特大級討伐隊
その後討伐隊にはトールさんやその奥さんでいいのかな? のガラナさん、ホークさん他にもたくさんの人たちが志願してくれた。
だけど孤児院と大統領府の守備も必要なため、最終的には俺たち以外にオーデンさんがヴェルさん、ウルドさん、スクルドさんと共に選出した30人が加わる事になる。
そして討伐隊は全員冒険者から選ばれた。
「選ばれたものたち同士で急遽とはなるがパーティを組んでもらう。 諸君らの任務はあくまで主力となるマイセンたちの補佐並びに誘導だ。 奴らは個でも強い、決して無理はせずに臨んでもらいたい!」
オーデンさんが冒険者たちに指示を出して、なすべき事をまるで冒険者ギルドの依頼のように説明していた。
「ギルマスよぉ、別に俺らが倒しちまってもかまやしないんだろう?」
「なんだよ、俺らは弾除け要員じゃねーぞ!」
そんな声も上がっていて、オーデンさんもそんな人たちに思い切りぶっ飛ばしてこい! とか言っていた。
「大丈夫なのかな?」
「いやぁ、あれはみんなわかって言ってるだけですな」
「ああして勢いづけているんだ」
セドリックとリセスドの2人が訂正してくる。
「みんな内心じゃわかっちゃいるし怖いんだよ」
声が聞こえて振り返ると一瞬誰かと思うほどの、シスターテレサの初めてみる武装した姿だ。
「ひゅ〜、前々から思っていたけどやっぱり色っぽいねぇ、惜しまれるのはその年寄り臭い口調だな」
ディルムッドがウインクしながら感想を言いつつ毒も吐く。
そうディルムッドが言うのも無理はなくて、俺も今までシスターテレサの神官衣姿しかほとんど見た事がなかった。 たまに違う格好の時があっても身体のラインがわかるような服装だった事はないと思う。
髪の毛だってフードなんかでいつも包んでいたからあんな長髪だとも知らないでいた。
それが今の武装したシスターテレサの格好は身体のラインがわかる防具で身を固めていて、胸元ぐらいまでの長さの綺麗なウェーブした金髪が風に揺らいでいる。
「ちぃとばかしきつい箇所もあるねぇ……まったく歳をとるってのは嫌なものだよ」
そう言いながら鎧の調子やその手に持った武器の調子を見ている。
「シ、シスターテレサ、その武器って……」
「なんだい、マイセンはハルバードも知らんのかい?」
「いえ知ってます、知ってますけど……」
ハルバードといえば振り回すのも大変なポールアームだ。
それをあんな華奢に見えるシスターテレサが持っているのだから驚かされる。
「イシスだって槍を使っていただろうよ?」
そうだけど、ハルバードといえば突く、払う、殴る、切る、と種類によって用途は異なるけど、とにかく槍よりも重くハードに振り回す必要がある。 そんな武器をシスターテレサが扱うなんて誰が想像するんだろう。
「どれ……」
ずいぶんと久しぶりだといいながら、軽々とシスターテレサがハルバードを振り回してみせる。
「まぁ問題はなさそうだね」
「ハルバードをそれだけ振り回せるだけで充分問題ないと思いますけどなぁ」
「それでリーダーさんや、私はどうすりゃいいのかね?」
あのシスターテレサが俺の事をリーダーなんて言ってくる。
「え、えぇぇぇぇえ……」
「情けない声を出してるんじゃないよ、今の私はシスターでもなけりゃお前さんの母親代わりでもなんでもない、ただのテレサだよ」
セーラムの時も実はかなり虚勢を張っていたつもりだけど……今回1番きびしいなぁ。
「じゃ、じゃあ、テレサ……には後方に回って支援の方を……」
「お前さんはこの武器を見てそんな事を言うのかい? 前に出て戦えぐらい言えないのかね」
めっちゃやり難いよ!
仲間たちが笑いながら、特にディルムッドは爆笑しながらそんな俺の様子を見ていた。
他の人たちの準備も整ったようで、あとは号令を待つだけになった。
今回のこの討伐隊の全指揮を取るのはオーデンさんだ。
「今回の討伐隊の全指揮を任されたオーデンだ……」
オーデンさんが作戦の説明から入っていく。
その作戦とは、まずは特大級と名づけられたゼノモーフの女王のような奴を、現地に着いたらパーティごとに行動して探し出し発見したらその場では交戦しないでまず報告すること。
そのあとは討伐隊全員で特大級の討伐しに向かう。 ただし、特大級と戦うのは俺たちで、他の討伐隊は集まってくるであろうゼノモーフたちの駆逐だ。
「慌てる必要は決してない、各パーティにも【愛と美の神レイチェル】様にサポートしてもらった神官はいるだろうが、怪我人が出たら無理はせずに直ちに帰還するんだ。 生きていれば此方におられる【愛と美の神レイチェル】様のご慈悲をいただける」
オーデンさんの横に立っているまるで町娘のような姿の【愛と美の神レイチェル】様が、討伐隊のみんなに向かって手をひらひらさせてくる。
「みんな無理なんかして死んだらダメよ、ん? ついでにみんなが私に改宗してくれると嬉しいんだけどなぁ?」
【愛と美の神レイチェル】様が無理をして死んだら【死の神ルクリム】様の領分になってしまうことを伝えて、生き延びるために逃げることは恥ではないと念を押してくる。
チラッと最後に何か言ったのは聞かなかったことにしておこう。
「日が落ちてきたらいかなる理由があろうと必ず帰還するように!」
オオッと声が上がると外壁の門が開かれていく。
「行ってこい! 貴様らの戻る場所は俺様がしっかり守っておいてやる!」
外壁の門の上からギルガメシュさんの怒鳴るような声が響いて、それが合図のように一斉に討伐隊は外壁の門をくぐって町へと向かいだした。
次回更新は明日4日の予定です。




