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一時撤退

 氷嵐(アイスストーム)の効果時間が切れて視界が広がると、僕の視界に後から現れた悪鬼(デーモン)が更に魔法による攻撃をしてこようとしていた。



「ハッ!」


 慌ててその悪鬼(デーモン)目掛けて居合斬りを放って息の根を止めたまではいいけれど、そのせいで体勢を崩してしまいよろけてしまう。


 そこへもう1体の悪鬼(デーモン)が、脅威とみなした僕目掛けて指一本一本が剣のような爪で切り裂こうとしてくる—————


 どう気配を読んでも躱せる体制ではない。

 一撃を受ける覚悟をして防御姿勢を取って目を瞑り、その時を待ったけど衝撃はいつまでたっても来ない。

 目を開けるとゲッコとガーゴが2体がかりで悪鬼(デーモン)の攻撃の手を止めてくれていた。



 そこへ……


 6本の剣が悪鬼(デーモン)に襲いかかり、切り刻んでいく。



「今だマイセン! 君の(キャロン)ならコイツを断てる!」


 そうアラスカの声が聞こえて居合斬りを放った。





 全ての悪鬼(デーモン)を倒したところで辺りを見回して生き残った人たちを確認する。


 僕のパーティはスカサハさんが少し血の跡が残ってはいたけど、トールさんの治癒で治してもらっていて、全員僅かな凍傷が残った程度で無事なようだった。

 それに対して先にいた冒険者の方は最初の段階で7人いたはずが、今はたったの3人だけになっている。



「君がパーティのリーダーか? 助かった、感謝する。 俺はコーク、パーティリーダーをしている……いや、もうパーティとは……言えないか」


 コークさんは自分の仲間の生き残った数を見て首を落としてしまう。




 部屋で休憩をとりながらお互い自己紹介をしていく。

 当然ながら7つ星の騎士のアラスカの姿とスカサハさんとトールさんがいる事に驚いていて、加えてゲッコとガーゴを連れている事にも驚いている。

 ここでも僕の話題はなくて、パーティリーダー的にしか見られていないとばかり思っていた。


 コークさんは剣と盾を扱うオーソドックスなスタイルの戦士で、今は落ち込んでいるけれど普段は爽やかな人間らしい。

 残る2人のうち1人はペップさんと言って、両手剣(トゥーハンデッドソード)を扱う戦士で、コークさんの仲間でありライバルでもあるそうだ。 種族は同じく人間で、同郷の友人同士らしい。

 そして最後にガラナさん、種族は一目でわかる緑色の肌に口から牙が突き出しているオルクスの女性で、そのプロポーションはドラウのスカサハさんよりも胸やお尻が凄いあるんだけど非常に筋肉質で高身長だ。



「君という奴は……」

「ご、ごめん」


 ガラナさんの肉体美に見惚れているとアラスカに怒られて、それを見たコークさんたちも笑顔を見せてくる。



「そうだ、猫獣人の女の子……僕と同じぐらいか年下の子のお兄さんを探しているんですが見かけませんでしたか?」


 そういうとコークさんたちが顔を見合わせて、気まずそうな顔をしながら指を指す。

 その指し示した先にボロクズのように切り裂かれ、氷嵐(アイスストーム)で霜がついたまま横たわる猫獣人の姿があった。



「最初の攻撃で背面攻撃(バックスタブ)を決めようと接近しすぎてな……」


 猫獣人のそばに行ってドッグタグを取り出す。



「君たちは彼の妹の依頼で捜索に来たのか?」

「ついでですけどね」

「するってぇと目的は迷宮攻略か」


 ペップさんが悔しそうに吐き捨てるように言ってくる。

 ここまで仲間が減っては継続はもちろん不可能だからだろう。



 しばしの沈黙の後、コークさんが僕たちと同行させてもらえないかと提案してくる。

 どちらにしても、この先引き返すにも3人では厳しいらしい。



「得られる報酬もいらないし手伝いもしよう。 それで同行するのはどうだろうか?」

「おいコーク、いくらなんでもそりゃ人が良すぎんだろう!」


 ペップさんはその無償の提案にはさすがに反対らしく口を挟んでくる。



「残念ですが僕たちは迷宮攻略が目標ではないんです」

「迷宮攻略が目的ではないとなると、こんなところに一体何が目的があるんだい?」


 失敗したと思い口をつぐんでしまうと、すかさずスカサハさんが口を継いでくれる。



「詳しくは言えない。 同じ冒険者なら……わかるだろうよ?」


 悟れとでも言うようにスカサハさんが言うと頷くだけに留まる。


 だけどだからと言ってこのまま3人を放置していくなんてこともできない。



 迷った僕はある提案を提示した。



「1度町に戻るのはどうでしょう。 今戦った相手を見て、もっと優れた武器が必要だと思ったし、これをあの獣人の女の子に渡してあげたい」

「確かにマイセンの言う通り、今の相手とまた遭遇した場合、マイセン以外は厳しいな」

「悔しいが言い返す言葉もないわい」


 実力としてはトールさんもスカサハさんも問題はないと思う。 ただ相手が固すぎで、アラスカの持つ7つ星の剣を持ってしても容易く斬り裂くことはできなかった。 もっとも7つ星の剣の力を解放すれば倒せるとは思うけど、日に7度しか使えないらしいから気軽には使えないのだろう。



「しかし……当てはあるのか?」


 槌を武器にするトールさんには申し訳ないけど、槍を使うスカサハさんとゲッコとガーゴにはあてはある。


 チラッとアラスカに顔を向けて答える。



「行き先は霊峰の町で、カルラの武器を借りようと思っているんだ。 ゼノモーフの槍なら町を襲撃してきた時ので他にも数本あるでしょ」

「なるほど、それはいい考えだ」


 ニッコリと笑顔でアラスカが答えてくる。



 まずトールさんとスカサハさんに説明した後、蚊帳の外になってしまっていたコークさんたちにもちゃんと理由を説明して戻る旨を伝えて納得して貰った。



 話が決まり帰路につこうとすると、スカサハさんが指を指して指し示してくる。

 その先には宝箱が置いてあり抜け目がないなと思って笑うとスカサハさんが、「貰えるものは貰っておくものだよ」と宝箱に向かっていく。



 しゃがんで宝箱を調べているスカサハさんの後ろから様子を眺めていると、カチンと音をさせて宝箱の蓋を両手で持ち上げる。



「ん……なんだこれは?」


 覗いて見て僕の目に飛び込んできたもの……それは財宝でもなんでもなく、ゼノモーフの卵だった。



次話更新は明日の予定です。


いい加減そろそろあらすじを書き直さないとと思う今日この頃……


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