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女神の帰還

(人種は顎が強敵なのか兄貴?)

(さぁよくわからないがそうらしいな)

(じゃあ俺たちが殺るか?)

(そうだな、陸に上がった顎なら大した相手じゃない)


 俺が主君(マイロード)に声をかけるが当然 主君(マイロード)には何を言っているか伝わらない。 だがそこはすぐに青白い肌のエルフのメスが通訳する。



「ガーゴ、ゲッコ、ありがたいけどゼノモーフに気づかれないように静かに倒さないといけないんだ」

(陸に上がった顎なら我らにお任せください主君(マイロード))



「任せてくれと言っているが……」


 主君(マイロード)が一瞬迷った顔を浮かべたが、髭もじゃが暴れもがき始めたため俺らに頼むと言ってきた。



(よっしゃ! 久しぶりに顎肉が食えるぞ!)

(あれだけいれば俺らの部族全員余裕で賄えるな)

(主君(マイロード)にも喰わしてやろうぜ!)

(……無理強いはするなよ)







 心配だったけど俺はゲッコとガーゴに顎をお願いすることにして、トラジャに集中することにした。


 子供と違って大人、それもドゥエルガルの暴れ具合は半端なものではなく、トールさんにガラナさん、セーラム、セドリック、スカサハ……とにかく全員で手足を押さえつけなければならないほどの暴れっぷりだった。



「なんちゅう暴れ具合じゃ!」

「あんた、時より、酷い」

「ホゲ——————————! ホゲ————! アグガギフタンガ———!!」


 その苦しみ……痛がりようは、男の子の時より酷い。



「誰かこの口を誰か抑えてくれんか! 奴らに聞こえちまうわい!」


 このあまりの痛がりように慌ててトールさんが叫んで、ガラナさんが……



「むごがっ!」


 うわっ! 洞窟に転がっていた石を口に押し込んだーー!



「むふぅーーーむふぅーーー!」

「これで静かになったわい、でかした母ちゃん!」

「まだ、母ちゃん、じゃない」



 2人は結婚してないんだろうか?


 そんな事を思っていたら、メキメキと骨を砕く音がトラジャの腹から聞こえてくる。



「おお! 膨らんできたにゃり!!」

「うひぃぃおほほぉぉぉ!」


 トラジャが自分の胸のあたりが盛り上がってきているのを目を見開きながら叫んだ。



「出るぞリーダー!」

「大丈夫、もうチェストバスターの『(オーラ)』は捉えてるから! それよりも【愛と美の神レイチェル】様お願いします!」

「う、うん、なんだか男の子の時と違って、物凄いね」


 ……確かに凄い痛がりようだよね。


 【愛と美の神レイチェル】様がトラジャの半狂乱の姿に怯えた様子で返事を返してきた。



 口を塞がれたトラジャの声にならない悲鳴と共に胸からチェストバスターが顔を出して、頭上にたくさんの顔が見つめていることに気がつくと一気に逃げ出し始める。


 だが待ち構えていた俺が(キャロン)の一閃でチェストバスターの『(オーラ)』を断つと動かなくなった。



「なんか……このチェストバスター……髭が生えてるんだけど……」

「目も真っ黒じゃなくて虹彩がないにゃり」


 今まで気にしなかったけど、チェストバスターの姿はまるでトラジャの特徴を備えているようだった。



「もう出て行ったから大丈夫だよ」


 【愛と美の神レイチェル】様がヒューヒュー言っているトラジャに触れて声をかけている。

 すると先ほど同様に神聖魔法を使っていないにも関わらずトラジャの胸の傷が塞がっていき、弱まっていたトラジャの『(オーラ)』も落ち着いてきてイビキをかいて眠りはじめたようだ。



「ねぇ、これで大丈夫、かな?」


 だから俺に聞かないでください……どうやったのかわかりませんが、治したのは【愛と美の神レイチェル】様なんだから……



「……はい、『(オーラ)』は安定しています」

「そっか、それじゃあもう安心みたいだから私は霊峰の町の方に戻るわね」

「え!?」

「ちょっと! 何が『え!?』よ。 まさかアラスカの事忘れてなんていないわよね?」


 あ、そうだった……

 神聖魔法が使えない今、【愛と美の神レイチェル】様のよくわからない力があまりにも頼りになりすぎて、思わず戻るっていう言葉についアラスカの事を忘れて残念に思ってしまった。



「ごめんなさい、ありがとうございました。 それとアラスカのこと、よろしくお願いします」

「うんうん、よろしい。 万事私に任せておいて。 こう見えても2人の出産経験だってあるんだからね、ん?」


 にっこり笑顔を見せてくる。 外見が俺とさほど変わらないから意外に思ったけど、今のマルボロ王国の礎を築いた英雄マルスの妻でもあるのだから当然といえば当然だ。




 セーラムに何か言うと魔導門(ゲート)が現れて、【愛と美の神レイチェル】様は戻っていった。



「まさか伝説の英雄に加えて、女神様にまで会えるとはのぉ……」


 立ち去ったあとトールとその仲間たちが改めてウンウン頷きあって感動していた……


 じゃなくて、ゲッコとガーゴ!



 あまりに静かなため忘れていた。 2匹の方に顔を向けると6メートルは優にある顎が3匹いて、まだ生きているみたいだけどどういう事かおとなしくなっている。

 よく見ると顎の口はロープで縛られていた。



「これは一体どういうことじゃ?」


 純粋な野生生物と戦うことはまずないため、顎の弱点などは知られていない……と思う。


 ゲッコがグアグアと何か言うと、すかさずスカサハが翻訳してくれた。



「顎は噛む力は強いが……開く力はほとんど無いそうだ。 そして美味らしい……」




 こんな世界になってからは塩漬け肉ばかりで、久しく新鮮な肉を食べる事なんてない。

 目を覚ました男の子とトラジャも加えて、ここにいる全員が顎肉を堪能したのは言うまでもない……




次回更新は明日23日の予定です。

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