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1つ1つの転末

 大統領府にたどり着いた俺たちに最初に気がついたのがギルガメシュさんとゲッコとガーゴだった。

 そして驚かそうと目の前に行くまでレディマトゥルの事は言わないでおく。



「戻ったところを見る限り、事は成し得たか」


 背負っているシスターテレサの亡骸にチラッと目を向けて聞いてきた。



「いえ……ナーサイヴェルは倒したと思ったんですが、消えてしまいました」

「そうか、ところで見知らぬ顔があるな」


 その言葉待ってました!



「えっとまずはこちらがキャロのお父さんです」


 紹介されてキャロのお父さんが会釈する。



「それとリリス様。 【愛と美の神レイチェル】様の義理の妹みたいです」

「リリスですわ」

「ん……貴様人ではないな?」

「だとしたらどう致します?」

「敵でないのならどうでもいい。 それで……」


 と言いかけたところでレディマトゥルが駆け寄ってギルガメシュさんに飛びついた。



「な!? なんだ貴様は!」

「お兄様! 私です。 マトゥルです」


 ギルガメシュさんがレディマトゥルを乱暴に引き剥がして顔を覗き込む。



「我が妹よ、バケモノに成り下がるとは……総身に知恵が回りかねたか! 恥を知れ!」


 バケモノ呼ばわりされた瞬間、レディマトゥルの全身から力が抜けたように見える。

 理由も聞かずにレディマトゥルを罵倒した事に腹が立った俺は、片手でシスターテレサを支えながらギルガメシュさんを殴ってしまう。



「貴様……何をしてくれやがる! 気でも触れやがったか!」

「理由も聞かないでバケモノ扱いなんてギルガメシュさんこそ酷いじゃないですか! レディマトゥルがいったいどんな思いでヴァンパイアになったと思うんですか!」


 と、レディマトゥルの方に顔を向けた直後……


 バキィィィ!


 俺がギルガメシュさんにやったのと同じようにレディマトゥルにパンチをもらう。

 シスターテレサと俺が倒れないようにアラスカとゲッコとガーゴが即座に支えてくれたおかげで落とさずに倒れずに済んだまでは良かったけど、



「ちょっと貴方、何お兄様を殴ってるんですのよ!」


 えぇぇぇぇえええええ……そっちなのぉぉ?



 で……



「マイセン、確かに貴様の言い分にも一理ある。 我が妹よ、弁明の余地を与えてやろう」

「ありがとうございますわ、お兄様」


 シスターテレサが言っていた……

 人様の家庭の事情には首をつっこむんじゃないよって。


 こういう事なのか。


 というわけで俺はもうこの2人に関わりたくないからさっさと先を急ぐ事にした。




 大統領に取り次いでもらおうとアイボリーハウスの入り口にいた兵士に声をかけようとしたらいきなり兵士が敬礼してきて、大急ぎで何処かへと走り去ってしまう。


 そして少しすると大統領自らが俺たちを迎えに来た。



「母を、シスターを連れてよく帰ってくれた」


 背負っているシスターテレサの姿を見て頭を下げてこられて慌てたのは俺のほうだ。



「テレサ……」


 そしてそんな声が聞こえて見ると、メーデイアさんもいる。



「みんなも待っている。 ひとまずはそちらに移ろうじゃないか」

「私はこの子を見ておくわ」


 背負っているシスターテレサを丁重にメーデイアさんに渡して、俺たちは大統領に連れられていく。




 部屋に通されると、中にはキャス様にセーラム、セドリック、リセスドたちが待っていた。



「どうやら無事に戻ってきたようですな」

「仇討ちを成し得たか」

「ギリギリセーフだよ」


 俺の姿を見てセーラム以外が声をかけてくる。

 そのセーラムはというと、なぜかキャロのお父さんを見ているようだ。



「あ、こちらはキャロのお父さん」


 キャロのお父さんは先ほどからすっかり萎縮しているみたいで、ここでも無言で頭を下げるだけだ。

 まぁ【愛と美の神レイチェル】様からはじまって、【魔法の神エラウェラリエル】様の代行者キャス様、伝説の英雄にしてセーラム女帝国の女帝セーラムが揃っていれば、俺だって初めてだったらきっと同じようになってるはずだ。



 揃ったところで、大統領が俺が魔導門(ゲート)を超えてからのいない間の事を話してくれて、ひとまず霊峰の町は落ち着きを取り戻しつつあるそうだ。



「うんうん、遅れたけどこれで万事準備も整った事だし、遅れを取り戻すから今からキャビン魔道王国に行くよ?」


 まだ戻ったばかりだというのにキャス様は容赦なく先を急がせようとしてくる。


 一応あれからどうなったのか気になるギルガメシュさんとレディマトゥルの件や、シスターテレサを預けたメーデイアさんなんかが気になるんだけどな。

 他にもここにいないスカサハや猫ちゃんなんかもね。


 そこで俺に向かって咳払いをしてくるキャロのお父さんに気がついた。



「あ! そうだった」


 わざと思い出したようにキャロのお父さんの話を持ちだして、ガイモンとプリュンダラーの話に持っていく。



「じゃあそれは大統領に任せればいいよ。 僕らは先を急がなくちゃ」

「ダメだよ」


 今まで黙っているだけだったセーラムがキャス様を止めてくる。

 その表情はいつものセーラムと違って真剣だ。



「そういう事は1つ1つちゃんと終わらせていかないとダメなんだよ。 ね?」


 そういって二パッと笑顔を俺に向けてくる。



「そうだな、ナーサイヴェルが倒されたとして、ガイモンとプリュンダラーは個人としても十分な実力を持っている。 もし暴れでもしたら、残った者だけで対処できるか怪しい」


 セーラムに次いでアラスカまでも言ってきた。

 確かに今ここ霊峰の町での実力者といえば、ディルムッドとギルガメシュさんぐらいで、アラスカは妊婦だから【愛と美の神レイチェル】様におとなしくしているように言われているのだそうだ。



「私からもお願いしますよ代行者殿」

「はぁ……もぉぉしょうがないなぁぁぁ」


 キャス様らしくない言い方だったけど了承してくれる。



「私の真似はやめてよね!」


 どうやら今のはセーラムの口癖だったらしい。



「あはは、それじゃあパパッと終わらせたら行くよ?」





 そういう事で、全員でガイモンとプリュンダラーを閉じ込めているという牢屋へと向かう事になった。




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