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リインカーネーション 〜転生した史上最強の魂を持つ者〜  作者: 小さな枝切れ
意地をはった結果(ダンジョンパート)
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学んだこと

「意地をはった結果」最終話です。

 目の前で仲間だった人たち全員が殺されるのを目の当たりにしたせいか、悲鳴をあげたあと呆然となっていて動こうとしない。



「逃げて!」


 僕はそう叫びながらオーガに向かっていくのだけど、まるでわかっていたように急に立ち止まって巨大な棍棒を一振りしてくる。

 その一撃は気配でわかっていたからギリギリのところで躱した。


 そのまま走り抜けて、立ち尽くしている冒険者の手を取って引っ張る。



「お願いだから走って! 君まで死んじゃダメだ!」


 焦点の定まらない目で僕を見つめてくるのは女の冒険者だった。



 迫ってくるオーガから守るように、その女の冒険者を抱えて避ける。 そのために手から剣を手放すしかなかった。



「くっ……」


 あるのは今朝予備に買ったダガーしかない。 刃渡り30㎝程度のダガーでオーガが倒せるとは到底思えないけど無いよりはマシという程度のもの。


 最悪せめて相打ちでもと、抱えていた女の冒険者の背中を押して腰にあるダガーを引き抜いて構える。



「ゴメン、君たちを助けようと思って来たけど……無理かもしれない……」




 そう一言つぶやいたあとオーガと向かいあい、振り回してくる巨大な棍棒を必死に躱し続ける。

 躱すことはできてもダガーが届く距離まで近づけないし、徐々に僕の体力も限界が近づいていて、足はもうガクガクしていて力が入りにくくなっていた。



 ダメだ、もう足が限界だ……


 そう思った時、後ろからブツブツ何か聞こえて、それが魔法なんだって気がついた。



「突き抜けろ(イカズチ)雷撃(ライトニングボルト)————!」


 そう聞こえた直後、僕の真横を稲妻が走り抜けて、オーガに命中して更に貫通していった。

 オーガが電撃により身体をブルブルと震わせているけど、まだ息の根は止まってない。



「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 集中や気配なんか関係ない。 ただ今は、ありったけの力を振り絞ってオーガの脳天にダガーを突き立てることだけを考えて、疲労困憊の身体に鞭を打って踊りかかった。




 オーガの固い頭蓋を貫通させてダガーを突き立てる……するとオーガの動きが止まって、少し経つと崩れるように倒れた。


 それを確認すると急に腰の力が抜けてへたり込んでしまった。



 そんな僕のところに女の冒険者が近づいてきて覗き込んでくる。



「ねぇ、なんで見ず知らずの私たちを助けてくれたの?」

「なんでかな……気がついたら身体が勝手に動いていました」


 ゆっくり立ち上がって改めて辺りを見回すと、死屍累々の惨状となっている。

 その中に僕がさっき手放した剣があって、拾いにいって腰の鞘に戻した。


 女の冒険者を見ると仲間だった人たちのドッグタグを集めている。

 やっぱりここで死ぬと、死体は置いていかれてその人とわかる物だけを持って帰るのが普通のようだった。



「君は、これからどうするの?」


 遺品を集め終わった女の冒険者が聞いてくる。



「できたら……麓まで道案内をしてもらえませんか?」


 顔を真っ赤にさせながら僕はお願いした。



 仲間が死んで、目の周りを赤くさせた女の冒険者がキョトンとしながら僕を見てくる。



「迷子になってたんです……」


 ぷっ……くすくすくす……



 声を押し殺しながら笑われる。 恥ずかしかったけど、ここで僕も格好つけて帰り道がわからないままでいるわけにはいられない。



「それじゃあ、道案内をしてあげる代わりに、私の護衛をしてもらうというのはどうかしら?」


 その女の冒険者はウィザードで、魔法は使えるけど武器の扱いは苦手らしく、その魔法もさっきの雷撃(ライトニングボルト)で記憶した分はほぼ使い切ってしまったらしかった。



 魔法使い……ウィザードはゆっくり休んだあとに、自分用の魔法書(スペルブック)からその日に使うであろう魔法を選んで記憶する。

 魔法書(スペルブック)を記憶しないで読み上げると、その魔法が書かれたページ自体が消失してしまうため、いちいち記憶して魔法を使用するのだけど、また記憶し直すまでポッカリ詠唱なんかを忘れてしまうものなんだそうだ。



「はい! それでお願いします!」




 お互い身支度を整えて、仲間だった人たちの遺体は隅に一箇所に纏めて【死の神ルクリム】に祈りを捧げた。



 女の冒険者も僕も遺品で一杯になりながら、麓を目指して移動をはじめる。

 その間道を教えてもらう以外、特に会話もなく戻る。 途中魔物にも遭遇したけど、麓付近ともなればオーガの様な強敵ではなくて、簡単に倒していく。



 そして麓まで戻った時は既に日もすっかり落ちきっていて夜になっていた。



「本当に助かりました。 ありがとうございます!」

「うううん、こちらこそ。 あとは私1人で大丈夫だから」


 手を伸ばしてきたから、僕が持っていた遺品の荷物を渡そうと荷物を下ろそうとすると。



「それもあるけど……ここは握手するところだと私思うの」

「え、ああ、ゴメンなさい」


 そう言って改めて握手をしてから荷物を渡してから別れた。



 今回、僕は意地なんか張ったせいで迷子になった。 強くなろうとするあまりの焦った結果だった。

 焦る必要なんてないんだ、もっとこれからは慎重になろう。



なんだかもう、町パートとダンジョンパートだけでいいような気がしてきました。


次話は町パートになりますが、その前にアラスカの話が最初に入ります。

更新はお昼頃を予定しています。



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