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カルラの死

 目が醒めて目だけで見回す。

 こんな事は一体何度目だろうか……



「あ、マイセン君が目を覚ましたよ〜!」


 そんなスクルドさんの声が聞こえたかと思うと、覗き込んでくるヴェルさんとウルドさん、スクルドさんの顔が見える。



「あの……僕はどれぐらい倒れていたんですか?」

「1時間ってところかな?」


 1時間ぐらいか……



「そうだ! カルラは? 猫ちゃんは?」


 僕が聞くと言葉で言わなくてもわかる表情を見せてくる。



「……少年、落ち着いて聞くんだ。 少年が猫ちゃんと呼んでいた子は無事だ。 だけどもう1人のカルラと呼んでいた方は……亡くなったよ……」


 ……そ、そんな、本当にカルラが死んだ……



「……じゃあ、ガイモンとプリュンダラーの2人は、どうなりました」


 自分では気がつかなかったけど、聞いた時の声が普段と違ったみたいで3人が一瞬強張った顔で僕を見て黙り込んでしまう。



「い、今、テレサ様が……」


 それを聞いてベッドから飛び起きて部屋を飛び出た。


 孤児院の中も外も人でいっぱいになっていて、かき分けるように進んでいくと兄弟たちの泣き声が聞こえてくる。

 そっちへ向かってみると地面に横たわされたカルラがいて、その周りを兄弟たちが囲って泣いていた。 その中には泣きじゃくる猫ちゃんもいて、ディルムッドの姿もある……



「ディルムッド……」

「マイセンか……」

「ゴメン、僕がもっと早く限界領域(リミットリージョン)を使ってれば……」

「いや、これは俺がお前に手を出すなと言って招いたことだ。 マイセンのせいじゃない。 それにきっとカルラはプリュンダラーの存在に気がついたから捕らえられたのだろう」


 僕は何も言えなかった。

 だって、こんなにも辛い表情をしたディルムッドは見たことがなかったから。



「う……くっ……お、俺は、これだけの力を持っていながら……たった1人の大切な女……愛する妻と子の命すら守ってやれなかった……これだけの、強さがあるというのに……」


 あまりに悲痛なディルムッドの声に僕はなんて言ったらいいかわからず、肩に手をのせてからその場を離れる。

 今はそっとしておくのが良いだろうと思ったからだった。


 もう一度だけ横たわるカルラの姿を見つめた後、シスターテレサがいる場所を探しに向かった。





「マイセン!」


 呼び止められて振り返るとギルガメシュさんがいて僕に頭を下げてきた。



「済まなかった……」

「ギルガメシュさんは悪くないですよ。 悪いのは……プリュンダラーだ!」


 それだけ言って離れていく。

 ギルガメシュさんは何か言おうとしたみたいだけど奥歯を噛み締めて顔を背けていた。




 おそらくここだろうと思う場所に向かうと案の定そこにシスターテレサとガイモン、プリュンダラーの姿がある。

 その場所はゲッコとガーゴに見張らせた場所で、2匹は僕の言ったことを忠実に守ってこの場から動かさせないでいたようだ。



「プリュンダラー!!!」


 僕が(キャロン)を抜いて近寄るとプリュンダラーは悲鳴をあげる。



「ひ! ひぃぃぃぃぃ! やめろ、やめてくれ! 悪かった、な? 俺が悪かった。 もうお前からもアラスカからも手を引く。 これからは真人間になって7つ星の騎士らしく生きる。 だから……だから、殺さないでくれ!」


 呆れて物が言えないとはこの事だ。 助けてくれだけならまだわかる……コイツはそれに加えてまだ7つ星の騎士でいるつもりでいる。



「およし! コイツを殺していいのはマイセン、お前さんじゃないだろう」


 シスターテレサが止めてきて、少しだけ冷静さを取り戻す。



 ……そうだ、コイツを殺していいのは僕じゃない、ディルムッドだ。


 シスターテレサに止められてとりあえず生きながらえたプリュンダラーは、ヘラヘラと笑いながら僕を見ている。



「それじゃあディルムッドを呼んできます。 こんな奴さっさと死んでしまえばいい!」

「まぁ少し落ち着くのだ。 ディルムッドはもうしばらくそっとしておいてやった方がいい……それにこの男ならお主の求める答えを知っているかもしれないぞ?」


 スカサハさんが意味深な事を言って、ディルムッドを呼んでこようとした僕を止める。



「何を、ですか?」

女王(クイーン)の居場所だ」


 そうだ、もしゼノモーフの女王(クイーン)である、ディアさんの居場所がわかればゼノモーフはもしかしたら死滅してくれるかもしれない。


 僕はディルムッドを呼びに行くのをやめて、プリュンダラーに尋ねる事にした。



「プリュンダラー、ディアさんの……女王(クイーン)の居場所を言え!」


 ヘラヘラしていたプリュンダラーがチャンスとばかりに今度は顔をニヤつかせてきて条件を提示してくる。

 それはもちろん殺さないという条件なのだけど、死にたくないのはわかるけど、だけどここまで生に執着する理由がわからなかった。



「お前はなぜそこまで生きたいんだ」

「そんなの決まっている。 俺は死ねば確実に死極行き確定だ。 だったら僅かでも生きていたいと思うのは間違っているか?」


 そうだった……僕の時は知らなかったという理由でなんとか死極行きは免れたけど、プリュンダラーの場合は明らかに分かっていながらニークアヴォの手助けをした。


 女王(クイーン)の居場所は知りたい、だけどディルムッドが果たしてプリュンダラーを殺さない事に納得してくれるだろうか?



 そんな事を考えながら答えに困っていると、フラッフラッとまるでゾンビのような動きでディルムッドがこちらへ近づいてきた。




次話更新は水曜日を予定しています。

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