日頃の感謝にプレゼントを
シスターテレサに言われた通り、僕はお世話になっている人たちにプレゼントを買おうと町を歩いているんだけど、生まれてこのかた人様にプレゼントなんてものを買ったことがない。 せいぜいシスターテレサに綺麗な花を摘んできたぐらいだった。
「どんなのが喜ばれるのかなぁ?」
予定しているのは、ヴェルさんとウルドさんとスクルドさん、それとソティスさんにアレスさんを考えてる。
フレイさんとアラスカ様にも考えたけど、フレイさんとは昨日あったばかりで、会話もあまりしてないから全く思いつかないから諦めて、アラスカ様は次に出会う機会があるとは思えなかった。
雑貨屋なんかを見ていくけどどれが良いのか全くわからない。
『普段身につけているものがあれば、自分が買うには手が出ないものとかが喜ばれるだろうよ』
普段身につけているものかぁ……
ヴェルさん、ウルドさん、スクルドさん、みんな目立って何かつけている感じはしない。
ソティスさんは酒場の従業員姿以外見たことがなくて、特に身につけてるものはなかった。
ならアレスさんはと言えば、もらって喜ばれそうなのはお金っぽい……いやいやいや、あれはアレスさんの冗談だよね。 だって本気でお金に困ってれば霊峰に向かうはずだから。
「よぉ兄ちゃん、さっきから盗みでもするんじゃないかってぐらい見てるけど、一体何を探してるっていうんだ?」
「————え? うわぁぁぁぁぁ! 違います、違います!」
「冗談でそんなに驚かれるとは思わなかったが、何をそんなに悩んでんだ?」
僕の頭で考えても限界がある。 それならばと雑貨屋のお兄さんに相談する事にしてみる。
「ほぉーん、いつも世話になってる人にプレゼントねぇ……兄ちゃん、そいつぁコレか?」
指をビムっと立ててくる。
「コレ?」
「女の事だよ。 お、ん、な」
「ええ、まぁそうですね」
「兄ちゃんもなかなか隅に置けないなぁ? それならこいつで決まりだぜ!」
そう言ってイヤリングを渡してくる。
「やっぱ女ってのは宝石に弱いもんだぜ。 コイツなら間違いなく喜ばれる!」
間違いないのかぁ。 値段を聞くと1セットで、金貨1枚って言われる。 うん、それなら4セット買っても、あと金貨1枚残るからアレスさんの分も何か買えるかな。
「すいません、それじゃあそれを4セットください!」
「おー! 気前良いねぇ……って、4セットだぁ? 兄ちゃんまさか4股か?」
「4股?」
「う……い、いや、なんでもねぇ。 まぁ売れればいいか……よぉし! しっかりプレゼント用にラッピングしてやるからな!」
そんなわけで、なんとかプレゼントを買うことができて、あとはアレスさんの分だった。
アレスさんは家族もいるみたいだから、ちょっと高級な食材でもプレゼントしよう。
というわけで、マルボロ王国まで行かないと食べられないというカレーとか言うのを買って、まずは訓練場に向かった。
「アレスさん!」
「おー、マイセンか。 どうしたい?」
「えっと昨日もそうですけど、お世話になっているので、これを家族で食べてください」
カレーというのを手渡すとアレスさんが中を見て驚く。
「コイツは! まさかカレーって奴か? マジか! ヤベェこんなところで寝っ転がってる場合じゃないな。 早速嫁さんに……」
といったところで、アレスさんが申し訳なさそうな顔を見せてくる。
話を聞くと昨日の一件で、もう僕と一緒にダンジョンには行けなくなったって言ってくる。 やっぱり昨晩こっ酷くお嫁さんに怒られた、のではなくて心配されたんだそう。
「こんなもんまでもらったっていうのに、すまねぇな……」
「いえ! アレスさんには十分過ぎるほどお世話になりましたから」
そう言ったところでアレスさんが、何か考えるような仕草をしてから、僕に真剣な顔で話してきた。
「いいか、よく聞け。 お前は何かとんでもない素質を持ってる。 それは昨日オーガと戦った時に見せたあの一撃を見てそう思った。
俺にはよくわからないが、お前自身が何かわかっているんじゃないかと思ってる」
アレスさんがそう言ってくれたけど、つい昨日今日に武器を手にしたばかりの僕に何かわかるも何もなかった。
「まぁダンジョンにゃ行けなくなったが、ここに来ればいつでもお前の相談には乗ってやるからよ、いつでもきてくれや」
アレスさんにお礼を言って訓練場をあとにする頃には、日が落ちだしていて丁度いい頃合いになっていた。
次話更新は順調に書き進めば、今晩に、そうでなければ明日の朝6時頃に更新します。
思った以上に読んでくれている方が多くて嬉しい限りですが、あらすじでも書いてありますが、このサイトでは嫌われる表現が今後かなり増えていきます。
一例で言えば、殺す必要あったの? と言われるようなことです。
ブックマークもつかない覚悟で書いていますので、本当にご了承ください。




