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潜入、衝撃の事実

 神聖化(ハロウ)の効力がないアイボリーハウスを放棄して、孤児院奪還を優先することにした僕たちは本来通り2組に分かれて行動することになった。



「いいか、貴様らがもし失敗すればここにいる全員がおそらく死ぬ。 それを肝に銘じておけ」

「そう言われたって神聖魔法が使えないとなると私はただの道案内しか出来ないよ」

「マイセンがいる。 貴様が思っている以上にあいつは強い」


 ハァとため息をついてシスターテレサはついておいでと移動しはじめる。

 ギルガメシュさんに軽く会釈をして後を追った。



「いいかいよくお聞き。 秘密の通路を抜けて出る場所は元々私の部屋だったところだ。 今は大統領の部屋になってるらしいから警備も厳重だろうよ。 出たら大統領補佐官のガイモンだけでいいから必ず取っ捕まえるんだよ!」

「はい! シスターテレサ」

「心得た」


 ゲッコとガーゴもグアグアと返事をする。


 そしてその秘密の通路の場所に着くと先頭にディルムッドが入り込んで続いて僕が、その後をシスターテレサが進んでゲッコとガーゴが最後についてくることにした。



「それにしてもよくこんな穴を掘りましたね」

「知りたがりは早死にすると覚えておいたほうがいいよ」


 シスターテレサのなんとも言えない気迫に僕は苦笑いを浮かべるしかできなかった。


 そして本当に細い通路を進んでいきある程度進んだ頃、後方から凄い速さで追ってくる気配を感じ取る。



「誰か来る!」

「誰かといったらゼノモーフしかないだろうな」


 狭いこの中では順番も入れ替わるだけのスペースも無い。

 一番後ろをついてきていたゲッコに任せるしかなかった。



 やがて松明に照らされて見えたのはやはりゼノモーフで、それが四つん這いになって走ってくる。



「まるで犬だな」


 ディルムッドが悠長に見た姿の感想を述べている間に、ゲッコは槍を構えて動かないでいる。

 やっぱり戦うだけのスペースがなかったのかと思った矢先、ゼノモーフがゲッコの構えた槍に突き刺さる。

 悲鳴のような声をあげながらも、口からインナーマウスを突き出してガチンガチンとゲッコを殺そうとしてきたけど、ゲッコの前を歩いていたガーゴが後ろから槍を突き出してその顔を貫いて止めを刺した。



「心配する必要はなかっただろう?」


 ディルムッドが僕に笑いかけると先を急ぎだす。

 普段どれだけ僕が仲間の事を見ていなかったかを痛感した。




 さらに長いトンネルを進むと先から数多くの気配が感じ取れる。



「そろそろ着きますか? 気配がたくさん感じ取れます」

「お前さんは本当に7つ星の騎士みたいだね、そうさ、もうあとちょっとでたどり着くよ」

「ふむ、では明かりはそろそろ消しておいたほうが良いんじゃないのか? それとタイミングはどうする?」


 僕はディルムッド、シスターテレサが僕に掴まって歩いていってディルムッドが立ち止まったところで待機する。



 部屋の中にいる気配の数は4人で、聞こえてくる会話から大統領とヴェルさんたちのようだ。



 更に待つと孤児院内が慌ただしくなってくる。 おそらくギルガメシュさんたちが到着したんだろう。



「行くぞ!」


 ディルムッドが短く言葉を発して秘密の扉を開け放って飛び出すと、驚いた顔をした大統領とヴェルさんたちの顔がある。



「なんだ貴様たち……きゅ、宮廷司祭!? と魔物!?」

「マイセン君!」

「少年!」

「マイセン君だぁ!」

「大統領救助に来ました! それとあの2匹は味方です、安心してください」


 ゲッコとガーゴが最後に出たあとにしっかり秘密の扉を閉じている。 なんだかどんどん人種社会に馴染んでいっていて、そのうち共通語も喋り出すんじゃないかと思えてしまうほどだ。



「事情はあとでするよ。 ほら大統領、私らもついていくからグズグズしていないで騒ぎが何か聞きに行くんだよ」


 うむ、とシスターテレサの言うことを聞いて部屋を出ていき、そのあとを僕たちもついていった。





 孤児院の外、外壁の内側に出ると僕たちは身を隠して大統領とヴェルさんたちだけ見えるような形になる。



「ガイモン、これは一体なんの騒ぎだね!」


 大統領が声をはりあげると慌てた様子で外壁の上に立っていたガイモンが振り返ってくる。



「大統領!? いえこれは……」


 外からはギルガメシュさんたちの早く開けろや、大統領を呼べなどの声が上がっている。



「チッ、おとなしく部屋に引っ込んでいれば良かったものを……」


 ガイモンがすぐ隣にいた兵士に何か言うと軽やかに外壁の上から飛び降りて、大統領に近づこうとする。



「それ以上大統領に近づくんじゃないよ!」


 シスターテレサが大統領の前に守るように出る。



「ババァ生きていたのか、つまりあの兵士の伝達は嘘だったわけだな」

「ババァとは失礼だね、こう見えて私ゃまだ100年も生きてないよ」


 はい? シスターテレサ、今何と?



「なるほど……エルフ……いや、混血か」


 衝撃の事実、シスターテレサはアラスカと同じ人間とエルフのハーフだった。 しかも耳が尖っていないから、人間として生きていることになる。


 ちなみにこの世界でのハーフエルフは物心がついた頃にどちらの種族として生きるかの選択を迫られる。

 エルフを選んだのであれば1000年生きると言われるエルフには及ばないものの、それでも500年は生きるらしい。

 そして人間として生きる場合は、人間よりも多少長命となり容姿も若い姿を長い年月保つという。


 どうりでシスターテレサは美人のままなんだ。



「フン、だからなんだと言う。 神聖魔法も使えない貴様など我の敵ではない」

「ほぉん、やっぱりデスは今回の事、何かしら知っているんだねぇ。 そこまで知っているのならお手上げだね、殺される前に神聖魔法が使えない理由ぐらい教えてはくれないかい?」


 一瞬考えるそぶりを見せたあと、よかろうと話し始めた。




次話更新は明日です。


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