表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/285

ドワーフは頑丈だから平気?

 今いる場所はデプス2に入った辺りまで引き返したところだ。

 そして結論から言うと、トールさんは未だ元気にピンピンしていて僕は……






 ……なんとか逃れる事ができた。

 危うくトールさんに掘られるところを、ガラナさんが変わってくれたおかげだった。


 オルクスは元々はハイオークと呼ばれる、人間とオークの間にごく稀に生まれる突然変異体で、その名残からか男女問わず非常に繁殖行為を好むらしい。


 危ないところを助けた僕の代わりに引き受けると嬉々として言ってきたので、トールさんも「穴がありゃ誰でもいいわい」ということになって助かって、部屋の隅で行為は行われたのはいいけどその声はみんなの耳にも当然届いて、全員耳を塞いでやり見聞きしないようにしたのは言うまでもない。





 どれだけ経ってもなんともない事を不思議に思いトールさんの中の気配を探せば、しっかりとフィストバスターの気配が感じられる。

 にもかかわらず一向に飛び出してくる気配はなく、助かるかもしれないと急いで地上に戻る事になった次第だ。



「原因がわかれば対策が見つかるかもしれないね」

「そうだな。 今までと今回の違いを探っていくしかないが……」


 移動しながらアラスカとそんな事を話しながらトールさんを見ると、ガラナさんとすっかり仲良くなって並んで歩いている。


 僕は今までゼノモーフに殺されていった仲間たちや知り合いなんかを思い出しながら、どこに相違点があるか考えてみるけど答えが導き出される事はなかった。





 ついにはデプス1まで来てしまい、第一階層にまで辿り着いてしまう。

 ここまで来てしまえば他の冒険者たちもたくさんいて、地上に帰るだけになる。



「お前さんの……その、死んでいった知り合いたちにドワーフはいたのかの?」

「ええ、ドワーフもドゥエルガルもいました」

「それでそいつらもフェイスハガーに張り付かれたのか?」


 そこで思い返してみると先生たちはゼノモーフに殺されたけど、フェイスハガーに張り付かれていない事を思い出した。

 僕の記憶している限りでは、ドワーフはフェイスハガーにやられているのを見ていない。



「ワッハッハ! ドワーフは頑丈なんじゃい! きっと今も胃袋から出られず腹を空かせて餓死寸前じゃろうよ!」


 それだけは絶対にないと思いつつ、結局迷宮を出て古城まで戻れてしまった。


 事の次第を報告しに冒険者ギルドに向かっていると、水袋を取り出して飲んでいたトールさんが突然大声をあげだす。


 マズい! そう思った時だ。



「酒が尽きてしまったではないか!!」


 緊張が走った仲間たちが一斉にコケる。



「トールさんまさか水袋に入っている水ってまさか全部お酒だったんですか!?」

「ん? ああ、こいつはな、儂らドワーフから見れば水じゃよ」


 ドワーフが酒好きなのは知っていたけど、まさか水袋の中身全部がお酒とは思いもしなかった。



 そして冒険者ギルドに辿り着くと、ギルドマスターをアラスカが呼びつけて事の説明をすることに。


 別室に通されて説明をしばらくしていると、トールさんの様子がおかしい。

 そう思った直後胸を押さえて苦しみ始めた。



 アラスカがギルドマスターに急いで神官を呼ぶように言って連れてこさせる。

 どうやら職員の1人に神聖魔法を扱える者がいたようだ。



「合図をしたら治療魔法をかけてください!」


 細かな説明をしている暇はなく、僕は僕です(キャロン)に手をかけて準備をしておく。


 しばらくしてバキャッと胸を突き破ってフィストバスターが顔を出してきた……のだけど、どうも様子がおかしい。



「コイツ……酔っ払っているんじゃないか?」


 気がついたスカサハさんが口にして、よく見てみると確かにそう見えなくもない。

 それに胸を突き破ったはいいけどいつものように逃げ出さずに口をパクパクさせている。



「早くしないと死ぬぞ!」


 みんな呆然とする中、唯一ペップさんが叫んだけど、僕はフィストバスターを倒さなければいけない。



「むん!」


 するとガラナさんが素手で掴んで引きずり出して僕に視線を送った後宙に投げつける。



「ハッ!」


 居合斬りで絶ってトールさんにすぐ目をやると、職員さんの治療魔法でなんとか一命を取り留めたようだった。



「そうか! 酒のおかげだったんだ!」


 つい叫ぶように声をあげてしまう。

 フェイスハガーが張り付いてフィストバスターを胸に植えつけ、突き破ってくる位置は常に胃のあたりだ。

 そこに湯水の如くお酒を飲んでいたトールさんの胃はお酒のアルコールで充満していたため、フィストバスターは酔っ払っていたんじゃないかと思う。

 そのお酒が尽きて酔いが醒めて突き破ってきた。 そう考えれば納得がいく。



「あとはそのアルコールがどれだけの量が必要かということになるな。 ドワーフが飲むほどの量が必要だと対策としては現実的ではないだろう」


 アラスカが冷静に判断した答えを言ってきた。



 迷宮の町の冒険者ギルドマスターが霊峰の事件は周知していたおかげでアラスカはもちろん僕のことも知っていて、その後の話はスムーズに進んでいき、冒険者には直ちにゼノモーフに関する情報を公開することで決まった。



 話がついて別室から出ると、あの猫の獣人の女の子が待っていた。




次話更新は明日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ