ワーニング!
十分な食事に加えて睡眠をとったあと、セドリックの案で洞窟を一度離れることになり、洞窟を出ると日が昇りはじめていた。
「セドリック、どうして洞窟を離れたの?」
疑問に思った俺が聞くと、顎をけしかけてきたのは間違いなく賞金稼ぎのネオだろうと。
そうなればきっと死体を確認に来るはずらしい。
「証拠を確認するのは賞金稼ぎのサガって奴ですな」
なぜセドリックがそんなに詳しいのかわからなかったけど、俺たちが移動した場所は洞窟が見える場所で待ち構えていると、セドリックの言った通り5人が姿を見せて洞窟の中に入っていった。
「見張りも立てないとは愚かな連中だ……」
「おそらく確認だけさせに寄越した素人集団ですな、捕まえましょうリーダー」
トールさんたちは待機させたまま、俺たちと男の子を連れて洞窟の前まで向かい待ち構える。
「顎の死骸だ。 あいつら倒したのか? 食ったみたいだ。2人の死体もないぞ! まずい、急いで帰るぞ! って言ってるにゃり」
猫ちゃんが役者じみたように5人のセリフをモノマネてくれた。
「いやぁ、こりゃあ完全に黒ですなぁ……」
急ぎ足で走って戻ってきた5人が、俺たちが待ち構えているのに気がついて足を止める。
俺たちを見て驚いた表情を見せたが、それもすぐに笑顔に変えた。
「おやぁ? 一体こんなところに何のようですかな?」
セドリックが猫ちゃんを見せるように問いただす。
5人のうち1人がセドリックに何か言おうとしたけど、猫耳がちょこんとついてフリフリと動く尻尾の猫ちゃんの姿に気がついた。
セドリックが猫ちゃんに何か小さく言うと猫ちゃんが頷く。
「顎の死骸だ。 あいつら倒したのか? 食ったみたいだ。2人の死体もないぞ! まずい、急いで帰るぞ!」
猫ちゃんが言い終わるとセドリックは猫ちゃんをスカサハに託す。
「いやぁこれ、つい今さっき洞窟の奥から猫獣人のこの子が聞き取った声なんですな。 それでそのあとすぐにあんたらが出てきた。 これは一体どういう意味を持つんでしょうな?」
5人が互いに顔を見合わせてボソボソ言い合う。
「ヤバいぞ、バレてる。 しらを切り通すんだ。 よし、それでいこう。 って言ってるにゃり」
5人がハッと猫ちゃんを見る。
「これでハッキリしてしまいましたなぁ」
こっちは5人にゲッコとガーゴがいる。 猫ちゃんと男の子はスカサハに任せて後ろに下がらせる。
「どういう事か、話を聞かせちゃくれませんかな?」
圧倒的に不利となると、5人は奇妙なお祈りを捧げるような仕草を取りだす。
「我ら生贄を持って新時代の神の元に召されん」
そう言うなり、5人が一斉にけたたましい音が鳴る道具を鳴らしはじめた。
その音は洞窟に反響したせいもあって、耳を塞がないとうるさいほどの音量だ。
ゼノモーフを呼ぶ気だ!
そう思った俺がみんなに注意を促すけど、音がうるさくて聞き取れないようだった。
だけどその直後、5人がバタバタと倒れていく……セドリックが気がついて俺が注意を促すより先に5人の息の根を絶った。
「こいつは早くここを離れた方がいいですな」
「来てる来てる来てるにゃりぃぃぃぃぃ!」
猫ちゃんはゼノモーフの近づいてきている音に騒ぎ始めたため、俺たちは一斉に走ってその場を離れていった。
「なんじゃ今の音は!? 奴らが集まっちまうぞ!」
トールさんたちも姿を見せてくる。 移動しながらざっと説明していると、
「あたり一帯から近づいてきてるにゃりよ!」
つまり囲まれているような状況で逃げ道が無さそうだ。
「くそっ! 応戦するしかないか」
「森の中じゃと奴らは立体的に襲ってくるからなおさら戦いにくいわい! こうなったら湖に行くしか無さそうじゃ!」
「あの小船に全員は乗れないじゃろう!」
「安心せい、儂らの船が隠してある。 ついてくるんじゃ!」
トールさんが先頭にたって移動する。
うまくカモフラージュして隠してあった船の大きさは小舟の倍はあって、全員乗っても余裕がありそうだけど、その分湖に押し出すのも大変だ。
「お前ら急げ急げ! 早く湖に船を押し出すんじゃぁぁぁぁぁ!」
男の子だけ船に乗せて、全員で湖に船を押し出されていくけど、そこでトラジャの近くにいたトールさんの仲間の1人が顎に食いつかれてあっという間に湖に引き込まれていってしまった。
「こりゃあマズイですな、トラジャと子供につけられたフェロモンのせいで顎まで集まってきているようですなぁ」
「悠長なこと言っている場合かっ! ぬおぉぉぉお! 昨日食ったばかりの奴に喰われてたまるくわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
トラジャが必死な表情で船を押しはじめ、なんとか湖に浮かべて乗り込むとありったけのオールで全員で必死に船を漕いで走らせる。
「来たにゃりぃぃぃぃぃ!」
岸辺にたどり着いたゼノモーフたちが、キシャーキシャーと獲物を逃したとでも言いたげに怨めしそうな鳴き声を上げていたが、俺たちの船に向かって跳躍して襲いかかってきた。
最初に船に飛びかかってきたゼノモーフを居合斬りで撃ち落とすも、船に飛びかかってくるゼノモーフはまだまだたくさんいる。
さすがに間に合わないと思った……
「マナよ、槍を紡げ」
いつの間にか隣に来ていたセーラムのそんな声が聞こえたと思うと、空中に槍が現れてゼノモーフに向かって飛んでいく。
しかも槍は1本だけではなくて、無数に作り出してゼノモーフに向けて射出されていった。
「凄い……これが伝説の英雄の力……」
「ほら、見惚れてなくていいから、撃ち漏らしはお願いね」
よく見ればセーラムは槍を射出しているけれど狙いまでは正確ではなく、悪く言えば当てずっぽうに飛ばしているだけだった。
俺の居合斬りは『気』を捉えれば確実に絶つため必中必殺だ。
他のみんなが必死にオールを漕いでいる中、俺とセーラムでなんとか飛びかかってくるゼノモーフを撃退して、岸から離れ切ったらゼノモーフたちも諦めたようだった。
「やった!」
「喜ぶのはまだ早いですなリーダー」
「あちらさんも儂らに気づいてしまったぞい」
船の進行方向、古城のある島には武装を整えたネオたちが待ち構えている姿があった。
次回更新は明日24日の予定です。




