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頭で分かりながらも……

 みんなの目が俺に集まってくるのはいいけど俺だってデジャヴ状態だ。



「おそらくマイセンの中の私の父セッターの魂の記憶が垣間見えただけなのだろう」


 すかさずアラスカがフォローしてくれて、みんなも頷いて納得してくれたようだ。



「それではそのナーサイヴェルと言う名前に聞き覚えはないのかしら?」


 メーデイアさんがスカサハに今度は訪ねるけれど首を振るだけだった。



「スカサハ、俺は君が俺たちを裏切るような人じゃないと信じてる。 だから知っていることを教えて欲しいんだ」


 俺が聞くとスカサハが俺のことをじっと見つめてくる。



「鍵を盗んだんだのに……まだ私を信じるというのかお主は」

「そうしないといけない理由があったんだよね?」

「……そうだ。 私には救いたい人がいる」


 救いたい人としか言わなかったけど、思い人か何かなのだろうか。


 そしてその人物は既に死んでいるという。

 デスのメンバーの1人に殺された、それもスカサハを逃がすために。

 それ以降、延々とデスについて調べたりしたそうで、時には色香を使ったりして情報を集めて行ったそうだ。



「情報集めに接触した相手は殺さなかったんですかな?」

「私が殺すべき相手は仇であるただ1人だけだ」


 そうでないと足がついてたどり着けなくなるかららしい。



「ねぇ、悪いとは思うんだけど、死んでいるのならもう救いようはない事ぐらいわかっているんじゃないかしら?」


 【愛と美の神レイチェル】様が死んだ人は【死の神ルクリム】様によって輪廻に還されることを話す。



「助けてあげられるかもしれない……そう言われた」


 誰に、と聞かなくてもそれがナーサイヴェルであろうと思ったけど、スカサハの口から出たのは意外な名前だった。



「ニークアヴォ……」


 俺はもちろんアラスカと【愛と美の神レイチェル】も驚きの声をあげる。



「待って、ニークアヴォは」

「わかっている……昔は神だったが今は創造神によって追われている事も」


 そしてニークアヴォは自分のことを話し、もし信じてくれて頼みを聞いてくれれば助けてあげられるかもしれないと言ってきたのだそうだ。



「それが鍵を探し出すことだった」

「でも、だとしたら……」


 待てと手枷のついた手を出してきて付け加えてくる。


 迷宮の町にいたのはニークアヴォの指示で、そこにいずれ現れる俺と行動を共にして鍵を手に入れろと言われたのだそうだ。


 その話を聞いて驚いたのは俺だけではなく、メーデイアさんを除くこの場にいた全員だ。

 まさかそこまで見通されていたなんて思いもしなかったからだ。



「いくらニークアヴォでも死んだ人を連れ戻すのは……あ、えっともしかしてその人って悪いことでもしてきた人、ん?」

「極普通の冒険者だったはずだ」

「なら無理よ。 今頃とっくに輪廻転生しているはずよ?」

「頭ではわかっていた。 でも……それでも僅かな可能性でも信じたかったのだ」


 スカサハの悲痛な思いが【愛と美の神レイチェル】様を黙らせる。



「悲痛な思いは伝わりましたがね、どうやって連絡を取り合ったのかを教えてくれませんかな?」


 そんな中セドリックが疑問が残るところを追求してきた。

 その目はスカサハの一言一句聞き逃さないと言わんばかりに見つめている。



「もう灰になってなきなってしまったが……鍵を手に入れたらリングを使えと言われていた」


 ニークアヴォとは違う誰かと入手した事と待ち合わせ場所の会話をして、いざ向かおうとしたところで猫ちゃんに引き止められたんだそうだ。



「だって、鍵は世界を救う鍵にゃりよ」


 猫ちゃんがえっへんとばかりに胸を張って言うのだけど、ミシェイルから奪い返しておいてどの口が言うんだか……

 でもあれは籠手の魔力のせいかな?


 そこへディルムッドが来てスカサハは捕らえられたのだそうだ。



「私もだんだんおかしい事には気がついていた……」


 俺たちが鍵を探している理由は聞いていたから知っていた。 だけどデスの連中までが探していると知った時、その時すでに疑問が生じていたのだと言う。



「同業ならもうわかってると思いますがな……たぶん鍵を渡したらおたくさん、今頃殺されてましたな」

「え! なんでにゃり?」

「まぁいわゆる死人に口無し、もしくは死んだら死後の世界で会えるかもしれないといったあたりですかな?」


 ひとまず鍵はデスの手に渡らずに済んでホッとしているのを確認してから俺はスカサハに訪ねる。



「ナーサイヴェルの居場所を教えて欲しい」


 思わず声のトーンが落ちてしまい、そのせいで注目を集めてしまったけどそんな事はどうでもいい。



「さっきも言ったが……私はデスとは関わりがない。 ゆえにナーサイヴェルの居場所も私にはわからないのだ」

「なら、知っている人か知っていそうな人がいたら教えて欲しい。 俺は……母さんの仇を取りに行く。 母さんの首を刎ねた上に【愛と美の神レイチェル】様が言うような事をナーサイヴェルがするというのなら……世界よりも母さんの方が大事だ」


 批判されたって構やしない。 孤児だった俺をここまで育ててくれたシスターテレサは母さん以外の何物でもなく、その母さんを亡き者にししかもその亡骸を弄ぶような奴は絶対に許せない。


 しかし無情にもスカサハはかぶりを振った。


 怒りに震える俺を見て、【愛と美の神レイチェル】様がボソッと呟いた。



「【闘争の神レフィクル】なら知っているかもしれない……」




次回更新は13日の水曜日を予定しています。

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