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ソウルスティール!

 地下牢の前まで来ると、キャロのお父さんの姿を見たガイモンが驚いた顔をみせる。



「ガイモン、プリュンダラー、ナーサイヴェルは倒されデスはもう終わりだ。 だから……ここからやり直しだ」


 わめいたりすると思ったけど意外にも2人ともおとなしく頷いているし、キャロのお父さんの言う事もどこかおかしく感じる。



「7つ星の剣も消えた今であれば私を止める術も無いでしょうからね?」


 ニタリと薄気味の悪い顔を見せてくる。



「そういう事かぁ」

「え!?」


 セーラムは確証は無いけど勘が働いたらしい、そして俺の横にいるアラスカも同様でこれがエルフの勘の良さなんだとか。



「そいつ、ナーサイヴェルだよ」


 セーラムの一言に俺たちは一瞬だけ動揺しつつも身構えはじめる。

 【愛と美の神レイチェル】様はリリス様が庇うように立って、大統領はキャス様が守るようにしている。

 そして俺と従うようにゲッコとガーゴが妊婦のアラスカを守るように立った。



「そんなに慌てなくても逃げやしませんよ」


 ナーサイヴェルがそういうとキャロのお父さんの姿でナーガの姿に変わった。



「ふぅぅぅ……レイチェル姫じゃあなくてレイチェル王妃でもなくて、今は【愛と美の神レイチェル】でしたか。 やっと貴女に出会えましたねぇ」

「蛇だけに本当にしつこいわね!」

「それと先ほどから美しい方々が大勢いて……私もコレクションが増えるかと思うとゾクゾクしてきますよ」


 ナーサイヴェルが牢屋の鉄格子をあっけなく手で破壊してしまい、ガイモンとプリュンダラーも不敵な笑みを浮かべている。



「アラスカ! この時をずっと待っていたぞ!」

「貴様も大概にしつこいな」


 この狭い牢屋の建物の中では不利だ。 一旦外へ出たいところだけど、おとなしく出させてくれるのだろうか。



「マナよ、壁となれ! ——みんな今のうちにここを出て!」


 セーラムがナーサイヴェルたちと俺たちの間にマナを紡いで壁を作り出してくれる。



「こんなものすぐに破壊してあげますよ、ハイエルフのお嬢さん?」


 ナーサイヴェルが破壊しようと試みるけど、セーラムが紡いで作った壁はビクともしない。



「ぷぷー」


 小馬鹿にするようにセーラムが笑ってみせる間に、特に守らないといけない【愛と美の神レイチェル】様と大統領を優先的に逃がしていく。


 地上に出ると大統領が声を張り上げて衛兵たちを呼び始め、あちこちから兵士たちが集まってくる。

 その中にはギルガメシュさんとレディマトゥルの姿もあって何事か俺に尋ねてきた。



「ナーサイヴェルです!」

「それは貴様が倒したのだろう!」

「魂は死極にあって倒せないと【闘争の神レフィクル】様が言ってました」

「倒せないならどうしろというのだ!」


 そう言われても困るんだけど、俺には1つ手段がある。



「一応試したい事があります」

「ダメだマイセン、また無茶をする気だろう」


 アラスカが不安げに俺の手を掴んでくる。



「シスターテレサは親切にしてくれる人を大切にしろって言っていた。 俺にそれができるのであればやらなきゃダメなんだ。 分かってよ」


 イヤイヤするように首を振ってくるアラスカが掴む手を振り払う。



 ——大切な人をもう失いたくない。 失うわけにはいかない!




「うひゃぁぁぁ」


 拍子抜けするような声が聞こえて黄金の鎧姿になっているセーラムが牢屋から飛び出してきた。



「伝説と言われる女帝もこの程度ですか」


 身体のあちこちに槍が突き立てられながら追いかけてきたナーサイヴェルが姿を見せる。

 あれだけ槍が突き立っているにも関わらず、ナーサイヴェルは気にしている様子が見られない。



「3対1なんだから当たり前でしょ! ——っ! しっつこいなぁぁぁぁ!」


 ガキンっと音が聞こえてセーラムの持った盾に刃が見えてガイモンの姿が現れる。



 暗殺者(アサシン)であるガイモンの姿が捉えられるセーラムはやっぱり凄いと思う。


 後を追って出てきたプリュンダラーも横から斬りかかり、セーラムは槍を手放して盾を紡いでその一撃を防ぐ……


 プリュンダラーは元とはいえ7つ星の騎士で、今も騎士魔法が使える。

 そのためセーラムが盾で防ぐ事は分かっていて、太刀筋を変えてきた。


 危ない!


 そう思った時に更にナーサイヴェルも攻撃に加わってきて、絶体絶命と思われたところをビシュッと音が聞こえて鞭が巻きついたと思うと炎が巻き上がる。

 その鞭の使い手はもちろんリセスドだ。


 そしてセドリックがいつの間にかナーサイヴェルの懐に飛び込んでいて、キャロのお父さんの姿をしたナーサイヴェルの喉元を掻っ捌いた。



「いっちょあがり! ってとこです……なっ!?」

「効きませんよ、そんなもの」


 血は確かに吹き出した。 だと言うのに傷口は一瞬で消えてなくなって逆にセドリックが掴まれてしまい、セーラムももの凄い速度で距離を取ったものの、腕からは血が滴っている。



「イタタ……魔法使えば跳ね返してくるから下手に使えない上に攻撃まで予測してくるんだから、7つ星の騎士ってば本当に相手しにくいったらありゃしないよ!」


 そこへまたガイモンが仕掛けてきた攻撃を防ぐ。



「ひつこいっ!」


 高速移動で追い打ちしてくるガイモンの一撃を新たに紡いだ盾で防いだけど、思った以上にプリュンダラーの一撃が深手だったのか、防ぐので精一杯のようだ。

 そこへプリュンダラーが駆けつけようとするのだけど——



「プリュンダラー、私が相手だ!」


 止める間もなくアラスカが剣を手にとってプリュンダラーに向かってしまう。

 ただ一緒にガーゴがついて行ってくれた為任せる事にした。



「吹き飛べ」


 セドリックを掴んでいるその手にギルガメシュさんが矢を放ち、命中させると爆発が起こったけどやはり無傷のままだ。



「クソッ! このバケモノが!」



 このままだとセドリックが!


 アラスカも心配だったけどまだお腹も目立っていない妊娠初期で、ガーゴも付いている。

 セーラムもガイモン1人になって余裕があるらしく、ピースして見せてきた。 となれば今にも危険な状態である締め付けられて苦痛に歪むセドリックの方を優先するべきだろう。



 でも、だけどどうやって……


 魂抜きの籠手を使うしかないのか? でも、あれはナーサイヴェルであると同時にキャロのお父さんだ。


 俺の迷いに気がついたのかキャロが現れて声をかけてくる。



“お父さんがあんな事になったのは私のせい。 だからマイセンは気にしないでナーサイヴェルを倒して!”

「でも!」

“それにあれを使う気ならもしかしたらお父さんは助かるかもしれないから”


 キャロも【闘争の神レフィクル】様から魂抜きの籠手の事を聞いていた時に当然一緒に話を聞いている。



「……分かったよ」




 ナーサイヴェルに向かって走りながら腰に下げた袋に手を入れ、中に入っている籠手に手を入れる。

 そしてナーサイヴェルに向かって籠手をつけた手を伸ばして、そして叫んだ。



「ソウル……スティ————————ル!」


 


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