 リセスドも難色を見せながら呟いた。


 ともいう俺も大山脈の側ぐらいまではなんとかなるとばかり思っていたため、この行程はあまりにも投げやりすぎるように思う。


 するとキャビン女王様も申し訳なさそうな顔を見せて、キャス様の方へ顔を向ける。



「実はね、こういうことになる可能性も考えて本当はある人物も探していたんだ。 だけど、残念ながら彼女は見つからなかった……」

「あー……ブリーズ=アルジャントリーかぁ」


 ここにきてまた見知らぬ名前が出てきた。

 ディルムッドは歌姫? と知っているような感じだった。


 キャス様が言うにはその人が使う移動魔法があれば一気にとはいかないけど、安全に大山脈まで移動できたんだそうだ。



「なぜ見つからないんですか?」

「彼女は時や空間を操れるからね。 ディルムッドはララノア女王を知っているから見たことあるでしょ?」

「もちろんだが、歌姫は人間ではなかったかな? 今も生きているはずが無い」

「えーっと、いろいろとあって説明すると長くなるから省くけど、生きてるよ、姿を一切変えずにね」


 知っているようなそぶりを見せたセーラムは驚くことはなく、ディルムッドだけが驚いていた。



「全くさすがにいない人を頼りにされても、こっちは困るというものですな。 こんな事ならある程度腕に覚えがあるもの全員呼び寄せればよかったんじゃ無いですかな?」


 いつも冷静なセドリックが顔色こそ変えていないものの言葉に怒りがこもって見える。



「そこでセーラムに頼みたいんだけど、オルに運んでもらう事は出来ないかな?」

「んー、オル君だとたぶん全員は乗せれるほど大きくないと思うよ。 せいぜい2〜3人かも」

「そうかぁ……セーラムは自身で飛べるからいいとして、マイセンには行ってもらわないといけないからなぁ。 聞いてきてもらえるかな?」

「うんー、じゃあちょっとだけ行ってくるね」


 そう言うが早いかセーラムの姿が消えてしまうし、話の内容がもはや俺にはついていけそうにない。


 どうするか決まるまでの間、俺は自身の手にはまっている籠手を見つめる。


 不気味にも見えるその籠手は、今や俺の手同様に軽く触れても触った感覚がわかり、金属っぽさも感じられない。


 伝説となる話からすればこの籠手には肉体から魂を抜き取る力がある。

 だけどナーサイヴェルと戦った時は、キャロのお父さんを抜き取った。 あれは表にナーサイヴェルがいたからキャロのお父さんが抜き取れたんだろうか?

 だとすれば、この籠手を使えばディアさんをゼノモーフの身体から引っ張り出して助けられるのかもしれない。

 ただ相手はどうやら神と融合したためゼノモーフの神になっているようだから、ナーサイヴェルの時よりも簡単にはいかないだろう。


 そしてもう一つ、ナーサイヴェルに使った力だ。

 あれはなんだったんだろう。 考え付くのはやはり死極だろうけど、この籠手の考えがわからない。

 魔法の力が働いている籠手なのはわかっているけれど、知性も持ち合わせているのは間違いないと思う。


 どちらにせよ、ディアさんをもしかしたら助けられる可能性があるのなら、俺はそれに賭けてみたかった。





「報告です! かなりの数のゼノモーフが大山脈、ロミオ・イ・フリエタの入り口に集結しているとの事です!」


 突然のこの報告にキャビン女王様が難しい顔を見せてくる。



「やっぱりバックにニークアヴォがついているとやりにくくなるなぁ」

「もしかしたらニークアヴォは目的は達成できたのではないでしょうか?」


 キャビン女王様が考えを口にする。


 まずは創造神様の封印、そして人種の大量虐殺による神々の神威減少による弱体化、そして……鍵と言っていた魂抜きの籠手を手に入れさせて発動させた事……

 これ以上やる必要がないところまで持ち込めたから、ゼノモーフは討伐に行く俺たちに処分させると……



「神算鬼謀のニークアヴォ、私の先祖たちの力であるキャビンの知恵すら凌駕するというのはどうやら本当のようですわね」

「そこに導き出せたキャビン女王も十分凄いと思うけどねぇ」


 少ししてセーラムが戻ってくる。 どうやら俺たちを馬車に乗せて運んでくれる事になったそうだ。



「一箇所に集まってきているのなら、魔導騎士団も行かせますわ」

「僕も魔法で……」


 そこに続く伝令がくる。



「報告です! 現在こちらにゴーレムが向かって来ています!」



「どうやら先手は打たれているみたいだよ……」




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