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迷宮の町のコミュニティ

 うっすら明るくなる頃に俺たちは迷宮の町へと向かいだす。

 予定通りなら昼過ぎには到着するはずだ。





「ちょーっと待ってくださいな」


 しばらくして迷宮の町が近づいた頃に先頭を移動する俺をセドリックが止めてくる。



「それ以上進むのをやめて後ろに下がってもらえますかねぇ?」


 顔はいつもと変わらずにこやかで指で俺の足元の先を指差しながらコクコク頷いてくる。

 その頷く先を見ても特に何かあるようには見えない。



(トラップ)ですな」


 下がった俺の肩を叩いてからナイフを取り出して投げつけると、網が勢いよく地面から引き上げられた。



「単純な仕掛けですが、これだけの大きな網なら効果は抜群ですなぁ……もっとも、人種相手ならですがねぇ」


 セドリックの顔が罠の先を睨んでいる。



「つまり奴ら目的ではなく……ここを通る者を狙った罠というわけだ」


 スカサハが付け加えてきた。


 どうやらこの先には生き延びた人たちがいて、そこにいる人たちが仕掛けたのは間違いなさそうだ。



「殺傷ではなく捕縛が目的という事は、良からぬ奴からの自衛じゃろ?」

「トラジャは甘いですなぁ……リーダーはわかりますかな?」


 セドリックが俺に振ってきて考えてみる。

 罠というのは仕掛けられた側が知らず知らずのうちに被害を受ける事を目的として、仕掛ける側が何らかの手段を密かに講じることだ。

 何者かの接近を知るためだけならこんな捕縛するようなマネはしないと思う。

 理由としては自衛のためだったとは言っても納得いくものじゃないし、何よりすぐに確保に来られなければ、今の世界状況から考えていつゼノモーフに襲われるかわからない。

 仮に1日に1度確認しにきていたとしても、その間にゼノモーフ、あるいわ魔物に襲われる可能性もある。



「どういう理由であろうと、罠というのは相手を陥れるものだから?」


 コレが俺の出した答えだった。

 その回答をセドリックはにこやかに頷いてきた。



「さすがはリーダーですな。 そんなわけでして、おそらくそこにいる連中からすれば招かれざる客でしょう」


 見つかれば敵対してくる可能性は充分にあるとセドリックが言ってきた。


 これがシスターテレサが言っていた欲望による行動なのだろうか?




 ここからはセドリックを先頭に立ってもらい、街道を進んで行くことにした。

 なぜ罠があったというのに街道を進むのかと思ったら、罠があったら慎重になって街道を外れて移動するという心理の逆をついたのと、一応敵対する気はないという証らしい。



「まぁもしまた(トラップ)が街道に仕掛けられているようであれば、その時は考えればいいだけですな」


 非常にお気楽にしか見えない事もないセドリックだけど、スカサハがなるほどなんて関心しながら頷いているところを見ると任せておいて間違いはなさそうに思えた。



 そうこうしているうちにすっかり荒れ果てた迷宮の町中に入りだす。

 ここに来るまでで誰とも接触しなかった事から安心していたけど、町中に入ってすぐにゼノモーフの姿を発見する。



「数は1匹、仕留めるか隠密に移動するかはリーダーの判断に任せますが、どうしますかね?」

「昨晩話した通り、必要なものを手にして引き返す、それだけで行こう。 セーラム、魔法をお願い」


 セーラムが頷いて素早く行動に移した。



「者、物を視界より消し去る球体よ、我が中心に現れよ! 不可視球体(インヴィジビリティスフィア)


 2度目ながら未だ本当に魔法効果が出ているのか疑問に思える中、セーラムが親指を立ててきたから移動を始めた。


 町中にはそこらかしこにゼノモーフの姿が見えたけど、だからと言って大量にいるわけでもない。

 俺と一緒に横並びに歩く猫ちゃんの案内で、宝物を隠している場所を目指す。

 町を抜けて古城に繋がる森を抜けた時に俺たちの目に入ったのは、湖上に浮かぶ古城に繋がる橋が破壊されていた。



(これじゃあ古城に行けないにゃり)


 ヒソヒソ声で俺に訴えてくる。



(いかにもな小舟ならあそこにありますがねぇ……それとも泳いでいきますかな?)

(儂は泳げないぞ!)

(……同じく)


 トラジャは何となくわかるけど、まさかスカサハまで泳げないとは思わなかった。



(水中呼吸(ウォーターブリージング)の魔法をかければ泳げなくても大丈夫だよ?)


 それならいかにもな小舟を使わないで済む。 そのアイデアで行こうと思ったけれど、ゲッコがグアグア何か訴えてきた。



(この湖の中は顎のテリトリーだから危険だそうだ)


 顎とは巨大トカゲの事で、大きさは物によっては5メートルは優に超えるんだとか。

 俺はよくわからないが、ワニという人もいるらしい。



(どちらにしてもあそこには生存者がいて、別に俺たちは敵じゃないんだから堂々と向かうのはやっぱりマズイかな?)


 どう考えても生存者たちは湖上の古城がある島にいるはずだ。 きっとそこで生き延びていて、この小舟を使って行き来しながら食料なんかを手に入れに行っているのだろう……?



(ここに小舟があるって事は、今ちょうどこっち側に来ている人たちがいるんじゃないかな?)


 そう考えるのが自然だと思う。 でなければ誰がここまで小舟を運んだのかという話になるからだ。


 そしてその考えはすぐに的中することになる。



(気配が近づいてきてる。 5人分だ)

(どうするんじゃマイセン、決めるのはお前さんじゃ)


 全員の目が俺を見つめてくる。

 ここで判断を見誤るわけにはいかなかった。



(猫ちゃんとスカサハ、セーラムは残って隠れていて。 あとゲッコとガーゴも)


 3人だけで接触してみて安心なら呼ぶし、そうでなかった場合はセーラムにリーダーをお願いすることにした。

 のだけど……



(私にリーダーとか無理だから)


 ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ! だってセーラム女帝国の女帝でしょ!?


 そう思ったけどセーラムはただのお飾りで国の事は何もしていないのだという。

 どんどん近づいていて時間がないから、スカサハに頼むことにした。



(私も基本的には個人行動が多いが……まぁ何とかしてみせよう)


 そうと決まればセーラムたちにはここから離れてもらって、俺とトラジャ、セドリックの3人だけが残った。




次回の更新は15日の火曜日を予定しています。


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