一時の休憩
なんだか自分の家のようにシスターテレサは僕たちをダイニングルームに連れていって、そこで食事をするんだけど、ちょっぴり期待した食事とは大違いでただの保存食だった……
まぁ当たり前だよねー。
食事は思い思いの人と楽しんでいるようで、シスターテレサはイシスさんと楽しそうに話をしていて、ギルガメシュさんは戦闘奴隷と食べている。 もっともこちらは無言だけど……
ディルムッドは冒険者たちと一緒に食べながら話をしている。 もともと話せば気さくな人だから、話が盛り上がっているようだ。
そしてスカサハさんなんだけど……
「なぜお主が私の隣で食事しているのだ!」
「いや……その……べ、別にいいじゃないか」
「お主は私に拷問されたんだぞ! それともマゾかお主は」
「………………」
「そこで黙るな!」
と、なんだかネズミ獣人がスカサハさんの拷問で、何か目覚めちゃったみたいだ。
そして僕はゲッコ、ガーゴの2人と食べている。
2匹の身体には酸でやられただろうと思われる傷が結構あって、自己再生で治っているとは言っても中には痛々しいものもある。
「ゲッコとガーゴは僕についてきちゃったばかりに、こんな目に合わせちゃってゴメンね」
そうするとグアグア、グアグアと僕には何を言ってるかわからないけど、2匹揃って首を振ってきて否定してくる。
なのでいくつか質問してみることにした。
「ゲッコとガーゴは戦いが好きなの?」
「グアッ」
頷いてきたからそうなんだろう。
「傷は痛むところはない? もし痛いのならシスターテレサかイシスさんに治療してもらうよ?」
「グアグア、グアッ」
うーん、何を言っているのかさっぱりわからないや……
「ゴメン、ちょっと何を言ってるかわからないけど、これからもよろしくね」
「グアッ!」
「グアッ!」
2匹が食事を止めて片膝をついて平伏する姿勢を取りだしたから、僕の方が慌てて「いいからそのまま食事を続けて」っていう始末だった。
食事も済んでみんなを探すと、シスターテレサとギルガメシュさんの姿が見えない。
ディルムッドに聞いたら今後の作戦を考えるとかで出て行ったんだそうだ。
「そっか、どちらにしてもオーデンさんも兄弟やカルラも気になるし、早くなんとかしたいとこだね」
「うむ……それとだな先に言っておくが、あいつは俺が殺る。 横取りしたらマイセンであろうと許さないぞ?」
「わかってるって。 ところでさ……」
「……言いたい事は分かっている」
そう言って目をやる先にはスカサハさんが、執拗に近寄ってくるネズミ獣人に「近寄るな!」とか、蹴りまで入っている。
だと言うのに……
「ネズミ獣人、なんだか嬉しそう……というか喜んでる?」
「あれはまるでララノア様の父上に似ているな」
「そ、そうなの!?」
「実際に目にはしていないが、当時1番力を持っていたアンドゥダグ家の長、今は【保護の神ロルス】になっているが、そのロルス様の拷問を受けても平然としているどころかもっと要求したとかで、引かれたほどだと聞いている。 確かドM王と呼ばれていたはずだ」
その話を聞いて正直言って本気でひいた。
シスターテレサの神聖魔法、神聖化でアイボリーハウスが守られているからなのか全員がリラックスしているように見える。
僕もくつろいでいるとシスターテレサとギルガメシュさんが戻ってきた。
「作戦が決まったよ」
シスターテレサがそう言って内容を説明しはじめる。
作戦はいたって単純で、二手に分かれて大統領と孤児院の奪還を行うのと、町へ行って生存者の救出をして脱出するというものだった。
ただその際、大統領と孤児院の奪還には隠密行動を取るため少数それも4〜5人程度で、残った人は全員町の方に向かうことにするらしい。
「そこで誰を行かせるかで少々難航してねぇ……」
それぞれシスターテレサは大統領と孤児院の奪還を行い、ギルガメシュさんが生存者の救出の指揮を取るまでは決まったらしい。
「問題は誰を行かせるかだ」
敵となるデスのメンバーが何人いるかわからない孤児院奪還には特に人選が重要らしく、かと言って訓練こそして実力はあるものの実戦経験の少ない兵士たちを引っ張れる人材も必要なんだと言う。
当然ギルガメシュさんの戦闘奴隷は一緒に町へ向かうことになる。
ここでディルムッドが迷うことなく孤児院奪還に行く方を要求してくる。
「カルラの救出が優先だ。 町へ行けというのなら俺は個人行動を取らせてもらう」
「まぁ孤児院でのお前さんのカルラに対する姿勢を見ていれば、そう言うだろうと思っていたよ」
へぇぇってディルムッドを見るとばつが悪そうな顔をしている。
「そうなるとあとは誰にするかだが……」
「テレサが孤児院なら私は町へ、かしら?」
「まぁそうなるね。 それにお前さんの聖歌は味方が多ければ多いほど力も発揮するだろうよ?」
そうなると残るのは僕とスカサハさんのどちらかになる。
ちなみに一緒にいる仲間の冒険者は3人ともウィザードで隠密行動には適さないため除外されている。
「私は町の方へ行こう。 この町じゃ私はよそ者だからな」
「となると予想通りに決まりだな」
ギルガメシュさんがそう言うけど、大事なことを忘れている。
「ゲッコとガーゴはどうするんです?」
「貴様は最初に4〜5人と言ったのを忘れたか?」
という感じで決まりあとは作戦になる。
作戦はホールで全員に話すことになった。
次話更新は明日を予定しています。




