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2つの気配

結局予定通りになってしまいました。

 あれだけいたゼノモーフが全滅している。 いや、わずかに生き残ったのもいるけどそれはギルガメシュさんが弓で射殺した。



「この魔法があれば儂らなんか必要ないんじゃないかのぉ?」


 誰もが思った事をトラジャが口に出して言う。

 だけどキャス様とセーラム2人が同時に首を振ってきて、地上ならねと答えてきた。



「うん、キャスの言う通り魔法は確かに威力は凄いけど、それは自分の身の安全が確保できる地上ならではなのよ。 ダンジョンで今の魔法を使ったらダンジョンごと潰れちゃう」

「記憶量もあるしね」


 2人が揃って指をぴーんと立てながら詳しく教えてくれる。 それはつまりゼノモーフの女王(クイーン)と戦うときは魔法を期待するなと言っているように見えた。



 そしてギルガメシュさん以外の人たちが、今のを呆然としながら見ている姿がある。



「ギルガメシュさん!」


 やっぱりギルガメシュさんは衝撃波(ショックウェーブ)を放ったことで俺の存在に気がついて、向かってくるゼノモーフだけを攻撃するようにしていたんだそうだ。



「それで見知ったやつもいるが、そいつらがそうか?」

「はい」

「ならなぜココに来た……いや、それは後だ、さっきの爆音で集まられたらかなわん」


 ギルガメシュさんが手で合図を送ると全員孤児院の方へ引き返しだす。



「俺たちも行こう」





 孤児院の外壁の門をくぐってやっと一息つける。

 俺とアラスカの揃った姿に気がついて歓声が上がって人だかりが出来て、しばらく身動きが取れなくなっている間に誰かが大統領とシスターテレサを呼んできたようだ。

 まずは大統領がセーラムと外交的な挨拶を済ませてからそれぞれ席に着く。


 すっかり会議室になった元シスターテレサの寝室で、早速ここにきた要件を話した。



「猫ちゃんがデスから盗んだキーがやっぱり必要みたいです。 なので猫ちゃんを連れて迷宮の町まで連れて行く許可が欲しい……いえ、連れて行かせてもらいます」


 シスターテレサが驚いた顔をみせる。



「人種の命運は君たちにかかっているんだ。 もちろん連れて行ってもらって構わない。 ただし必ず無事に連れて帰ることを約束してもらいたい」

「それはもちろんです」

「そうなるとあとは当の本人が了承するかといったとこだねぇ」


 とシスターテレサが言ったら間もなく扉が開いて猫ちゃんが姿を見せた。



「別にいいにゃりお」


 さすが猫獣人、耳の良さは相当なものだ。



「それじゃあ僕は君たちの帰りをここで待ちたいところだけど、あっちはあっちでやらなきゃいけない事もあるから戻るよ」


 話は決まるとキャス様がキャビン魔導王国に戻ろうと席を立つ……とそこでクルッと反転してきた。



「そうそうアラスカのお願いは伝えておくよ、じゃね〜」


 言うが早いか魔法を詠唱して姿が消えていった。



「やっぱり手伝ってはもらえないんだ」

「当然だろう、今この世界でまともに神威を保持しているのはおそらくだが【魔法の神エラウェラリエル】だけで、その代行者となれば頼まれごとも多いだろうからな」


 なるほどねぇ……



「それよりアラスカのお願いって何?」

「前にあなたに言っただろう? 食料とできたら魔導兵を派遣してもらいたいというものだ」


 それは助かると大統領が喜んで、アラスカに感謝していた。



「出発はいつだ?」


 リセスドが深く椅子に腰掛けたまま聞いてくる。

 窓から外を見るかぎりまだ昼を過ぎた頃で、今から向かえば夜には宿場町までギリギリ間に合うかもしれない。

 そこでふとアラスカの事を思い出した。



「出発は明朝にする。 今からでも夜には宿場町に着けると思うけど安全かわからない」


 リセスドが俺を見つめてきてフッと笑うと了承したと席を立って部屋を出て行く。



「それじゃあ儂はノンビリととっておきの酒でもかっ喰らっておるわい!」

「ほぉ! ドゥエルガルの酒と言ったら噂に聞くアレですかな? ぜひ相手をさせてもらいたいとこですなぁ」

「構わんが酔いつぶれて使い物にならなくなっても知らんぞ?」

「はっはっは、いやぁこう見えて酒には強い自信がある方でしてな」


 意気投合しているトラジャとセドリックが笑いながら出ていくのを見送る。



「ん〜、それじゃあ私は1度国に戻って報告とかしてくるかな。 いいかな、リーダーのマイセン?」


 そう言ってひょこっと顔を覗き込んでくる。

 アラスカが美人だとすれば、セーラムは愛らしい感じで、顔を覗き込んでくる仕草につい赤面してしまう。



「おーい?」

「っは!? うん、出発までに戻ってきてくれれば構わないよ」


 ニコっと笑って俺を指した後、すいーっとある位置に動かして止めて、両手をわざとらしく開いて口に当てて驚いた顔をして見せてから部屋を出て行った。


 セーラムが指をさした場所、それは当然アラスカがいる場所だ。



 セーラムがああいう態度を見せたということは、今も俺の後ろで間違いなくセーラムに魅入っていた事を怒っているんだろう。


 覚悟を決めて振り返ろうとしてふと気配が3つあるのに気がつく。


 慌てて振り返るとむくれ顔のアラスカが立っているだけで他には誰もいない。



「あれ?」

「言うに事欠いてあれ? なのかあなたは!」

「ち、違う、そうじゃなくて……え? あれ?」


 アラスカの後ろに誰かいるのか、それとも魔法で姿を隠している輩がいるのかと目をキョロキョロさせる。



「一体何をしているんだあなたは!」

「違うんだ、アラスカの近くに誰か2人いる!」


 今この部屋に残っているのは、大統領とシスターテレサ、猫ちゃん、それとゲッコとガーゴとアラスカと俺だけだ。

 

 これには大統領とシスターテレサも驚いて武器を手に取り出し、アラスカも素早く俺の横に並んで、たった今アラスカがいた方を向いて7つ星の剣を抜いて身構える。



「どのあたりだ?」

「誰もいないにゃりよ?」


 ここにきて俺はやっと気がついた……



「アラスカ、2人の気配の正体が分かったよ。 アラスカのお腹の中に俺の子がいる、それも双子だ」


 え? とでもいうような顔をみせたあと、自分のお腹を見つめた。



「私が妊娠……それも2人も?」

「おやまぁ、これでマイセンも父親になったんだねぇ、しかも出会ってこんな短期間でエルフを妊娠させるなんて、お前さんはとんだ淫魔だねぇ」


 シスターテレサってば、ひどっ!



 この言われようの理由はエルフの女と人間の間に子供ができるのは簡単なことではないらしく、通常エルフ同士でも数十年以上かかって子供を授かるらしい。

 それを俺はわずか1年足らずでアラスカを妊娠させたからだった。




GW中はあまり書き進められず、更新はやはり出来ませんでした。 期待していた方達には申し訳ありません。


次回更新は明日7日を予定しています。

というかたぶん今夜0時か1時ごろ?

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