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キャビン魔導学院

 キャビン魔導学院の中に通されて、ある一室に通された。



「今日はここを使うと良いよ。 学院の恋人寮だよ。 その2匹のリザードマンは隣の部屋を使うと良いよ」

「キャス殿礼を言う。 あとは私も勝手は分かってるから大丈夫だ」

「そうだったね……それじゃあ、ここは恋人だけの寮だから安心してイチャついてね」

「キャス殿!」


 キャス様は笑いながら立ち去っていった。



「ゲッコ、ガーゴ、また明日ね」


 グアグアと返事をして2匹は部屋に入っていった。



 僕たちも部屋に入って2人きりになってさっそく互いを確かめあうように抱きしめた。



「無事だったんだな」

「うん、さっきも言ったけどカルラは死んだけど……」

「……残念だった」


 アラスカが言葉を続けようとしたところで、僕がキスで口を塞いでベッドに押し倒した。



「ずっと待ってた。 待ってたんだ」

「済まなかった。 私もすぐに引き返そうと思ったのだが、騎士魔法が使えなくなって7つ星の剣だけが頼みになってしまったのだ……」



 アラスカは僕と離れてから馬で町には一切立ち寄らずに7つ星の騎士団領に向かったらしい。 そして7つ星の騎士団領に着いてゼノモーフたちと戦う7つ星の騎士団の姿を目の当たりにする。

 と言っても評議員と正規7つ星の騎士に加えて、見習いとはいえ訓練を積んでいる7つ星の騎士たちの前にはいかにゼノモーフの大群といえど対処の仕方さえわかれば相手ではなかったのだそうだ。



「だがそれも騎士魔法が使えなくなって一変した……」


 圧倒していた7つ星の騎士団も騎士魔法が使えなくなると、非常に素早い動きのゼノモーフの前に見習いでは歯が立たなくなり、次第に押され始めたのだそうだ。



「確か7つ星の騎士団領自治区って元々は何もない場所だったところに勝手に人が集まってきて出来た町だったっけ?」

「そう、7つ星の騎士団とは一切無関係に出来上がった町だ。 7つ星の騎士団領だって彼らが勝手につけたものだからな」



 相当な数の見習いが殺されながらも、その7つ星の騎士団領の自治区の兵士たちと力を合わせてなんとか大群を倒したのだそうだ。



「7つ星の騎士団領にはダンジョンはないはずだからな。 最初のゼノモーフの大群を駆逐したらそのあとはかなり落ち着いたのだ」


 落ち着いてすぐに評議会が開かれたのだけど、初めて騎士魔法が使えなくなった7つ星の騎士たちに余裕はなかった。



「そんな時にキャビン魔導王国から使者が来たのだ。 ゼノモーフの女王(クイーン)を討伐するために、7つ星の剣を持つ私に力を貸して欲しいと」

「そうだったんだね」

「もちろん最初は7つ星の騎士団を脱退するつもりで来たのだから断ろうと思ったのだが、君も討伐に誘われると聞いてな……君なら誘いがあれば行くだろうと思った」

「嬉しいな、僕ならどうするか分かって来てくれたんだ」


 そこでまたキスをしてアラスカも応じてきたところで、僕のお腹が鳴る。



「……あはは」

「続きは……食事が済んでからにしよう……あなた」

「先にアラスカも食べたいところだけど、ゲッコとガーゴもお腹空いてるだろうしね」


 もう一度キスしてから体を起こして、アラスカが佇まいを直すのを待ってから、帯剣だけして部屋を出る。



「食事ってどこでするの?」

「食堂がある。 そこに行けば好きなものを好きなだけ食べられる」

「凄いな……あっちじゃ食料難で大変なのに」

「この国はある時期まで何十年と外との干渉を一切しないで生活してきたほどだからな」

「そうだゲッコとガーゴも食堂に入ってもいいの?」

「どうだろう……ダメ元で連れて行ったらどうだ?」

「そうしてみるよ」


 ゲッコとガーゴを呼ぶと2匹が顔を出してきて、僕がお腹空いてるか聞くとグアグアと素直にうなずいてくる。

 2匹は衣食住に関しては遠慮とかしない。 武装は解除させて僕たちの後をついてこさせる。




 食堂と言われる場所に向かうと、同じ格好をした僕と同い年ぐらいの子がたくさん見えるようになって、通る時に必ず僕たちを見た後にゲッコとガーゴを見て声を上げる。

 それはヒッと小さな悲鳴だったり、驚きや歓喜の声と様々だ。



 食堂に着いて入ろうとすると数名が立ち塞がってきた。



「ここは部外者立ち入り禁止だぞ!」

「帯剣もだ!」

「魔物なんて一体どうやって魔導学院に連れ込んだんだ!」


 ふと思えばアラスカは7つ星の騎士団の外套を着用していない。 だから誰もがアラスカに気がついていないようだった。



「僕らはキャビン女王様に招かれてきたんだ」


 なんて言ったところで信じるどころか怪しむだけだ。

 立ち塞がる中の1人が何かに気がついたようで声をあげてくる。



「そう言えば確か女王陛下があの黒いバケモノのボス討伐に各地の勇者を招集してるって言ってたよな?」

「そう言えばそんな話を学院長がしてたっけ」


 よかったと思った次の瞬間、1人が僕を指差してきて怒鳴るように叫びだす。



「こんな俺らと変わんない歳のやつが勇者だと思うか?」


 すると周りもそうだそうだと言いだし始める。 そして確認するように僕が勇者なのか聞いてくる。

 勇者かと聞かれてはいそうですと言う人がいるのかわからないけど、曖昧な返事をするとキリがなさそうだからうなずいて答えた。



「ありえねぇ!」

「だったら証明してみせろ!」


 ……困ったな。



「外套は部屋に置いてきたが、私は7つ星の騎士のアラスカだ。 彼が信用できなくとも私の名ぐらいは聞いたことがあるだろう?」


 アラスカの名前を出すと立ち塞がっていた生徒たちは驚きの表情を見せてきて、マジマジと見てくる。



「じゃあその剣は……」

「もちろん7つ星の剣だ」


 僕の事は綺麗さっぱり忘れたように歓声が上がりだして、自分の妻がスゲェだとか美人だとか綺麗だと言われれば、嫌でも嬉しくなる。



「お、俺、ファンだったんです! 握手してください!」


 俺も俺もと食事中の人たちまで群がってきて、あっという間に僕は忘れられた存在になってしまった。



「アラスカそろそろ……」

「ん、そうだな」


 僕がアラスカを呼び捨てたのを聞き逃さず、1人が問い詰めてくる。

 なので……



「アラスカは僕の妻だよ」


 耳が痛くなるほどの驚きの声が上がった……




次話更新は明日の予定です。

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