表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
236/285

籠手の魔力

 ミシェイルがフェイスハガーに張り付かれてからは早かった。

 セーラムのおかげもあって洗脳が解けた人たちは、冷静に行動を取り始めてくれた。



「ここにも必ず救援部隊を送ってもらえるように大統領に伝えます。 それまで何としても持ちこたえてください」

「おう! 任せておけい。 儂らがきっちりみんなを守ってみせるわい! なぁ母ちゃん」

「……もう、いい」


 その場が和んでいる中、スカサハが俺を呼んで猫ちゃんを指差す。



「アレを取り戻してからどうにも弟子の様子がおかしいのだ」


 確かにえへえへえへへへと薄ら笑いを浮かべながら猫ちゃんは大事そうに籠手を抱えている。

 セーラムが猫ちゃんが持つ籠手を見て物凄い魔力を感じると教えてくれる。



「ところでリーダー、鍵っていうのは一体どれなんですかな?」


 セドリックに言われてプリュンダラーから聞いたことを思い出す。

 鍵は手だと言った。 馬鹿馬鹿しいとは思ったけれどまさか……



「アレ……かもしれない」


 プリュンダラーは手だと言って、セーラムはアレに凄い魔力を感じると言った。 そしてこれは関係あるかわからないけどミシェイルはゼノモーフを崇拝する時にあの籠手をシンボルのように掲げていた。


 言うなりセドリックが猫ちゃんに近づいて素早く行動に移る。



「あ、私の! セドリック返すにゃり!」


 物凄い速さで籠手をスるとほいと用意してあった袋にしまいこんで口紐を硬く閉じてから俺に投げて渡してくる。

 それをズボンにしっかりとくくりつけてアピールするようにぽんぽんと叩いてみせると親指を立ててきた。



「あれ……私どうしちゃたにゃりか?」


 猫ちゃんが素に戻った様子でキョロキョロしている。

 どうやらこの籠手には人を狂わす力でもあるようだ。



「何はともあれ、これでやっと鍵が手に入ったのはいいけど……」


 最初こそ6人だったというのに今は俺とセーラムとセドリックのたったの3人になってしまった。



「まぁそれでも行くしかないですな」


 セドリックも気がついて苦笑いを見せてきた。



「どちらにしても早く霊峰の町に戻らないといけないんだけど、魔法で戻ればすぐかな?」

「私、魔導門(ゲート)は使えないよ?」


 ということはまた歩きで戻らないといけないようだ。


 ところがここで問題が起きる。

 ホークさんが走ってきて、ネオたち数名が小舟を使って逃げ出したらしい。 しかもご丁寧なことに他の船は全て破壊していったそうだ。



「セーラムと知って恐れをなしたのかな?」

「それだったら私、空飛べるから意味ないと思うんだけどなぁ」

「だとしたら普通に考えて足止めってところですかな」


 足止め……トールさんに聞いたら、俺たち全員が乗れるぐらいのしかもイカダでも小一時間はかかるらしい。

 しかもイカダだと顎に襲われて破壊されかねないのだそうだ。



「そうするとどれぐらいかかりますか?」

「そうじゃな……どれだけ急いでも3日はかかるじゃろう」


 3日……他に手立てがなければ待つほかないんだろうか……でもその前に。



「足止めだとしたら何の為だと思う?」

「さすがにそこまではわかりかねますなぁ」

「はぁ……」


 呆れたようなため息が聞こえて顔を向けると声の正体はスカサハで、そしてミシェイルの倒れている側からだった。



「何だってこいつらはこぞってココなのだ!」


 えーと……



「スカサハって、倒した相手の服を脱がすの趣味だったりするの、かな……?」


 初めて見たセーラムが手で顔を覆いながら疑問を口にする。 それを聞いたスカサハは青白い肌が一瞬で紅く染まって誤解だとわめきだす。 そして俺にもあるものが見えるように手で掴んで見せてきた。



「見えるか? 念のため確認してみればこの男……ミシェイルもデスのメンバーだ」


 確かに男のシンボルに刺青が入っているのが見えた。 見えたのはいいけどさ……そのせいで素手でガシッと掴んでるのはいかがなものなんだろうか……

 しかも心なしか元気になってきてるようにも見える。 いや……なった。



「うひゃー」


 それを見たセーラムがそんな声をあげてその場を離れていってしまった。


 案外ウブなんだなぁ……



「意識がないはずなのにいきり立たせるとはのぉ……」


 トールさんが呆れている。 スカサハは手を離して珍しく「うえ」って声をあげながら握っていた手をぱたつかせた。



「ミシェイルがデスのメンバーだとしたらネオたちもデスのメンバーだったと考えるのが妥当じゃないですかな?」


 でもそうなるとおかしな点が出てくる。

 まずはミシェイルはなぜあの籠手を幹部なりに渡さなかったのか? そしてネオたちもデスのメンバーだったとしたらなぜそんなミシェイルをほおっておいたのか? そして俺たちから奪おうとしなかったのか? だ。


 その疑問を口にすると、セドリックは籠手の魔力のせいかもしれないことと、籠手の魔力には掲げるだけでも人を狂わせる効果があるのかもしれないと言ってきた。

 そしてスカサハもセーラムという存在がいたため、仲間を呼びに行った可能性があるとセドリックの後を続けて言った。


 どちらにしてもフェイスハガーが剥がれればミシェイルは1度は意識を取り戻す。 その時に問いただせばいいだろうということで決まった。



次回更新は30日の水曜日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ