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急展開

 ミシェイルが武器はすべて預けるようにと言ってくる。



「マイセンには悪いが、儂らはあいつと馴れ合う気が無いのは忘れておらんよな?」

「俺たちも用事だけ済ませたら帰るつもりです。 それにここにはもう……長居したくは無い」


 ミシェイルに俺はここには猫ちゃんの隠した宝を取りに来たことを伝えようとする。



「あ————————————!! それ、猫のお宝にゃり!」


 ミシェイルが手に持っている籠手を指差して猫ちゃんが叫びだす。



「あとそれもあれも……猫の盗んだにゃりね!」


 いや、猫ちゃんも元は他人から盗んだものでしょ……



「何か証拠でもあるのですか? これは私が見つけたものですよ?」


 猫ちゃんもそう言われると悔しそうに文句は言うけど、証拠というものが無い以上どうすることもできない様子だ。



「リーダー、あのどれかが鍵だとしたら、どうにかしないといけないんじゃないんですかな?」


 そうだ、証拠はなくとも猫ちゃんの宝の中にディアさんの元にたどり着くために必要な鍵があるんだ。



「ミシェイルさん、俺たちはこの子が隠してあった宝物の中にあるあるものが必要でここまで来ました。 だからどうかそれを返して欲しい」


 当然ミシェイルは必要な理由を聞いてくる。

 ゼノモーフなんかを信仰するミシェイルに理由を言ったら絶対に返しはしないだろう。



「理由は言えません」


 特にミシェイルには。 彼は今のこの世界を満足しているように思えるからだ。



「マイセン、理由なんかどうでもいいんじゃ。 儂らがあいつらから奪い返すから待っとれ!」


 トールさんたちが武器を手にミシェイルに近づきだした。



「ミシェイルよ、貴様が崇拝する神とやらは島の向こうにおるんじゃ! おとなしくここを出て行け!」

「ああ、誰かと思えば……あなた方でしたか。 まだここを強奪して支配しようとしているんですか?」

「違わい! 貴様がみんなを洗脳したんじゃろうが!」


 ふふんとミシェイルは笑って、それではここに住む人に聞いて見てはいかがかと聞いてきた。

 トールさんは集まっている人たちにゼノモーフを崇拝するなんて間違っていると訴えかけるけど、返事を返してくる人は誰1人いない。 だけど、間違いなくその顔には諦めのようなものが混じって見えた。



「俺らにはミシェイル様が居なければ生きてはいけないんだ! 邪魔をしないでくれ!」


 1人が意を決して叫んでくる。

 その言葉にトールさんたちは愕然とした表情を見せた。



「ほらごらんなさい。 私が皆さんを導いているから無事に暮らしていけるのです。 もうわかったのなら、邪魔をしないでいただきたいものです」


 トールさんたちが言葉を失ってしまい、このまま終わってしまいそうに思えた時だった。



「あ! ママー! パパー!」


 そこへ両親の姿を見つけた男の子が喜びの声をあげて駆け寄っていく。

 死んだと思っていた子供が無事に戻ってきて、抱きしめながら喜ぶ夫婦の姿を見ているとミシェイルの顔に変化が訪れた。



「なぜです! あの子供は昨日には神の信徒に生まれ変わっているはず……っは! そうでした。 あのドゥエルガルも……一体あなたたちは何をしたのですか!? なぜ2人は神の信徒にならなかったのです!」


 俺が口を開こうとしたところで誰かに手を引かれて、代わりに俺の手を引いたセーラムが口を開いた。



「助けたのは【愛と美の神レイチェル】よ。 神々はまだ健在、そしてここホープ合衆国の大統領も健在。 そうなるとあなたが今やっていることは、ただの邪教崇拝でしかないよ?」


 神々とこの国の大統領の健在を知った人たちから喜びの顔が溢れだす。

 


「う、お、おおお、お前! それを証明できるのかぁぁぁぁぁ!」


 追い詰められたミシェイルの口調が変わり、セーラムに問いただしてきた。



「証明? うん、マナよ我が武装を紡げ」


 パァッと眩しい輝きが発せられたと思ったら、そこには先ほどまでのセーラムの姿はなく、黄金に輝く鎧と槍と盾を持って、翼のような羽根があり僅かに浮いた姿のセーラムがいた。

 この姿こそ俺が幼い頃から聞かされ続けた伝説の英雄としてのセーラム女帝の姿だ。



「セーラム女帝国女帝セーラム、私が証明するわ」


 そのセーラムの姿に拝み出す人までいる。 それ程までに女帝としてのセーラムは神々しく見えた。



「で、ででで……伝説の英雄セーラム……女帝、陛下……」

「一応、ホープ合衆国大統領には権限も貰っているからおとなしく従ってもらえないのであれば、実力行使も辞さないよ? もっともミシェイル、あなたにはゼノモーフなんかを崇拝した罪を罰しなければならないけどね」


 すっかり戦いになるとばかり思っていたけど、セーラムのおかげで一気に収まってしまいそうだった。



「い、嫌だぁぁぁぁぁ! コレは、コイツは私のもの、私のものなんだぁぁぁぁ!」


 突然ミシェイルは走りだして、大事そうに籠手を抱えてどこかへ向かって走りだした。

 それをスーッと浮遊した状態のままセーラムが追っていき、ミシェイルがある建物の中に逃げ込むと中からもの凄い悲鳴が聞こえてきた。



「え……?」


 そんなセーラムの声が聞こえたかと思うと、紡いだ武装を解いていつものチュニック姿に戻ると、頭をぽりぽり掻きながら困った顔で俺の方を見てきた。


 駆け寄ってみると、そこにはフェイスハガーが顔に張り付いて既に意識がなくなったミシェイルの姿があった。



「まぁ……自業自得といいますか……これで神の信徒に本人も生まれ変われるんだから幸せなんじゃないですかな」


 なんとも呆気ない終わりに拍子抜けしたけど、これでトールさんたちのことも俺たちのことも終わりになったようだった。



「猫の宝物は返してもらうにゃり!」


 猫ちゃんが不気味な籠手を奪うように取り返すと、ブツブツと籠手に向かって話しかけはじめて、なんとも気味の悪い光景を目にするのだった。




次回更新は明日の予定です。



気がつけばユニークの数も15000人になろうとしています。

たくさんの方に読んでもらえて感謝です。



気が早いようですが次の作品を最近は考案中でして、久しぶりにサハラが主役の話が帰ってくる予定です。

ただその前にサハラストーリーとは無関係の話を書くかもしれませんが……




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