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緊張高まるコミュニティ

 外壁で待ち構えているとホープ合衆国の国旗が掲げられながらこっちに向かってくる一団がある。



「あれは! きっと大統領たちですよ!」

「ああ、そのようだな……」


 なぜかギルガメシュさんは嬉しそうではない様子だ。




「お前たち、こちらにいるのは大統領だ。 ただちに門を開けろ」


 大統領の側近のような人物が叫んできて、ギルガメシュさんはため息を1つついてから門を開けるように指示を出す。

 中にいる人たちは大統領の無事に喜びの歓声があがっているなか、ギルガメシュさんだけは僕にこっそりと声をかけてきた。



「マイセンよ、覚悟をしておけ。 特にあの男をな」

「え?」





 大統領たちの一団が入ってくると一気に狭苦しくなる。

 そんなことは御構い無しに作戦を決めたりするのに使っていた部屋に通すと、さっそくこの部屋を大統領の部屋にしましょうと先ほどの男がいい出し始める。



「お言葉ですが大統領、ここはご覧の通り手狭でして、周りのみんなと同様少し控えてはいただけませんでしょうか?」


 こういう時ってギルガメシュさんもこういう喋り方になるんだ!



「ん、君は誰だね?」

「はっ、私はギルガメシュ、現在このコミュニティの統括している者でございます」

「ギルガメシュ? ああ、確かダンジョンの方のトップパーティのリーダーの1人だったな! 君がここを守ってくれていたのか。 よくやってくれた、感謝する」

「はっ、恐れ多い言葉です」

「今後は大統領がここを統括するゆえ、今後の事は任せて貰おう。 おっと、私は大統領補佐官のガイモンだ。 今後君たちに指示を出すのは大統領から直にではなく私からになる」



 大統領が来たのだから仕方がないとはいえ、まるでお払い箱のような扱いをギルガメシュさんが受ける。


 ギルガメシュさんは諦めにも似たため息がこぼれて、頭をさげるとそれ以上何も言わなくなった。



「あの、シスターテレサはどうしたんですか?」

「おお、お前はマイセンか、君も無事だったんだな」


 そこでなぜか黙り込んで一呼吸開けた後に衝撃の一言が告げられる。



「……宮廷司祭は立派な最後を遂げられたそうだよ」


 え!? 嘘だ。 シスターテレサが死んだ?



「なんで!」

「大統領府にももちろん奴らはやって来た。 麓に大半の兵を持っていったのもあって、守りも手薄になってしまっていた責任からなのか宮廷司祭は自ら前線で戦いに行ったのだ。 しばらくして兵士の1人から討ち死にの報告を聞かされた……」


 大統領たちはシスターテレサの提案で秘密の部屋で待機していたのだそうだ。

 そして数日過ごしてからシスターテレサに言われていたように隠し通路から大統領府を抜け出て、町は未だにゼノモーフがいるから他にはと思ったところでここを思い出して向かったらしい。


 兄弟たちには一体なんて言ったらいんだろう……シスターテレサ……母さん……




 僕たちはここで部屋を出されてしまい、追って指示が出るまで待つことになる。



「これからどうなるんでしょう?」

「大方予想はつくが、俺たち冒険者は討伐に駆り出されるだろうな。 あとは他の町や宿場町の状況調査辺りか」




 このギルガメシュさんの予想は物の見事に的中して、僕たち冒険者は大統領補佐官のガイモンに言われて町にいるゼノモーフの討伐命令が出される。

 もちろん兵士たちはここの防衛として残すため、町へは行かすことはしないで僕らはまるで捨て駒扱いだった。

 カルラは妊娠していることと、シスターテレサの代わりに兄弟たちの面倒を任されることになって、討伐隊には加えられないで済んでディルムッドは安心した顔を見せていた。




 猫ちゃんは不気味ながらゼノモーフの死体から作ったプロテクターやらが完成していて、しっかりと隠しておいたらしい。



「どうせ驚かそうと思って隠してあっただけだろう?」


 スカサハさんがそう言うと、猫ちゃんはふひゅひゅひゅーと音が出ない口笛を吹いてごまかしだした。



「にゅふふ、たぶんこれで酸は大丈夫にゃり」

「ありがとう猫ちゃん!」

「お針子技術が役立ってよかたにゃりよ」


 これがお針子技術なのかは非常に疑問だったけど、たぶん盾や腕だけの籠手、すね当てがあって、僕は籠手だけ貰って身につけることにした。


 あとはいつの間にかゲッコとガーゴがゼノモーフの尻尾で槍を作っていて、しかもそれが結構大量にできている。



「尻尾はいらなかったからゲッコとガーゴにあげたにゃり」


 ということだった。


 槍が扱える冒険者はゲッコとガーゴに感謝しながら貰っていて、今では言葉こそ通じないものの最初からいたみんなとすっかり馴染んでいる。




 準備を終えて外壁の門の前に集まると、なんだかプリプリ怒っているヴェルさんの姿があって、僕の姿を見つけるなり絡んできた。



「ちょっとマイセン君聞いてくれる? 私たち大統領の秘書にされたのよ!」

「それって怒るところなんですか?」

「当たり前じゃない!」


 大統領にそもそも秘書なんか必要なくて、補佐官がほぼ全部一手に引き受けているはずらしい。

 それなら何をするかと聞くと、簡単に言うとメイドの様な扱いみたいらしい。

 だけどそれを断ってここを出て行けと言われるのが怖くて、大人しく従っているふりをしているんだとか。



「っざっけんじゃねーぞ、ゴルァ!!」


 もの凄い怒声とともに何かを殴っている音が聞こえてくる。



「えーと、あれは……」

「ウルド先輩に決まってるじゃない」


 じゃあスクルドさんはと目で探すと……



「ふふっ……ふふふふふふふふっ」


 いやぁぁぁぁぁぁ! スクルドさんがナイフで何かをメッタ刺しにしてるぅぅぅぅ!


 ザクザクザクザクザクザクという音と、ドカンバコンッとすざましい音が耳から離れない。

 どうやらヴェルさんだけはまだマシなよう……


 ……バキャッ!!


 手からポロポロと何かが落ちていき、にこやかに手に残った木の実を食べている。



「マイセン君も、食べる?」


 そう見せてきたものはクルミで、どうやら素手で殻を握り割ったようだ。



「え、遠慮させていただきます……」



 他にも食料庫の方から言い争う声や、外壁を作るはずのゲンさんが何やら文句を言いながら建物らしいものを作っている。



「み、みんな、討伐に行こうか?」


 反対する人は当然誰もいなくて、そそくさとまるで逃げ出すように外壁の門を出て町へ向かう。

 ゼノモーフがいる町は危険だけど、今のこの砦はそれ以上に危険に思えた。



次話更新は土曜日の予定です。


この間PV10000人と書きましたが、ユニークの間違いです……

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