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崩れた世界

この章の最終話になります。

 ギルガメシュさんたちと合流できた僕はその場にいる生存者の少なさに驚く。

 まずギルガメシュさんは無事だったけれど奴隷の姿が1人も見当たらず、聞くとギルガメシュさんの盾となって殺されたのだそうだ。

 それとスカサハさんも生きてはいたけれど、肩の辺りに痛々しい怪我をしている。

 そして兵士たち、見える限りではギルガメシュさんの指示通り小隊を組んだままでいるから、大雑把に見ても5小隊程しかいなさそうだった。



「今のうちに戻りましょう。 冒険者ギルドにいた人たちは今頃は孤児院にいるはずです」

「そうか、俺様たちに集中していたから逃げれたんだな。 正直なところ引き返したいところなんだがな、この中には移動が困難な重傷者がかなりいるのだ」

「どれぐらいいるんですか?」



 その数を聞いて驚かされる。

 今現在この場に50人はいるというのに、中には重傷とはいえ生きている兵士たちは30人はいるのだという。



「それならなおさら奴らが集まってくる前に引き返しましょう」

「ん? それはどういう意味だマイセン」


 僕の予想を手短にギルガメシュさんに話すと、ギルガメシュさんは難しい顔をしながら考えはじめる。



「急いで自力で動けない者の数を数えろ! 支えがあれば動ける者は砦に撤退させろ!」


 まだ大きな怪我をしていない兵士たちが慌ただしく動きはじめる。



「自力で動けない人たちはどうするんですか?」

「担いで行くしかなかろう。 まさか俺様が見捨てるとでも思ったか?」


 ほんの少しだけ思ったのは胸の奥にしまっておく。




 とりあえず自力で歩ける人たちは武器を杖代わりにしながら孤児院に向かって歩き始めて、自力で動けない人たちは無事な兵士たちが背負って移動を開始する。



「スカサハさん肩の怪我は平気ですか?」

「ああ……あの気持ちの悪いネズミ獣人が私の盾になってくれて見た目よりは軽症で済んだのだ」

「じゃあネズミ獣人は……」

「無事だが重傷だ」


 そのネズミ獣人が1人の兵士によって背負われて出てくる。



「そいつは私が運ぶからそこら辺に置いておいてくれ」


 責任からなのか、スカサハさんがネズミ獣人を背負うようだ。

 ネズミ獣人はスカサハさんに背負われると、重症にも関わらず嬉しそうな顔を浮かべて覆い被さったその手がスカサハさんの胸に触れている。

 というよりも完全に掴んでいる。



「お、おお……マシュマロ……」


 てっきり怒ると思ったスカサハさんは何も言わないで孤児院に向かって歩きはじめた。



「貴様はまだ戦えるのか?」


 あっけにとられていた僕にギルガメシュさんから声がかかる。



「まだやれます」

「よし、俺様としんがりを務めてもらうぞ。 何が何でも全員無事に連れて帰る」

「はい!」



 最後尾に僕とギルガメシュさんが警戒しながら移動していると、さっき僕が言った予想の話をしだす。



「つまり貴様は奴らの女王(クイーン)が世界を支配に動き出したとでも言うのか?」

「想像ですけどね。 それにシスターテレサの話だとこれからのこの世界は欲望や願望のままに生きられる弱肉強食の世界であるのなら……」

「なくはない……か。 だがそうなれば元は人種だった【闇の神ラハス】とニークアヴォが人種が滅びるのをいくらなんでも黙ってはいないと思いたいところだが……」


 そこでハッと思いだす。

 女王の元まで行くには猫ちゃんが盗んだ物が必要だったはずだ。



「そうか……行きたくても行けないという事か」

「でもだとしたら……」

「チェシャが……いや、砦の全員が危険かもしれん!」


 今すぐ急いで孤児院に戻りたいところではあるけど、ここのしんがりをしなければならないのが歯がゆくも思えた。


 隣を歩くギルガメシュさんは難しい顔をしながら何か考え事をしていて、僕はてっきり猫ちゃんや女王(クイーン)の事を考えているのだと思っていた。



「……マイセン、砦に戻ったら難しい決断をしなければならんぞ」


 唐突に切り出してきて、今孤児院にいる人数と冒険者ギルドから避難した人数、それとここにいる兵士たちの数が加わると足の踏み場もないほど狭くなるだろうと。

 確かにあれからゲンさんが外壁の広さを広げているとは言っても完成したわけじゃない。



「そうですけど、でも出て行けとも言えないじゃないですか?」

「そうだ。 だが早めに何か対策を考えねば食料もすぐに底をつくだろう」



 そうだった、行商人も来るはずはなく今ある食料が尽きたら町にあるものを取ってくるしかない。 それも無くなったらより遠方に取りに行くか自給自足になる。 どちらにしてもゼノモーフが増え続ければ危険が増すばかりで、僕たちは生きる術がなくなってしまう。



「その辺はおそらく宮廷司祭も考えているだろう。 ひとまず今は砦に戻ることに専念するか」

「そうですね……」




 平和だった世界は一瞬で一変してしまい、ここ霊峰の町以外の情報は一切得られなくなってしまった。

 よその町や国は一体どうなっているのか? 僕たち以外に生存している人たちはいるのだろうか?

 そんなことを考えながら孤児院に戻って行くのだった。




次話更新は明日を予定しています。

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