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コミュニティ

 ギルガメシュさんの元に戻った僕は、早速今後の話に入っていく。

 今この場にいるのは、僕とギルガメシュさん、ディルムッド、スカサハさん、猫ちゃん、ヴェルさん、ソティスさんのお父さんのバーモントさん、ゲンさんと言う大工をやっていた人の8人だ。



「俺様はここの統括をしてやるが、反対するものがいれば今のうちに言え」


 いきなりな発言ではあったものの、今日までの見事なリーダーシップに誰も特に反対するものはいないようだ。



「よし、それではまずはもう少しここの外壁を広げたい、それはゲンに任せる、必要な人員は貴様が選べ。 それと料理はバーモント、貴様には食材の管理も任せる。 人員管理はヴェルと2人の職員でやれ」


 ギルガメシュさんの態度には慣れたのか3人が頷く。



「ここ……俺様たちの砦の防衛責任者はディルムッド、貴様に任せる」

「期待に応えるとしよう」

「チェシャはバケモノの死体で役立ちそうなものを考えて作ってみろ」

「おおっ! 開発にゃりね! ししょーよりも偉くなたにゃ……痛ったいにゃり!」


 ゴチンといい音がしてスカサハさんの拳骨が猫ちゃんに落ちると、その場に笑いが起こって和んだ。



「スカサハにはその能力を生かして明日から町の方の捜索をやってもらう。 出来るな?」

盗賊(シーフ)というクラスである以上、致し方あるまいな」

「最後にマイセン、貴様は俺様と共に行動しろ、そして学べ」


 何を? と聞こうとする前にギルガメシュさんが解散を言い渡して、顎でついてこいと仕草をしてくる。



「どういうことですか?」


 後を追いかけながらギルガメシュさんに聞いてみる。



「前にも言った通りだ。 貴様には俺様の身に何かあったらあいつらを導いてもらう。 そのためにもリーダーとしての資質を身につけてもらう」

「でもそれはギルガメシュさんに何かがあったらの話じゃないんですか?」

「もし全世界でここと同じことが起こったのであれば……これからは今までの常識は通じなくなってくるはずだ」


 ギルガメシュさんが言うことは僕にはよくわからない。

 だけどこの意味も数日後に思い知ることになる。



 僕はこの日からギルガメシュさんの後をついて歩きながら、リーダーの資質というのを学んでいくことになる。



「貴様の治さねばならない最初の1つは、自己犠牲精神だ。 リーダーが仲間を守るために自己犠牲をしてそれでもし助かったとしても、残された連中はリーダーを失えば、結果として崩壊することになる可能性のほうが高い」

「だったら僕なんかよりディルムッドとか、他にもリーダーに向いてそうな人はたくさんいると思いますけど……」


 なんでギルガメシュさんが僕をリーダーにしたいのかわからない。 ディルムッドとかヴェルさんとかウルドさん、スクルドさんは……無しで、スカサハさんとかいると思う。



「確かに、貴様以外にも候補はいる。 だがな、考えてもみろ。 ここにいる奴は皆貴様を慕っている。 これが貴様を選んだ理由だ」


 えーと……言われてみれば、ここにいる大半は僕の知り合いとこの町に住んでる人たちだっけ。



「でも……それだけですか?」

「もう1つは貴様の嫁の存在だ。 もはや伝説級の7つ星の騎士の女を娶った貴様はそれだけでステータスになる」


 それはなんだか後ろ盾があるみたいで嫌だけど、今思えば僕って凄い人を奥さんにしたんだよなぁ……

 アラスカは無事なんだろうか……




 なんだかんだでうまいこと乗せられた気もするけど、僕はギルガメシュさんにいろいろと教わることに決めた。

 別にリーダーになりたいからとかではなく、それが僕の成長にもつながると思ったから。





 それから数日が経って今も時折少ないながらもゼノモーフが襲いかかってくることもある。 それはディルムッドたちでちゃんと討伐されて、猫ちゃんの開発に使われる。

 食事はバーモントさんが食材の管理をしながらも、みんなが満足いくだけの料理を提供してくれている。

 そしてゲンさんが数名で外壁の範囲拡大を防衛を任されているディルムッドたちと組んで外壁の外に二重の外壁設置をしているみたいだった。

 そしてヴェルさんたち元冒険者ギルドの受付をしていた3女神は、ここにいる全員の名簿とドッグタグを作成しはじめた。


 スカサハさんは町に単身で向かい生存者の捜索やらをしていたけれど、未だに町にはゼノモーフたちがいて順調とは言えない状況らしく、しかも増えている気がするなんていう報告までされた。




「おかしすぎる!」

「何がですか?」

「なぜ増える? クイーンが新たに生まれでもしたとでもいうのか!?」


 最初はスカサハさんの見間違いじゃないかとも思われたけれど、時折現れて襲ってくるゼノモーフは減る気配がない。


 そんな時に猫ちゃんの呼び出しで猫ちゃんの開発部屋に向かうととんでもない事実が見つかった。



「えー、お集まりの皆さんに報告することがあるにゃり」

「前置きはいい、さっさと用件を言え」

「ぐはぁ……わかたにゃりよ」


 そう言って見せてきたのはゼノモーフの死体で、それがどうしたのかと思ったら革手袋をつけた手でゼノモーフの股間の辺りゴソゴソはじめる。



「おいバカ弟子、お主いつから変態になった」

「違うにゃり! これを見るにゃりよ」


 ポロンと取り出されたのは生殖器のように見える。



「全部にあるわけじゃなくて、ごく稀についてる奴がいるにゃりよ」

「まさか……コイツら繁殖能力を持ったというのか!?」


 そこでディルムッドがゼノモーフを調べ出しはじめて、突然、顔の部分にあたる半透明な部分を剣で叩き割った。



「ギルガメシュ、コイツらがこんなに数がいた理由がわかった」


 その半透明の中に見えた顔、それはディルムッドだけはよく知るオークの顔つきなのだそうだ。



「つまりは生贄にオークを使ったというわけか?」

「そう考えられるのが妥当だろうな」

「しかしなぜ数が少ないんだ?」

「そこまではわからな」


 この場にいるみんながいろいろと考えを出し合っている中、僕は1つの可能性が浮かんだ。



「もしかしたらゼノモーフは蜂や蟻に近いのかもしれないです!」


 蜂や蟻は繁殖の為だけに存在する。 つまり町にいる女性はこいつらによって種を植え付けられた可能性がある……

 もっともこの考えは後ほど違うとわかったけど。



「うげぇ……最悪にゃり」

「う……うむ」

「しかし仮にそうだとして何匹もこんなバケモノを産むのか?」

「産むかもしれませんね……」


 そこでヴェルさんは崩れるように倒れて気を失ってしまい、スカサハさんも青い顔がさらに青くなって見える。



「また増えるというわけか……」




 そこへゼノモーフではなく、何者かがこちらに向かってくると報告がされて、ヴェルさんは猫ちゃんに任せて僕たちは外壁の上に向かった。



次話更新は明日の予定です。

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