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冒険者登録

町中ではコミカルです。

 僕の名前はマイセン、今日で15歳の成人を迎え、今まで育ててくれた孤児院を出ていく日が来た。




「マイセン、本当に冒険者なんかになるつもりなのかい?」

「はい! 強くなっていっぱいお金が稼げるようになったら、必ずここに寄付しにきますね!」

「そうじゃなくてだねぇ……」


 僕を小さい頃から面倒を見てくれたシスターテレサと別れの挨拶をしている。



「何も死ぬかもしれない冒険者になんかならなくたって」

「もうずっと前から決めていたことなんです。 それにシスターテレサ、無茶は絶対しないから」


 僕の強い意志に諦めた様子を見せて、1通の手紙を渡してくる。

 これが僕が孤児院出の証となって、働く場所に提出すると国からの恩恵が受けられるというありがたいもので、希望する働く場所で寝食なんかの保証やらをしてもらえる事になっている。



「兄ちゃんがんばってなー!」

「たまには帰ってきてね」


 僕の兄弟のように一緒に育った子たちも見送りに来てくれて、そんな声に見送られながら僕は手を振ってこの町外れにある孤児院を出て、冒険者ギルドのある町の中心地に向かって歩きだした。




 手伝いで何度もシスターテレサに連れられて来てたから、どこに何があるかはもうわかるし慣れっこになっている。 にもかかわらず、いつ見ても霊峰竜角山の大きさには感動を覚えてしまう。



 孤児院から見ても大きいけど、近くに来るとやっぱり竜角山は大きいなぁ。 あれ? 今日は随分と冒険者ギルドの前に人がいる……


 何かあったのかなと思いながら、冒険者ギルドに近づくとあちこちで7つ星の騎士団の人が来て、突如現れたって言われてるダンジョン捜索に来たみたいな話をしてた。



 7つ星の騎士! 見たかったなぁ。




 7つ星の騎士団は僕が大好きだった英雄物語の1人で、人類史史上最強と言われる英雄セッターが結成したっていわれている、世界平和の為だけに尽力する騎士たちの集まり。 噂では一騎当千の強さを持っているって言われてるほど。 ララノア協定というのが100年ぐらい前にできてからは戦争がすっかりなくなって、平和が続いているから実際にはわからないけど。


 僕はいつか7つ星の騎士団に入る夢を見ていたけど、幼少のころからの訓練が必要と知ってがっかりしたこともあった。





「冒険者登録をお願いします」


 冒険者ギルドに入って、優しそうな受付のお姉さんに声をかけて手紙を差し出す。 手紙を見たお姉さんが笑顔で登録を済ませて、完了すると冒険者証になるドッグタグを渡される。



「それは君の身分を証明するものだから、絶対に無くしたらダメよ? それじゃあ、マイセン君、私についてきてくれるかな?」



 言われるままに着いて行くと、冒険者ギルドのすぐ側にある建物に入っていく。 中はなんだか妙に飾りの多い内装で、男の僕には少しだけ居心地が悪い。 いくつかある中の1つの扉を開けて入った。



「ここが今日から君の部屋よ。 狭いけど我慢してね」

「何から何までありがとうございます!」

「それと、私の名前はヴェル。 君の隣の部屋が私の部屋だから、困ったことがあったら聞きにきていいからね」

「はい! って、隣なんですか!?」


 どうやらこの建物はギルド職員の寝泊まりする場所でもあるみたいで、今ここに住んでいるのは3人、全員女性職員だけって言われる……



 今日は資料室で冒険者について勉強しておくといいよって教えてくれると、ヴェルさんはにっこり笑って仕事に戻っていった。

 僕はヴェルさんに言われた通り冒険者ギルドにある資料室に行って、冒険者のノウハウなんかを勉強していく事に。


 冒険者……というか、クラスというのがあって、まぁ色々あるみたいだけど、僕ができそうなのは武器を使って戦うぐらいしかなさそうかな。




 夕方になるとヴェルさんが来て、食事代を渡されて食べに行ってくるよう言われた。

 冒険者になったのだから、好きな酒場で食事も出来るようにならないとダメなんだって。



 日が落ちだした町を歩いて、手頃な酒場に入ったまでは良いけど、何しろお店になんか生まれて初めて入ったから、どうしたら良いかわからなくて入り口から少し入ったところで立ち往生していた。



「お客さん?」


 1人の従業員の女の子がそんな僕に声をかけてくる。



「す、すいません。 こういうとこ来るの初めてで、どうしたら良いのかわからなくて、その……」

「そのドッグタグ……冒険者なのよね? その繁華街のいかがわしいお店に来た、みたいな言い方はやめてもらえないかな。 えーと、1人ならカウンター席空いてるからそこに座って」



 言われるまま空いているカウンター席に座ったまではいいけど、そこからもどうしたらいいのかわからなくて、僕はさっきの従業員の女の子を必死に探した。



「はい、お水。 君ってば本当に何も知らないのね?」

「ごめんなさい……僕は、その孤児院で育ったから……」


 そう言った瞬間ハッとした顔をさせて何か悟ったように謝ってくる。



「別にいいんですよ。 気にしてませんし、あはは……」

「君、名前は?」

「マイセンです」

「そっか、マイセン君ね。 私はソティス。 じゃあ食事はお任せでいいかな?」

「お願いします、ソティスさん」



 なんだか嬉しそうな顔をしながらソティスさんがキッチンに入っていった。


 親切なソティスさんのおかげで、無事に食事を終えてお店を出ようとすると、ソティスさんが僕の名前を呼びながら小走りで近づいてくる。



「ねぇ、もし迷惑じゃなかったら、明日からもうちに食べに来てね」

「ありがとうソティスさん、じゃあそうさせてもらいます」

「ほんとっ? じゃあ待ってるから」


 元気で優しい子だなぁって思いながら、僕は冒険者ギルドが貸し与えてくれた建物に戻っていった。




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