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畏怖されるマイセン

 僕が言い放つと全員の視線がアラスカから僕に移って、特にキャス様が訝しげな表情を見せていた。



「……最後に『(オーラ)斬りのマイセン』なんだけど、今ちょっと聞き捨てならない事を言っちゃったね?」

「嘘じゃありませんから」

「私のためを思ってなのはわかるし嬉しいが、マイセンやめるんだ」


 アラスカが慌てて僕を止めてくる。



「僕は嘘を言ってはいない。 史上最強の魂もそう言ってくれている!」


 これは嘘だけど、でもアラスカが、自分の妻がこんな姿を見せているのが耐えられなかった。



「なるほどねぇ、マイセン、君はセッターの転生者だったんだ。 だとしてもここの誰よりもって言うのは……さすがに言い過ぎなんじゃないか……」

「そう思いますか?」


 キャス様の真後ろに立って、刀に見立てた手を背中に押し当てた。


 一斉に全員の視線がキャス様と僕を見つめてくる。



「高速移動……違うわ、次元扉(ディメンジョンドア)……これも魔力は感じなかったわ」


 分析するようにキャビン女王様が口ずさんで、セーラム様だけはなんだか笑顔を見せている。 それ以外のアラスカを含む他の人たちはただただ驚いた表情のままだ。


 キャス様が両手を上げて振り向いてくる。 その顔は普段の朗らかな表情ではなく、恐怖が感じ取れた。



「君、今何をしたんだ?」


 そう聞いてきた言葉は非常に低音で、僕の事を本気で警戒しているのがわかる。



限界領域(リミットリージョン)、ほぼ時間が止まった状態で僕は動けます」


 刀に見立てた手を下ろして一礼してから歩いて席に戻る。


 部屋はすっかりシンと静まり返って、僕の事を見続けていた。



「マ、マイセン……いつの間にそんな力を……」

「1度、無防備の時に暗殺者(アサシン)2人に殺されかけて、必死に助かろうとしたら……なんかできたんだ」


 アラスカが僕のことを不安そうな表情で見てきた。


 そんななんとも言えない重苦しい空気の中、唯一違ったのはセーラム様だけだった。



「 生まれ変わってなおパパに近づこうとしてるなんて、さすがお兄ちゃんの転生者だね」


 パチパチパチと手を叩いて見せてくる。

 このセーラム様のおかげで雰囲気が多少変わって、緊張が途切れたように見えた。



「まったくこんなもん見せられた日にゃ、儂らの必要性あるんじゃろか?」

「まったくですなぁ……もはや英雄、代行者を飛び越えて神に匹敵しかねませんな」


 トラジャさんとセドリックさんが苦笑いを浮かべている中、リセスドさんは1人何か考え込んでいた。



「キャビン女王、今回の招集の選出は誰が決めたのか?」

「え? あ、ああっと……それは……」

「……サハラだよ。 彼が記憶障害を起こして姿を消す前にここにいる人たちの名前をあげたんだ」


 キャス様はまだ僕を警戒したままその時の事を話しはじめた。



 それはゼノモーフの襲撃が起こる前の話で、僕が話したニークアヴォの容姿とディアさんの名前をアリエル様づてで聞いた後らしい。

 もしも神々の身に何かあった場合に備えて、サハラ様が選出した名前なのだそうだ。



「他にも優れた人材はいるかもしれない。 だけど安心して、任せられる人材は君たちなんだって」


 安心してを強調してキャス様が僕を見ながら言ってくる。


 疑問なのがなぜそんなに強さを誇示すると警戒されるんだろう。



「信用してもいいんだね?」


 そして今度はハッキリと僕に当ててキャス様が聞いてきた。



「僕はこのゼノモーフの女王(クイーン)討伐には責任もありますから。 それにしてもなぜそんなに警戒するんですか? 僕は敵じゃない」

「うんと……まずは謝らないとねゴメンなさい」


 【魔法の神エラウェラリエル】様の代行者でもあるキャス様が、頭を下げて謝ってくる。 そしてテーブルを挟んだ正面にいたキャビン女王様まで立ち上がって謝ってきた。



「やめてください、僕もキャス様に失礼な事をしたんですから……それよりもなぜなんですか?」

「僕はサハラやウェラさんよりもこの世界を見てきているんだ……それでね」




 過去にこの世界で混乱が起こる時には必ずと言っていいほど、力を手に入れた者が災いをもたらしてきたのだという。

 その力とは権力的なものや薬物的なもの、とにかく他人よりもずば抜けて優れた力を持つ者が関わっているという。



「だったら……僕もその1人なのは確かですね」

「マイセン! アレは違う!」

「うううん違わないよアラスカ。 神様たちは僕の事を許してくれたけど、確かに今回のゼノモーフの事は僕のせいなのは変わりないんだから」


 ニークアヴォに騙されたとしても、ディアさんをゼノモーフの女王(クイーン)にしたのは僕で、それは僕にしかできない事だった。

 僕のこの『(オーラ)』を読める力は過去に力を持ったと言われる人となんら変わりはない。



「そこ、ちょっと詳しく聞かせてもらえないかな? サハラも君の事を知りながら罰する事なく、しかもこの招集にも名前をあげたんだ。 これにはきっと意味があるはずだと思うんだ」


 ミスった、すぐにそう思った。

 なぜなら詳しく話すにはキャロの事も話さなくてはならなくなる。 もしそのせいでキャロに危害が加えられたりするような事は起こってほしくない。



「えっと……それは……」




次話更新は27日金曜の予定です。

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