作戦内容
ホールに集合した僕たちはシスターテレサからの作戦内容が説明される。
まず最初に生存者の救出に町に向かうほぼ全員の方からはじまった。
「いいかい、目的は生存者の救出だよ。 無駄に交戦して死んだら、ミイラ取りがミイラになるだけだからね」
そう切り出してから手順と指揮を取るギルガメシュさんを紹介する。
もちろん兵士たちからしたらいくらトップパーティだろうが、冒険者が指揮官なんてとなるところなんだけど……
「ここにいるギルガメシュはね、冒険者をやっているが現メビウス連邦共和国の元首の子だよ。 お前さんたちもよぉく知っている方のね」
それを聞いて兵士たちが一斉にざわつきはじめる。
こっそり近くの兵士に尋ねてみると、ギルガメシュさんは伝説の王の中の王と称されたマルボロ王国初代国王マルス王の転生者じゃないかと噂されているほどの人物なのだそう。
それを聞いて思い返してみる……ギルガメシュさんが王様、ねぇ……
なんだか無いような気もするけど1つだけ気になるところがあって、ギルガメシュさんは妙に僕と親しく接してくれる。
セッターとマルス王は共に戦った英雄同士だから、もしかしたら何か関係しているのかもしれないとか?
「俺様がどういった評価をされているかは興味無いが、貴様らの指揮をとる以上勝手な行動は一切許さん。 そしてそこには無論死ぬことも含まれている。 肝に銘じておけ!」
短い言葉ながら兵士たちは声を揃えて返事を返していた。
それでもって作戦はいたってシンプルに冒険者ギルドにいた生存者の救出をしたら、迅速に孤児院に向かうだけというものだった。
他にも生存者の可能性はあるかもしれないけど、今回は冒険者ギルドの生存者だけを優先するらしい。
というのも一般市民を守りながらの撤退は大変だからだった。
「重要なのはここからだ。 とりあえず貴様らにはだいたい10人1組程度のチームを組んでもらう」
それを小隊と呼んで、ギルガメシュさんの命令に従って各自行動してもらうようにするんだけど、状況次第によっては各小隊の小隊長が判断しても構わないそうだ。
そこでまた兵士たちがざわつきだして、まるで冒険者みたいじゃないかという声が上がりだす。
「指揮官殿、質問であります! なぜ自分たちに冒険者まがいな事をさせるのでしょうか!」
我慢しきれなくなったのか兵士の1人が挙手して尋ねてきて、ギルガメシュさんはその質問してきた兵士を睨みつける。
「単純な事だ、貴様らの敵は人種では無くゼノモーフと呼ばれる魔物だ。 大隊を組まずに小隊だけで構成された軍であれば、小回りがきくであろう、違うか?」
今の答えで納得する者、そうでない者が出てきて、質問してきた兵士がさらに質問をしてくる。
「小回りがきくというのは理解できました。 ですが納得がいかない点があります」
兵士が聞いたのは軍隊戦術で、普通は主力となる大部隊が動きやすくするための小隊はあっても、全部隊を小隊に分ける事はあり得ないのではといものらしいんだけど、この辺りになってくると兵士ではない僕には全くもって理解できない話になってきた。
「ディルムッドは言ってる事わかる?」
「さっぱりだ」
そういうとお手上げのようなポーズをしてみせてきた。
他にも冒険者業で生きてきている人たちもギルガメシュさんと兵士たちが話す内容がわからないようで、暇を持て余しはじめているようだった。
「……というわけで理解できたか?」
「お噂に違わぬお方だと認識できました!」
「余計な世辞は必要ない。 わかったのならさっさと小隊を作れ」
そこからは兵士たちの迷いが晴れたようにテキパキと小隊を作っていき、全部で8小隊が出来上がった。
つまり、だいたい80人ほど居ることが僕でもすぐにわかる。
そこにギルガメシュさんが自分の3人の奴隷と3人の冒険者のウィザード、イシスさん、スカサハさん……とネズミ獣人の男で小隊を組んだ事で全部で9部隊ができたようだ。
そうするとまたシスターテレサに変わって、今度は大統領と孤児院の奪還する僕たちの作戦に入る。
「まぁこちらは私についてきてもらって、孤児院に入りしだい大統領の保護と大統領補佐官のガイモンを捕らえればいいだけだよ」
「抵抗した場合は殺してしまっても構わんのだろう?」
即座にディルムッドが訪ねてくるけど、シスターテレサは首を横に振ってガイモンの殺害を認めない。
「聞きたい事が山ほどあるのさ」
「では生きてさえいればどのように捕らえても構わないのかな?」
はぁ〜とため息をついてからシスターテレサはやり過ぎないでおくれよと注意する。
「あとは念のため仲間がいるかもしれない、十分に気をつけておくれ。 それと万に一つ私らが失敗したら、救出に向かう連中も行き場を失う事を肝に命じておくんだよ」
結構は明朝に決まり、今晩はゆっくり休むように言って解散になった。
解散後に僕とディルムッド、ギルガメシュさんの3人で少し話をしていた時だ。
「……どうにも落ちつかん」
「ポジショニングか?」
「貴様という奴は……」
ディルムッドがいちいち冗談を間に受けるななんて笑う。
「勘……ですか?」
僕はギルガメシュさんのレンジャーとしての勘だと気がついて聞いてみると頷いてきた。
「かなり嫌な予感だ。 こんなの生まれて初めてなほどのな」
そしてそのギルガメシュさんの勘は深夜になって見事に的中することになるのだった。
次話更新は明日の予定です。




