表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
248/285

スエドムッサ

 「なるほど」


 予想に反して猫獣人の女性は落ち着いたままだ。



「それではついでながら、ナーサイヴェルの居場所を知ってどうするおつもりですか?」


 そうか、まだ俺はナーサイヴェルを倒すことは言ってない。 となれば次の返答次第ではこの女性と戦うことになるのかもしれない。



「殺す」


 (キャロン)を握る手に力を込めてから答えた。



「殺す理由を伺ってもよろしいでしょうか?」


 だというのにまだ落ち着いた様子で俺に聞いてくる。 しかも心なしか先ほどよりも落ち着いているように見えた。



「母さんを殺されて、その亡骸を冒涜しようと連れ去ったからだ! もう答えたんだ! そっちも素性を明かせ!」


 すると猫獣人の女性が可愛らしくちょいと両手を上げて戦う意思がないことを示してくる。



「私の名前はスエドムッサ、【闘争の神レフィクル】は私の父で【闘争の神】のゴッドハンド……で良かったかしら?」


 正体を明かされて驚いたのは俺の方で、慌てて(キャロン)から手を離して今までの態度を謝罪した。



「別に構いませんよ、こんな世界になってしまえばおいそれと信用なんかできませんものね。 それでは父のところまで案内しますけど……今の話、信じてもらえますか?」


 一瞬迷いはしたけど、このスエドムッサ様と名のった女性がもし嘘をついていて本当はナーサイヴェルの部下だったりするならば、それならそれでナーサイヴェルごと倒せばいいだけだ。




 そういうわけでスエドムッサ様の後についていくことにする。



「一応言っておきますけど、父は貴方にナーサイヴェルの居場所を教えてくれるとは限りません。 その時はおとなしく諦めて立ち去りなさいね?」

「諦めるなんて俺にはできません!」

「困りましたね……貴方も伝説はぐらいは知っていると思いますが、父は元狂王と呼ばれた方です。 機嫌を損ねたら殺されますよ?」

「母さんの仇さえ取れれば殺されたって構いません」

「貴方、マザコンなの?」

「ち、違います! 母さんは、シスターテレサは孤児だった俺を育ててくれた大切な人だったです!」

「なるほど、そういうことでしたか——っ!」

「———囲まれ、ましたね」


 スエドムッサ様が喋るのをやめて、それと同じくして俺も8体の気配を感じ取った。



「貴方……7つ星の騎士……のはずはないですね。 数はおそらく7匹、4匹は私が引き受けるので3匹は貴方が仕留めてくださいね? その程度が倒せないようではナーサイヴェルの足元にも及びませんから」


 言い切るが早いか最初のゼノモーフが姿を見せてくる。 スエドムッサ様が勢いよく走りだして身近な1体をあっさりと、まるで宙を舞うように横転しながら飛び越えると同時に切り裂いて仕留めた。



 対する俺は動かずに1番近くにいるゼノモーフの気配を感じ取って、『(オーラ)』で斬り裂く。

 居合斬りや他の技は一応見せないようにしながら、残るゼノモーフも『(オーラ)』で斬っていった。





「今のはなんです!?」


 倒し終えたスエドムッサ様が驚いた顔で俺に聞いてくる。



「『(オーラ)』で斬ったんです」

「……なんだかとても嫌な記憶が蘇るのは気のせいでしょうか?」

「嫌な記憶……ですか?」


 ええ、と何事もなかったかのように移動を開始しながら話してくる。


 その内容というのがスエドムッサ様がまだ生きていた頃……生きていた頃というとおかしいかもしれないけど、スエドムッサ様は1度死んで死極に落ちているのだそうだ。

 まだ神になる前に死極に閉じ込められていたレフィクル様が、【闘争の神レフィクル】様になってもらう代わりにスエドムッサ様やその側近たちだった者たちをゴッドハンドとしてそばに置く事を条件にして、それが了承されたため甦れて今があるのだという。



「私は今のような攻撃でバッサリと真っ二つにされて殺されたんですよ? 普通いくら敵とはいえ、女性相手にそこまでしないものじゃありません!?」


 なんだかとっても嫌な予感がする。



「念のためにですけど、そのぉ……スエドムッサ様を斬った相手の名前とか分かりますか?」


 恐る恐る俺が聞くと、プンスカさせながらスエドムッサ様が今も忘れないとその名前を口にした。


 言うまでもなくスエドムッサ様を真っ二つにしたのはやっぱり英雄セッターだった。

 ただ、サハラ様は英雄セッターが『(オーラ)』を使うという話をした事はなかったところから、もしかしたら英雄セッターは知らず知らずのうちに使っていたのかもしれない。



「顔色が優れないようですけど、どうかしましたか?」


 言えない、言えるわけがない。 俺が英雄セッターの転生者だとか、ましてや英雄セッターの娘のアラスカと結婚したなんて言えるはずもない。

 この事をスエドムッサ様に知られたら俺は一体どうなってしまうんだろうか……



「い、いえ、なんでもありません、はい」


 とにかくこの2つのことは口に出さないように気をつけよう。

 とりあえずのところは話題を変えるのが1番だろう。



「そういえばウィンストン公国の首都とかは無事なんですか?」

「無事かと言われればなんとか抑えられている、といったところですね」


 ん? もしかして【闘争の神レフィクル】様はゼノモーフの特大級の事に気づいてないのかな。



「スエドムッサ様……」

「ムッサでいいですよ」

「……えっと、それじゃあムッサ様」

「ムッサでいいです」


 ゴッドハンドというのはよくわからないけど、たぶん代行者様のような存在なんだろうから呼び捨てはマズイと思うんだけど……



「む、むむむ……ムッサ……」

「はい?」


 この人もやり難い人だぁぁぁぁ!

 もっともゴッドハンドが神なのか代行者なのか人なのかわからないけどさ。


 そんなわけで俺は特大級を倒せばその一帯のゼノモーフは四散して無力化出来る事を教えると、ムッサ様が足を止めて俺の事を見てくる。



「それは事実ですか?」

「霊峰の町と街道にある宿場町周辺は今のところ安全みたいです。 ただキャス様の話では一時的じゃないかと言ってましたが……」


 どうやらキャス様の名前が出たことで信じてもらえたようだ。



「それなら試してみましょう」

「え? で、でも俺は【闘争の神レフィクル】様に早く会わないといけないんですけど」

「父は気難しいですよ? なのでここでその特大級というのを仕留めて事実を証明すれば交渉もしやすいですし……私も口添えしてあげましょう」


 どうです? と聞かれ、俺は一瞬悩んだけどナーサイヴェルの場所を教えて貰える確率はあげたほうがいいだろうと引き受けることにした。

 



次回更新は17日の日曜日の夜を予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ