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生きていたテレサ

 最後に僕が入り込むとアイボリーハウスの門が固く閉ざされる。



「これで一息つけるか?」


 現在仲間はギルガメシュさんとディルムッド、スカサハさんにイシスさん、ギルガメシュさんの戦闘奴隷が3人に冒険者が3人、それとゲッコとガーゴの総勢15名から13名になってしまった。

 先ほどの2人のクラスが戦士の人だったから、残る冒険者は3人ともウィザードとなってしまい、武器による戦闘はあまり期待できなさそうにない。


 イシスさんは酸を飛ばしてきた時、2人が盾になってくれて無事だったらしく、その分2人を失うことになって辛そうに見える。




「……おかしいとは思わないか?」


 沈んだ状況だというのにもかかわらず、ギルガメシュさんは気にしないで辺りを見回してそう言ってくる。



「何が……」

「確かにおかしいな」

「ふむ……違和感ありありといったとこよな」


 僕以外のほぼ全員が見回しながら頷きあっている。

 改めて周りを注意しながら見回してやっと気がつく。



 荒らされた形跡がない……それどころか、争った形跡すらない。



「奴らは内部には侵入できなかったのか、侵入しなかった……といったところだな」

「外の兵士たちが守りきったんじゃ?」

「マイセン、貴様本気でそんな事を思ってるんじゃないだろうな?」


 ギルガメシュさんが睨みつけながら言った後、足元を調べはじめた。



「間違いなく戦闘の形跡はないな」


 足跡か何かを見ているのか、そんな事を言ってくる。



「これは……神聖な力を感じるわ。 間違いない、これは高位神官が扱える神聖魔法、神聖化(ハロウ)だわ! この神聖魔法が使える人物なんて言ったら……」

「ああ、この国じゃ私ぐらいなもんだろうね、久しぶりだねぇイシス」



 声が聞こえて姿を見せたのは……



「シスターテレサ! 生きていたんですね!」

「まったく……勝手に人を殺さないでおくれよ」

「相変わらず年寄り臭い喋り方は治っていないのね?」



 シスターテレサが生きていた。

 しかも後を続くように兵士たちが姿を見せてきて、その人数は広いホールを埋め尽くすほどいる。


 というより、シスターテレサとイシスさんって知り合いだったの!?



「これは一体どういうことか説明してもらえるのだろうな?」

「お前さんは……メビウスの貴族の小せがれかい。 この建物の中はもう安心だ、一緒についておいで」



 シスターテレサに連れられて以前にも入った応接間で話を聞くことになる。



「順を追って話すとするかね」


 それは襲撃が起こるよりももっと前からで、シスターテレサはメーデイアさんから大統領補佐官のガイモンが怪しい動きを見せていると報告を受けていたらしい。

 でも決定的な証拠もないため行動に移せずにいたところに、僕を襲ってきた暗殺者(アサシン)を捕らえられて大統領府に連れて行ったら口を割ったそうだ。



「今じゃ素直ないい子になったもんだよ。 入っておいで」


 扉が開いてあの時のネズミ獣人が姿を見せて、僕の姿を見るなり膝をついて謝罪してきた。



「えっと……これは一体どういうことなんですか?」

「命の保証さね」


 大統領補佐官をしている男がデスの高位メンバーで、もし自分の存在が見られたら間違いなく処分される。

 そこでシスターテレサに条件を言って助けてもらったということらしい。



「まぁ詳しいことまでは知らなかったけど、これであのバケモノが襲ってきた時の作戦が立てられたというわけさ」

「わかっていて何故事前に防がなかった?」

「いろいろと疑問が多かったからねぇ、人種存亡の危機を優先させたのさ」


 その疑問の1つが、デスは今回のこのゼノモーフの事を知っていたように思えたことらしい。



「なのでね、一芝居打たせてもらったわけさ」


 ゼノモーフが襲ってきた時大統領たちには隠し部屋に隠れる時、大統領補佐官のガイモンはシスターテレサの案で麓に兵を送り込んで守りが手薄になったのだからと攻めてきたんだそう。

 なのでシスターテレサは責任として前線に出ることにしたそうだ。

 その際、大統領には頃合いを見計らって隠し通路から脱出するように言っておいたと。



「念のために兵士の1人に私が死んだと伝えさせておいたんだよ。 そしたらその兵士が戻って私にこう言ったのさ。 『大統領補佐官の顔が妙にニヤついて見えました』とね」


 ここでシスターテレサは愉快そうに笑い、その後はなんとかゼノモーフたちを蹴散らした後、アイボリーハウスに生き残った兵士とともに入って神聖化(ハロウ)の神聖魔法で邪な者を寄せ付けないようにしていたのだそうだ。



「……とまぁコッチはこんな感じだがね、今度はお前さんたちのことを聞かせてもらおうかい? まぁあらかた予想はついているけれどねぇ」




 ギルガメシュさんがここまでの僕らのことを話していくと、シスターテレサは頷きながら静かに耳を傾けていた。



「なるほどねぇ……大統領の座は奪わないでいるわけかい」


 ここまでで結構な時間が経っていて、一度一息入れておこうと食事をすることになった。



「シスターテレサ、急いで取り戻しに行かなくてもいいんですか!?」

「まったく……マイセンはもう少し落ち着きを持つんだよ。 どうせあそこは外はバケモノがいて袋の鼠なんだろう? それでもってあそこは私が考えて作った孤児院だ、心配しなくたっていいよ。 それよりも冒険者ギルドの生存者の方を優先したいとこだねぇ」



 当たり前のことだけど、物心がついた頃からずっと一緒にいたシスターテレサが、こんなに凄い人だと初めて知る。

 宮廷司祭を任されているのも納得だなぁ。


 でもただ1つ、気になるのはシスターテレサって今何歳なの!?

 実年齢は教えてもらったことがないから、ずっと見た目で30代ぐらいだろうって勝手に思ってたけど……

 イシスさんと同年代と言われればやっぱりそのぐらいなんだろうけどさ……




ちょっと更新する余裕があったので……


次話更新は当初の予定通り明日です。

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