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トールの最後の願い

遅くなりましが、本日分の更新です。

 言われた通りにやると指輪が鈍く光はじめ、そして声が聞こえてきた。



『マイセンか、もう何かわかったのか?』

「実は……」


 僕は今起こった事と予想した事をサハラ様に伝える。



『それが事実ならヤバイな……急いで創造神と話をしておくよ。 よくやってくれた、サンキューな』

「サ、サンキュー?」

『ああ、ありがとうって意味だ』

「それで僕はこれからどうすればいいですか?」


 ここで返事が一度止まってから返ってきた言葉が……



『十分だよ。 あとは俺たちに任せてもらえればなんとかするさ』


 これだった。



「ここまで関わって、あとは気にするなっていうんですか!」


 なんだか頼りにされてないような返事でつい怒鳴るようにして言い返してしまい、仲間たちが僕の方を見てくる。



『いいか? ここから先へ踏み込むという事は、アラスカとの平穏な暮らしを捨てる覚悟がいるんだぞ』


 それを聞いて隣にいるアラスカを見ると、僕の顔をジッと見つめるアラスカの顔があった。

 その表情は肯定とも否定とも取れる。

 アラスカは大事にしたい、だけどそれと同じぐらいサハラ様の手助けになりたい気持ちもある。



『わかったらあとは俺らに任せておけ。 アラスカを大事にしてやるんだぞ』


 言い終えるのと同時に指輪の光が失って崩れ落ちていった。



「それで良かったのか?」

「自分でもよくわからない。 でも、アラスカの事は大事だし大切にしたいのは本当だよ」


 この気持ちに嘘偽りはついていない。 それとおそらくサハラ様の手助けになりたいと思うのは僕ではなく、僕の魂……セッターなんだと思う。


 ただアラスカの表情はなんだか嬉しそうに見えなかった。






 連絡も済んでみんなのところに戻ると、やはりと言うか色々と聞かれたけれど、だからと言ってサハラ様の事をコークさんたちに話すわけにはいかない。

 ここでもまたスカサハさんが機転を効かせてくれて誤魔化してくれる。



「む……ぐぅ」


 それと同時にペップさんが目を覚ましたのも重なって、みんなの意識がペップさんに向いてくれたのもある。



「大丈夫か、ペップ」

「ん、ああ、何ともない。 一体俺はどうしちまってたんだ?」


 コークさんが状況を説明して、ペップさんは顔を青ざめさせながらも納得したようだ。



「つまるところ、俺が先に腹からバケモンが飛び出てきて耐えきりさえすりゃ助かるって事だな?」


 強がって見せてはいるけど、明らかにペップさんは動揺しているようだ。



「あんたはそれで良いのか? 死ぬんだろ?」

「マイセンの話じゃどうにもならんのだそうじゃ。 ならばせめて助けられる命があるなら助けたいと思うのは間違っているかのぉ?」

「まったく……飛んだお人好しだぜ。 だけどよ……感謝するぜ」

「まだ感謝するのは早いぞい。 それと、もし成功したら成功報酬はしっかり貰うからの」


 あとはタイミングだけだった。

 もしトールさんが先であれば2人とも死ぬ事になって、ペップさんが先ならばトールさんだけが死ぬ事になる。





 しばらくした後ペップさんが胸を押さえて叫び声をあげはじめた。



「ペップ耐えろ! 耐えてくれよ!」


 必死にコークさんが声をかけていて、僕はいつでも居合斬りを出せるように(キャロン)の柄に手をかけて身構えておく。

 すでにペップさんの胸を突き破ろうとしているフィストバスターの気配は捉えてあり、取り逃がす可能性はまずない状態にした。



「うぐ……ぐぅぅぅぅぅ! うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 苦しむペップさんの胸をバキャッと突き破って、血を噴き出させながら真っ黒い蛇のようなフィストバスターが顔を出す。



「まだです! そいつが脱け出てから治療魔法を使ってください!」


 僕が叫ぶとフィストバスターは僕を見つめて、キュアァァァァァとまるで嘲笑うかのように声をあげた後ペップさんの身体から抜け出て一目散に逃げ出そうとする。



「ハッ!」


 それを逃すまいと僕は居合斬りでフィストバスターの『(オーラ)』を絶った。




 すぐにペップさんはどうなったか見ると、既にトールさんの回復魔法によって傷口は塞がれてショック死する事なく無事な様子だった。



「た、助かったぜ……マジであんたにゃ感謝するよ」


 トールさんにペップさんが感謝をしているんだけど、当然この後トールさんの身にも同じ事が起こって死ぬ事になる。



「うむぅ、これから我が身に起こるとはいえ、さすがにこんな死に方は嫌じゃのぉ……」


 ボソッとつぶやくトールさんの言葉に嫌な予感がよぎる。

 そしてその予感は現実のものとなった。



「すまんが……腹の中の化け物が暴れだしたら、誰か儂を殺してくれんか?」


 できれば腕の良いやつに、一思いにがいいとか付け加えてくる。


 案の定この場にいる全員が僕の事を見てきた。



「僕は! 僕はもう、仲間を殺すような事はしたくない!」


 僕はゼノモーフのせいで仲間を殺している。 どんなに消したくても消せない記憶だ。



「わかったぜ。 俺がやる、やってやる。 助けてくれた恩がまさか殺す事になるなんざ思いもしなかったけどよ」


 ペップさんが引き受けてくれる事になり、トールさんがお礼を言っている。



「あとなんじゃが……1つ最後に頼みたい事があるのじゃ」


 トールさんが誰と言わずに頼みを口にする……



「誰か儂に一発ヤらせてくれんかの? 別に性別は問わんぞい?」




 誰がいい? なんて希望を聞いたバカがいた。 ペップさんなんだけど、トールさんの目がギロリと動いたかと思うと僕のところで止まる。



「やっぱりお前さんがいいのぉ、マイセン」


 いやぁぁぁぁぁあ!


 もちろん全力で拒否する。

 だというのになぜかペップさんが妙にテンションが高くなって、最後の頼みなんだからケツの穴ぐらい貸してやれ、なんて恐ろしい事を口にしてきた。



「僕にはアラスカという妻がいます! 妻を裏切るような事は出来ません!」


 アラスカを見ながら助けを求めるように叫ぶ。 このままでは僕のお尻の貞操の危機だ。


 そのアラスカはというと……



「私はマイセンが男に抱かれても、それで愛情を失うなんて事はない」


 なんて切り返されてしまった。 酷すぎる。



「キマリだな」


 決まってない、決まってないから!



次話更新は明日の予定です。

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