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仇の正体

新章に入ります。

 目をさますとベッドの上にいて、アラスカが目に涙を浮かべながら俺の事を見つめていた。


 手にずっと握り締めていた物を見るとそれはドッグタグで、そこに刻まれた名前はテレサとある。



「これは……シスターテレサのドッグタグ……」


 なぜ地面に落ちていたのかは愚問だ。 あの時シスターテレサは首を刎ねられたからで、その時に首に掛けてあったドッグタグが落ちたからだ。



「母さん……母さん……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺が、俺があの時もっと早く気がついていれば……」


 アラスカも俺の心痛がわかってくれているのか、さっきから声もかけてこないでいる。


 嫌でもシスターテレサが首を刎ねられた時の光景が蘇ってくる。

 そしてまるで走馬灯のようにシスターテレサとの思い出が脳裏に浮かんできた。


 そしてあの男、シスターテレサの遺体を持ち去った男の顔を思いだそうとした。



「マイセン……」

「強くなった、強くなったんだ」


 俺はアラスカに両手を差し出して見せる。



「だけど俺はキャロもカルラも、母さんも助けることができなかった……」


 心痛の顔つきでアラスカも俺を見つめてくる。


「……俺は、俺は母さんの仇をとる」


 アラスカは否定も肯定もしないで俺を抱きしめてきた。



 どれぐらいの時間そうしていたのかわからないけど、少し気分が落ち着いてアラスカの抱擁から離れた。



「アラスカ、スカサハは見つかったのか?」

「彼女なら今、鍵となる物を盗んだ罪で尋問されている頃だろう」


 それを聞いてベッドから飛び降りて尋問されているだろう場所に向かおうと立ち上がろうとしたら足に力が入らないで倒れてしまう。



「マイセン! まだ体が!」

「体なんかどうでもいいんだ! 早くスカサハのところへ行かないと」


 迷ったそぶりを見せた後、アラスカが俺を支えてくれる。



「私はあなたの妻だ。 もっと私を頼ってほしい」

「ゴメン……それとありがとう」


 アラスカがにっこり頷いて、俺を支えて連れて行ってくれる。




 アラスカに連れられてアイボリーハウスの一室の中に入るとまだ始まったばかりのようで、そこには【愛と美の神レイチェル】様と大統領とディルムッドとセドリック、リセスド、猫ちゃんと手枷がつけられたスカサハ、それとメーデイアさんの姿もあった。


 今まで仲間だと思っていたスカサハの腕には手枷がつけられているのを見ると、なんともいたたまれない気分になる。

 っと、それよりもだ。



「メ、メーデイア……さん、なんで?」

「旧友が亡くなったのだから来て当然でしょう」


 ここでメーデイアさんは初めて人の形をしてこの国の連邦捜査局(FBI)をしていることを明かしてくれる。


 今から50年以上も前、なんと霊峰竜角山の頂上まで辿り着いた人物がいたそうだ。 しかも驚くことにたった1人で。

 そしてその人物こそがシスターテレサで、そこで1度だけ手合わせをしたことがあるのだという。

 まぁ、コテンパンにシスターテレサは伸されたらしいけど。

 それ以降メーデイアさんとシスターテレサは交流を結ぶことになったのだそうだ。



 それから年月は流れて今の大統領が就任した時、シスターテレサが宮廷司祭に任命されたときにメーデイアさんに声がかかって暇つぶしがてら手伝っていたのだそうだ。


 ゼノモーフが現れてから姿を消したのはゼノモーフの神が現れた事で、異種族の関与が出来なくなって離れていたということだ。

 


 そしてメーデイアさんの手にはシスターテレサのハルバードが握られていることに気がつくと、メーデイアさんはハルバードをシスターテレサとの友情の証として贈ったものだったと教えてくれた。


 それでシスターテレサはあの時ハルバードだけでいいって言ったんだ……



 いつもならここで仕切ってくれていたシスターテレサの姿も今はなく、代わりにメーデイアさんが仕切っていた。 というよりも数少ない友人を失って怒っているようだった。



「さて……テレサを殺した相手の名を言いなさい」


 始まって早々こればかりを聞いていたらしく、スカサハも知らないの一点張りのようだ。



「あの……俺、なぜかわからないんですけど、顔を、姿を見てあいつを知っている気がするんです。 ただ名前があと少しのところで出てこなくて……」


 理由はわからないのだけどどういうわけか知っていて、しかも敵だったことまでわかっている。



「ねぇ、それってもしかしたらマイセンじゃなくてマイセンの魂が知ってるんじゃないかしら、ん?」


 【愛と美の神レイチェル】様が出会ったこともないのに知っているなんておかしいから俺の魂の記憶じゃないかなんて言ってくる。



「何か覚えていることがあったら言ってみて。 もしかしたら私も知っているかもしれないからね、ん?」


 そこですぐに思い浮かんだのが最後の光景で、あいつはよりにもよってシスターテレサの生首に口づけをしていた。

 その光景を口に出して言うと【愛と美の神レイチェル】様がブツブツ呟きだす。



「やっぱりそれはセッターの記憶ね。 でももしそうならあいつはセッターが殺して死極に送られているはずなんだけど……」


 どうやら【愛と美の神レイチェル】様はあいつが誰なのかわかったようだ。



「まずは名を教えてもらえないかしら? 【愛と美の神】」


 なかなかその名を言わない【愛と美の神レイチェル】様にメーデイアさんが痺れを切らしたようだ。



「あ、うん。 ゴメンゴメン、たぶんそいつの名前はナーサイヴェルよ、きっと!」


 なんだか自信があるのかないのかよくわからないけど、あの男の名はナーサイヴェルと言うらしい。


 ナーサイヴェル……?



「なぜそれだけでナーサイヴェルと思うのかも説明してもらえるかしら?」


 せっかく俺がその名前に何か思い出しそうになったというのにメーデイアさんの追求で思考が止まってしまった。



「そうねぇ……あれはまだ私がマルボロ王国の王妃にもなってなかった頃の話よ」


 遠い昔のことを思い出すように指を顎に当てながらしゃべりはじめる。



 【愛と美の神レイチェル】様が当時まだ神でもなく、しかもマルボロ王国が出来る以前のレドナクセラ帝国だった頃に、残すところ王都までガウシアン王国から取り返していたときにまで遡っていた。

 その時ガウシアン王国にレドナクセラ帝国の王都を任されていたのがナーサイヴェルだったそうだ。



「その時にナーサイヴェルの趣味が死姦だと知ったの!」


 とまぁ、話が長くなりそうだったから要点だけいうと、ナーサイヴェルの強さと死姦が趣味だったからたぶんそうじゃないかなということだ。



「そ、それだけ?」


 長々話しておいてそれだけだったため疑いの目をメーデイアさんが【愛と美の神レイチェル】様に向けてくる。



「も、もちろんそれだけじゃないわよ! マイセン、彼がナーサイヴェルを知ってることが証拠よ!」


 と、見事に【愛と美の神レイチェル】様は俺に振ってきた……




次回更新は明日11日の予定です。



ナーサイヴェルについては「始原の魔術士」の方で初登場、加えて「ワールドガーディアン」の方でも登場しています。



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