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マイセン無双

 孤児院を出て町へ1人で向かう。

 孤児院が見えなくなったところでキャロが姿を見せてきた。



“マイセン、私も手伝うよ”

「ありがとう、でもキャロに生気を渡す余裕はなさそうだから1人でなんとかしてみるよ」

“そっか……でもあまり無理はしないでね”

「……うん」


 無理はしないでと言われても、ゼノモーフが大量に入ればそうも言ってられないから、キャロには曖昧な返事だけしておく。



 町に入ると遠くから争う音が聞こえてきて、急いでそちらに駆けつけると冒険者ギルドよりももっと離れていることに気がついた。



 今ならオーデンさんたちを救出して孤児院まで連れて行けそうだけど、そうなるとギルガメシュさんたちが……

 どうする? この場合どっちを優先したらいい?


 冒険者ギルドの前で迷っていると、冒険者ギルドの中から数体の『(オーラ)』が近づいてくるのを感じ取って(キャロン)を構えて待ち構えると、オーデンさんが顔を覗かせてきた。



「うおっと! マイセンか!?」

「オ、オーデンさん!? どうしたんですか?」


 オーデンさんと数名が手に武器を持った状態でいて、話しを聞いてみると食料と水が底をついたから出るしかなくなったのだそう。

 それと奴らの声が聞こえなくなった今しかないと思ったらしい。



「今この辺には奴らはいません。 気づかれる前に全員で静かに孤児院に向かってください!」


 僕がそういうとオーデンさんはすぐに後からついてきていた冒険者に指示を出した。



「お前はどうするんだマイセン」

「僕は……」


 戦い争う声が聞こえる方に一度顔を向けて戻す。


 ぞろぞろと姿を見せてくる人たちは久しぶりの外と変わり果てた町の様子に驚き愕然としながら、疲労困憊なのかまたは前回の事があってか騒ぐ人は誰もいなくて、指示通りによたよた歩きながら孤児院の方に向かって歩きはじめた。



「マイセン、無事に帰ってこいよ」


 最後に残ったオーデンさんに頷いて見せると孤児院に向かいだした。



 これであとはギルガメシュさんたちのところだ。 まだ争う音が聞こえているということは生きているって事で間違いない。




 走って争う音がする方へ向かうと途中途中でまだ真新しい殺された兵士たちの亡骸があちこちに見えて……そして、いた。

 

 正確にはギルガメシュさんたちの姿は見えないけど、麓の近くにある訓練場に立てこもったようで、訓練場が見えないほどのゼノモーフたちの姿があった。



“マイセンまさかあの数を相手にするつもり!?”

「そうしないと助けられないでしょ」

“なら約束して。 逃げるとき以外絶対に限界領域(リミットリージョン)は使わないって”

「……そうならないように願いたいところだね」


 僕がそう答えると突然キャロが口づけをしてきた。

 ゴーストであるキャロの『(オーラ)』はもちろん読めなくて、その不意打ちに驚いていると口を離してくる。



“ゴ、ゴーストに生気を吸われないでキスされるなんて光栄に思ってよね!”


 口を離したと思ったら照れながらそんな事を言ってきたと思ったら、



“……私はこんな姿になっちゃったけど、今でもマイセンの事が大好きなんだよ。 だからお願い、私を一人ぼっちにはしないで”


 そして、うっすら涙を浮かべながらキャロが僕の事を見つめてきた。


 キャロはゴーストになって(キャロン)に宿っている。 そうなったのは死んでも僕と一緒に居たいと思う強い想いからだ。



「わかったよ。 可能な限り限界領域(リミットリージョン)は使わないようにするって約束するよ」

“うん”


 涙を浮かべたままニッコリ笑うとキャロは消えていった。





 そっと鯉口を切って(キャロン)を抜く。



 それじゃあ……大暴れしてやるか!



 (キャロン)を振り下ろして衝撃波(ショックウェーブ)を放って、ゼノモーフたちが『(オーラ)』の衝撃で切り刻まれていく。

 それが戦闘の合図になって、訓練場を取り囲んでいたゼノモーフたちが一斉に僕に襲いかかってきた。


 距離があるうちに衝撃波(ショックウェーブ)を放って纏めて倒していき、近くまで来たゼノモーフを剣圧(ソードプレッシャー)で一網打尽にしていく。

 それも突破してきたゼノモーフは(キャロン)で斬って倒し、飛び散ってきたゼノモーフの体液は猫ちゃんが作った籠手で防ぐ。


 とにかく接近されすぎないように、また囲まれないように注意しながら衝撃波(ショックウェーブ)剣圧(ソードプレッシャー)を駆使しつつ、それでも近づいてきたゼノモーフは『(オーラ)』で絶っていく。

 しかし圧倒的な数の前に囲まれないようにするというのは無理なもので、『(オーラ)』で読めていても複数のゼノモーフの攻撃がどう足掻いても躱せそうにない。



 死んだら約束も何もないよね……


 このゼノモーフたちの攻撃を躱すには限界領域(リミットリージョン)しかない。 次の瞬間攻撃を避けるのに必要な時間だけのために限界領域(リミットリージョン)を使って躱せるだけ動いたら限界領域(リミットリージョン)を解いた。


 僕のいた場所には多数の尻尾やらインナーマウスが襲いかかってシュンシュンシュンガチガチガチと空を切る。

 その隙に剣圧(ソードプレッシャー)で一網打尽にした。


 この今の限界領域(リミットリージョン)程度の時間であれば意識がなくなるどころか眩暈や鼻血すら出ていないことに気がついた僕は、この後もいつ終わるかわからない戦いの中で避けきれない時だけ使うようにしながら戦っていった。





 どれぐらい時間が経ったのか日も暮れだした頃、訓練場の方からギルガメシュさんたちの姿が見えて僕の姿に驚いていた。



「マイセンか!? そうかそれで奴らの攻撃が弱まったのか」


 気がつけばあらかたゼノモーフを駆逐していて、残ったゼノモーフも不利になってくると距離を取り出し始めるけど、それはむしろギルガメシュさんの弓の的になるだけで、暗くなる頃には全て倒しきっていた。



次話更新は月曜か火曜日に更新予定です。

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