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ヴァンパイア レディマトゥル

 話し声が聞こえて目を覚ますとキャロともう1人誰かが見えた。



「……キャロ、その人は誰?」


 自分で聞いておいてその直後に『(オーラ)』を感じないことに気がついて飛び起きた。



“最悪のタイミングよマイセン”

「そう言われても……」


 『(オーラ)』を感じ取れない以上、居合斬りは通用しない。 そのため(キャロン)を鞘から抜き放つ。



「ちょっとお待ちになって……貴方までなんでそんな武器を持っているんですのよ!」

「え?」

“ヴァンパイアは銀の武器か、魔法の武器じゃないと傷つかないのよ”

「ヴァ、ヴァンパイア!?」


 色々とごちゃごちゃしていて、さっぱりわけがわからないぞ。

 キャロがヴァンパイアと言った。 ——あ、女の人だ。 俺よりおそらく年上で貴族っぽい格好をした彼女も色々と困惑しているように見える。



「ちょっと待って、みんな一度冷静になろう」

“何を悠長な事言ってるのよ!”

「そのほうが良さそうですわね」


 2人から返事があって少し間があった後……



“はい!?”

「え?」


 とまぁそんなわけで俺は今、ゴーストとヴァンパイアを相手に会話をすることになった。



「つまり君じゃなかった……えっと」

「マトゥルですわ」

「あ、はい、レディマトゥル様は……」

「もう貴族でもなんでもないのですから気軽に話しかけてもらって構わないですわよ」

「じゃあ、レディマトゥルは元々はメビウス連邦共和国の貴族令嬢で、別荘に来ていたところをヴァンパイアに襲われた。 ——というわけなんですか?」

「襲われたのではなく、私自身が受け入れたんですわ」

“なんだ、じゃあつい最近なりたてなんじゃない”

「なりたてで悪かったですわね!」




 まぁゴタゴタしつつも聞いていった話をまとめると、ゼノモーフ襲撃があった時にちょうど別荘地にきていたレディマトゥルは、ゼノモーフ襲撃の難は逃れたけど、知らせを受けて家族が心配で国へ直ちに引き返したのだそうだ。

 そしてそこでゼノモーフに襲われて命を落としかけた時に、他のヴァンパイアにヴァンパイアにされることで助けられたそうだ。



“それって全然助かってないと思うんだけど”


 うん、俺もそう思う。



「あのまま死んでしまったら、誰がお兄様に報告するんですの!」



 ヴァンパイアになってまで、家を出て行ってしまった兄に知らせたかったのだそうだ。



“そのお兄さんだって生きてる保証は無いじゃない。 それなのに随分安直にヴァンパイアになんかなったわね”

「それをゴーストの貴女に言われたくありませんわ!」


 うわぁ……なんだろう、さっきからやたらキャロが突っかかってるなぁ。



「それにお兄様は頭が良くて、強くて、美しいんですから絶対に生きてますわ!」

“美しさは……もういい、なんだか私疲れちゃった”


 続けて話を聞いていくと、ヴァンパイアになって生き延びたまではいいけど、どうやって兄を探したらいいか困ってしまい、ひとまず別荘地に戻って考えることにしたのだと言う。

 だけど別荘地に戻ってきてみたら、屋敷を知らない奴に奪われていて抗議をしてみたけれど、立ち退くどころか逆に追い出されてしまったそうだ。



“ちょっと待って、その別荘ってここから近いの?”

「ええ、すぐ近くですわ」

“マイセン!”

「うん、間違いない。 きっとナーサイヴェルだ」

「その名前ですわ! 貴方達まさかそいつの仲間とか言いませんわよね!」

「違う! ナーサイヴェルは母さんの仇だ!」


 今俺が向かっている理由がそのナーサイヴェルを倒しに行くところだと話すと、レディマトゥルも一緒について行くと言い出した。



“道案内がいるのは助かるわね”

「確かに、でもその前にもう一つだけ確認したいことがあるんだ」


 袋から取り出してレディマトゥルにあるものを手渡す。



「なんですの……!? こ、これは私の、当家の紋章ですわ! 貴方これを一体どこで!」

「やっぱりそうだったんですね。 ——レディマトゥル、お兄さんの名前はギルガメシュさんで間違いないですか?」

「そうですわ! ギルガメシュお兄様よ」


 やっぱりそうだった。 レディマトゥルの話を聞いていてもしかしたらと思って、以前ギルガメシュさんに渡されたシグネットリングを見せてみたのが当たりだった。

 でもそれは裏を返せば、ギルガメシュさんの親兄弟はもう……


 どちらにしても、俺がナーサイヴェルを倒したあとには霊峰の町へ戻ることになる。

 一緒に来れれば再会を果たせるだろう。



「先ほどから不思議に思ったのですけど、貴方……仮にも私はヴァンパイアだと言う事を忘れていませんわよね?」

「はい、忘れてませんよ?」

「人種からすればヴァンパイアは魔物であり敵ですわよね」

「大丈夫です、そこは俺がちゃんと説明するんで……」

「そうではなくてですわね!」


 どうやら俺がヴァンパイアであるレディマトゥルを恐れもしないことが不思議でしょうがないらしい。

 でもそう言われてもレディマトゥルはギルガメシュさんの妹で、ギルガメシュさんは色々助けてくれた恩人だ。



“レディマトゥル、マイセンってそういう人なの”


 キャロが代弁してくれてレディマトゥルも納得してくれたように見える。



「もしもこんな世界になる前に出会えていたら、私も貴方に惹かれていたかもしれませんわ」

「出会うなんて絶対にありえないと思います。 ——だって俺、孤児ですから」


 レディマトゥルが驚いた顔を見せてくる。



「それでは貴方が先ほどお母様の仇って言ったのは……」

「あ、母さんは本当の母親じゃなくて孤児の俺を育ててくれた人なんです」

「そう、でしたのですわね」



 なんだか暗い雰囲気になっちゃったな。

 まぁそれも後もう少しだ、レディマトゥルにナーサイヴェルのいる場所まで連れて行って貰えば母さんの仇が討てる。



 まだ真夜中にレディマトゥルの案内で屋敷までの案内をしてもらう。

 やはりレディマトゥルはヴァンパイアだから朝日が昇ると灰になってしまうからだった。



「そういえば朝日が昇ったらレディマトゥルはどうするんですか?」

「直接日光を浴びなければ問題ありませんので、屋敷にたどり着ければ問題ありませんわ」


 すっかりいうのを忘れていたけど、俺がナーサイヴェルを倒せるとは限らないんだよね。

 もしも俺がナーサイヴェルに殺されたら、レディマトゥルはどうなるんだろう。


 その事を話したら、レディマトゥルはギルガメシュさんが生きていることがわかっただけで十分だと俺に笑顔を向けてきた。



 ……これは何が何でも負けられないな。




次回更新は明日22日の予定です。

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