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のぞき

 食堂は大半の学院生徒たちが校庭に向かったためがらんとしていて、アラスカに習うようにバイキング形式になっている魔導学院の食事を楽しむことにする。

 ゲッコとガーゴのお皿の上には、肉ばかりものすごい量盛られていてそれを歓喜する勢いで食べていた。



「ねぇアラスカ、なんで衝撃波(ショックウェーブ)剣圧(ソードプレッシャー)で木を倒せなかったんだろう?」


 食事をしながら不思議だったことをアラスカに尋ねてみる。

 すると食事の手を止めて、自然界ではそれ以上に酷い環境の中倒れずにいるだろうって言われて納得した。




 食事をとって満足した僕たちはキャス様に割り当てられた部屋に戻る。



「ふぃぃぃ久しぶりにたくさん食べれたよ」

「霊峰の町はそんなに酷い状況か……」

「水はいいとして、食料は自給自足するだけの広さはまだまだ確保できてないからね。 こまめに町に向かって食料になるものを集めてきてる感じだよ」


 もっとも配給がすごく少ないっていう事はなくて、足の速いものからソティスさんのお父さんが上手に消費していってくれている。

 ただ霊峰の町で集められる食料が無くなったら迷宮の町や途中にある宿場町なんかにも足を伸ばさないといけなくなってくる。

 だけど防衛の人員を減らせないから、未だに霊峰の町から外へは探索に出れないでいた。



「ある程度の安全が確保出来ているのなら、明日キャビン女王に言って魔導兵と食料を送ってもらえないか持ちかけてみよう」

「本当に!? 助かるよアラスカ」

「あなたの故郷だ、当然だろう? 」

「そっか、そうだよね。 ゼノモーフの女王(クイーン)を倒したら、アラスカには僕の子供を産んでもらって兄弟たちと一緒に楽しく暮らしていこう」

「まったく……あなたはこの戦いが終われば英雄になれるというのに欲がないのだな」


 英雄かぁ……僕はただ自分のせいでこんな事が起きちゃったから、ケジメをつけたいだけなんだよね。



「そういえば僕たちの他に招かれた人って知ってる?」

「それは明日になればわかる。 だけど今は……」


 最後の方はごにょごにょと聞き取れなかったけど……



 アラスカを抱き寄せてキスをする。

 着ている服を脱がしていこうとしたところで手を止めた。



「どうした?」

「……3人近づいてきてる」


 まったく気づいていないアラスカを見て、やっぱり騎士魔法が使えなくなっているのがこれでハッキリとわかった。


 少し待ってみると僕たちの部屋の前で気配が動かなくなる……



(部屋の前で立ち止まってる)

(ここの守りは万全のはずだが……)


 ひそひそ声で外に聞こえないようにして、そっと(キャロン)を手に取る。

 アラスカも7つ星の剣を手に取って、部屋の扉の前まで行って目配せをしてから部屋の扉を開け放った。



「誰もいない……いや……すぐそばにいる!」

「誰だ、姿を見せろ! 見せないのなら敵とみなして攻撃する!」


 アラスカがそう言い放つと、ヒィ! と悲鳴が上げて1人の姿が突然現れた。

 それは男子学院生徒だった。


 隣の部屋にいたゲッコとガーゴも僕らの声でゼノモーフの短槍(ショートスピア)を手に飛び出てくる。



「残る2人も姿を見せろ! さもなくば……」


 アラスカが7つ星の剣をスラっと抜き放つと、慌てた様子で残る2人も姿を現す。

 残る2人も男子学院生徒で……1人は先ほど僕と勝負した生徒だった。



「ここで一体何をしている? まさかとは思うが……」

「ち、違います! 僕は本当はやめようって言ったんです!」

「フザケンナよ! そんなことを言って、お前だってのぞきに一緒に来たじゃないか!」

「馬鹿! お前それを言うな!」



 ……どうやら僕とアラスカのイチャイチャをのぞきにきたようだ。

 そして見事なまでに自爆して覗きにきたことまで自白してしまう。



「ほ、本当は違う! そうだ! あ、謝りにきたんだ!」


 もう今更すぎるんだけどなぁ……



「私もここには教官として来ていたからわかるが、どういう理由があったところで恋人寮には恋人同士の生徒以外が立ち入るには、その恋人寮にいる者の許可が無ければならない。 知らなかった、では済まされないぞ!」


 ……まぁ当然だろうね。 言ってみれば恋人寮は愛の巣みたいなものなんだから。



 今の騒ぎで学院生徒とは違う服装の人がこちらに向かってくると、3人の男子学院生徒は非常に気まずそうな表情に変わりだして、事もあろうか僕たちに呼ばれてきたことにしてほしいと頭を下げて頼み込んでくる。



「断る。 己でしでかした事は最後まで責任を持て!」


 とアラスカは一喝した。


 学院生徒と違う格好をした人は男のエルフで何事か聞いてくる。



「学院長、なんでもありません、ただ呼ばれてきただけなんです!」

「そうなんだね? でもおかしくないかなぁ? 女王陛下に招かれた2人のうちの1人とリザードマン2匹が武器を手に持っているなんてさ?」


 どうやらこの(エルフ)がキャビン魔導学院の学院長のようなんだけど、この喋り口調……どうも聞き覚えがある。



「それじゃあ2人に伺ってみよう」


 3人が必死に助けてくれとばかり頭を下げていて、実害はなかったんだからと誤魔化してあげようと思った矢先に……



「のぞきにきた」


 情け容赦なくアラスカが答えてしまう。



「3人を助けてあげたいと思う気持ちは無くはない。 だが、7つ星の騎士として見過ごすわけにはいかない。 それに君らは今、世界がどれだけ大変な事態に陥っているかの危機感がなさすぎる」

「なるほどねぇ……じゃあ未遂で終わったわけだね?」


 僕が頷くと学院長は3人にあとで追って処分を言い渡すといって立ち去らせた。



「せっかくのタイミングを邪魔させちゃって悪かったね?」

「キャス殿!」


 あ、やっぱり……


 キャス様は普段は姿を変えて、このキャビン魔導学院の学院長をやっているのだそうだ。



「みんなには内緒だよ?」


 端正な顔立ちと長身で口調以外は全くの別人なキャス様は、ケラケラ笑いながらごゆっくりぃと立ち去っていった。



次話更新は予定通り明日です。

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