表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/285

残る者先を行く者

 焦らずにゆっくりと宿場町に入っていく。


 街道の両脇に立ち並ぶ建物には大量のゼノモーフの姿があって、蟻が巣で作業をするかのように何かせわしなく動いていた。


 街道を歩く限りでは姿さえ消していれば問題なく進めそうだ、そう思った時スカサハが俺の肩を叩いてきて指である場所を指し示してきた。


 会話をしてゼノモーフに気がつかれないようにするためだけど、それでもスカサハが指し示した方向にいた存在に思わず声が出そうになって手で覆って声が漏れないようにした。


 ……ゼノモーフの女王(クイーン)、しかも大量の卵を産み続けている。

 もしアレが寄生先を見つけてって……なっ!?



 ゼノモーフがまだ生きていた人を連れてきて、卵に顔を突き出させて、出てきたフェイスハガーに寄生させていた。

 生きていた、というより生かしておいたのだろう。


 放っておくわけにはいかない……放っておけるわけがない。


 まだ生きている人がいる人たちを救おうと足を止める。



「あれを見て見過ごすわけにはいかないな……ここは俺が引き受けよう。 お前たちは先を行け!」


 声をあげたことと、鞭をパシーンと振ったことでリセスドにゼノモーフたちが気がついたようだ。



「……!」


 引き止めようと声をあげて(キャロン)を抜こうとした俺の口と手を止められてしまう。



「お前は成すべきことをなせ。 ここは俺たちに任せろ、いいな!」


 ディルムッドもそう言って槍を構えてリセスドと背を合わせる位置に立った。


 俺もと思ったもののセーラムに止められて、普段とは違う真顔で見つめてきて首を振ってくる。



 ……くそぉ!


 まさかこんないきなり展開が来るなんて思いもしなかった。


 俺は誰かに引きづられて2人から引き剥がされてしまう。

 最後に2人を見た光景は群がるゼノモーフたちに覆われていくところだった。






 宿場町を超えてゼノモーフの姿が完全に見えなくなって一度足を止める。



「なんで! なんでなんだ! みんなで戦えば勝てたはずじゃないか!」

「落ち着いてマイセン。 そしてよく耳を澄ませて。 ほら、まだ戦っている音が聞こえるでしょ?」

「もっと仲間を信じたらどうじゃ?」


 言われて耳を澄ませば確かにまだ戦い争う音が聞こえている。 でも、だけどたったの2人だけだ。



“人の気持ちを踏みにじるような事をしたらいけないと思うよマイセン”


 俺の正面にキャロが両手を広げた格好で姿をみせた。



「キャロ……君まで俺に仲間を見捨てろというのか?」

“マイセンのその優しさとか正義感はわかるけど、もし逆の立場だったら喜んだ?”

「……!」


 キャロのあまりにも的確な言葉を言われて言葉が出なくなる。


 もしアレが俺だったら……



「私らは進むのだ。 進まなくてはならない。 お主……いや……ギルガメシュならどうしたと思う?」


 ギルガメシュさんなら……クソッ!



「……先を、進もう」



 キャロの言う逆の立場だった場合どう思うのかと、ギルガメシュさんならどうしたと聞いてきたスカサハの言葉に、俺は何も言い返せなくなってしまった。




 見捨てるような気持ちになりながら迷宮の町を目指して歩きだす。

 暗くなった雰囲気の中、街道を進んでいき日が暮れ始めたとこで野営することにした。



「猫ちゃんの家? でいいのかな。 場所はどの辺りになるの?」

「えとね……古城の近くにゃり……」


 猫ちゃんが宝を隠している場所は家ではなくて古城の側らしい。 そうなると当然迷宮が側になるからゼノモーフが大量にいる可能性は高くなりそうだった。



「普段なら冒険者が仲間の募集で大勢集まる場所だが……今はおそらく奴らの救う場所になっているだろうな」


 迷宮の町で冒険者をしていたスカサハが、おおよその位置がわかってため息を漏らす。



「そこはまた姿を消していけばいいじゃろ」

「まぁそれが1番いいでしょうなぁ……ただし、そう簡単にはいかないと思いますけどな」


 セドリックが渋い顔を見せてくる。

 どういうことか聞けば、宿場町と違って大きな町それも冒険者が多く集まる場所となれば、間違いなくコミュニティができているはずだという。



「それの何が問題だというんじゃ」


 俺はその理由をギルガメシュさんから聞かされていた。

 弱肉強食の世界になった今、そこに集まって生きている人たちが必ずしも善良とは限らないと。



「霊峰の町には大統領存命ということで統率されていますがね、他じゃどこのどいつが統率しているかわかりませんからなぁ」

「それなら無闇に接触しなければ問題ないのではないか?」

「そう出来れば1番いいかもしれませんなぁ」

「これ以上仲間を減らすわけにはいかないし、迷宮の町は姿を消して移動して無駄な接触は避けていこう」


 俺の意見にみんなが頷いた後だ。



「なんだか世知辛い世の中になたにゃりなぁ」


 猫ちゃんの漏らした言葉に全員苦笑いがあがった。




 野営の順番を決めて、明るくなる頃合いを見計らって出発することに決める。

 たったここまで来る間に仲間は2人減り、セーラム、トラジャ、セドリック、スカサハ、猫ちゃん、それと俺を含めて6人に減ってしまった。




次回更新は明後日13日の日曜日の夜を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ