無情な空間
新章に入ります。
その日は次のダンジョン捜索に必要なものを購入してまわっていた。
ほぼ必要なものを揃えた私が宿屋へ戻ろうとした時、店の前で唸っているマイセンといった青年の姿を見つける。
一瞬でも声をかけようとした自分に驚き、なぜそんな行動を起こそうとしたのか考えながら宿屋に戻った。
7つ星の剣といい、私といい、一体どうしたというんだ? 彼がなぜそこまで気になるというのだ。
答えは出ないまま支度の終えた私は、竜角山の麓へ向かう。 途中にある訓練場に入っていく彼の姿を見つけて、気がつけば私は歩くのをやめて立ち止まっていた。
何が一体起きている?
私自身わからないこの状況に1度頭を振ってから麓へ行き、そして内部に入り込んだ。
竜角山内部に入ると自然と彼の事は忘れて集中しだす。
すぐにダンジョンへと繋がる場所まで行き足を踏み入れた。
7つ星の騎士の使う、騎士魔法の感知のおかげで接近する魔物は全て事前に察知し、7つ星の剣で斬り伏せていく。
途中、ダンジョン組と称した集団と出くわすこともあり、たった1人で捜索する私を見て驚かれたりもする。
数日かけて最初に捜索にきて引き返した辺りまで来ると、ダンジョン組の死体も途中で見受けられる。
冒険者ギルドで受け取るドッグタグが残っていれば、全て回収しながら更に奥へと私は向かった。
先の方で争う音が聞こえてくる。
10……いや、9人に減った。 ここまでこれる冒険者が苦戦する相手とは……
視認できるところまで近づくと、グレートアックスを振り回す雄牛の頭を持った巨人の姿が見えた。
なるほど……ミノタウロスか。 あれに一撃を貰えば確かにひとたまりもないだろうな。
そう思った矢先にまた1人が力尽きた。
「手助けは必要か?」
見ていられなくなった私が声をかけると、その集団のリーダーらしい人物が即座に頷いて返してくる。
7つ星の剣を抜き放ちミノタウロスへ走り、グレートアックスの一撃を予測で躱して斬りつける。
ここまでである程度傷つけられていたミノタウロスは、私のその一撃で倒れた。
「助かった。 ありがとうよ」
「いや、困った時はお互い様だ」
卑下た笑いを浮かべながら男は言い、礼を言ってくる。 その時、倒れている冒険者の数が他にもかなりいることに気がついた。
「こんなにやられたのか?」
「最初の奴の突進で吹っ飛ばされたんだよ」
よく観察すれば突進で倒れたのではないのがわかる。 ミノタウロスのグレートアックスであれば、切断されていておかしくない死体には刀剣で斬られた跡しかない。
「なるほど……居るとは聞いていたが、どうやら私が助けたのは冒険者を襲うならず者だったか」
そういうのと同時に私を取り囲んできた。
「7つ星の騎士団だかなんだか知らねぇが、ここであんたはお終いだ。 おとなしくするっていうんなら、あんた、べっぴんだから助けてやってもいいぜ?」
「愚かだな貴様らは」
やっちまえ! と合図とともに魔法の詠唱が聞こえる。
「我が眼前の敵を爆せよ!火球!」
ウィザードの主力と言われている火球の魔法を使ってきた。
私は騎士魔法の聖剣を使い、白光を放った7つ星の剣を振って飛来する火球を術者であるウィザードに反射させる。
反射した火球が術者に命中して爆発し、その側にいたならず者も一緒に吹き飛ぶのを確認して、残った者たち……特にリーダーらしい人物に向けて剣を構える。
「バカなっ! 魔法を剣で跳ね返しやがっただと!」
「あれはデマじゃなかったのか!」
「親分、こいつはマジヤバいですぜ!」
親分と呼ばれた、やはりリーダーらしかった人物は今の光景を目の当たりにして武器を投げ捨ててきた。
「こ、降伏する……だから、だから命だけは!」
手を頭の上にあげて近づいてくる。
だが私の予測には、この男が隠し持った武器で斬りかかってくるのが既に気づいていて、きりかかる動作を見せた瞬間に私の剣で斬り伏せた。
「や、や、ヤバい! 親分がやられた!」
「お前らズラかるぞ!」
一斉に走って逃げ出そうとする……
ここでこいつらを逃せば、また同じことを繰り返すことだろう。
「7つ星の剣よ、お前の姉妹の力を貸してくれ」
ok master
逃げ出すならず者たちの頭上に7つ星の剣の姉妹たちが姿を見せる。
私に手にある7つ星の剣を振り下ろすと、ならず者たちの頭上に現れた7つ星の剣の姉妹たちも同時に振り下ろされ、走って逃げ出そうとしたならず者全員が倒れた。
倒れたならず者たちの首元を見るとドッグタグはなく、ポケットを漁っても見当たらない。 冒険者登録をしていないものたちなのか、捨てて処分した者たちだろうか?
ならず者によって倒された者たちはドッグタグがあった為、全て回収していく。
想定外の事があり、報告とドッグタグも冒険者ギルドに届けなくてはならないだろう。
私は一旦ここで戻ることにした。
次話更新は今晩します。




