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グレーターデーモン

 その後も順調にデプスを進んでいったんだけど、デプス3に入ったあたりから通路に(トラップ)があったり、隠し通路や隠しドアなども多くあって、もしも僕1人だったら(トラップ)に引っかかって死んでいたか、先に通じる道が見つからないで延々と彷徨っていたかもしれない。



 そして先ほど階層最後の部屋で魔物を倒した後に休憩をして階段を下ると、今まで石壁だった場所が非自然ではあるけど土の迷宮に姿を変えた。



「ここが最終階層じゃ」


 何をもって最終階層と言ってるかというと、これ以上先に進めた者や進めたけど戻れた者がいないかららしい。

 トールさんもスカサハさんも来たことは数回あるらしいけど、あまりの魔物の強さになかなか先へ進めず、何度かいろんなパーティに加わって来たはいいものの全滅仕掛けたり、命からがら帰ってきたこともあって大抵はあまりの魔物の強さに断念する者が出て、その後パーティは決まって解散してしまうらしい。



 この2人がそうまでして挑み続ける理由を聞いたら、スカサハさんは危険のない冒険しかしないのなら、それは冒険ではなく狩猟(ハンティング)だと言ってきて、トールさんはいろんな新発見ができるかららしい。


 どちらの考えもわかるし僕にはそこに加えて、より強さの高みを目指してみたい。

 アラスカが許してくれるのならだけど。





 その最終階層の最初の扉が見えて、この階層にも扉がある事に驚いた。



「ん……中で戦っている!?」

「そのようだな」


 感じる気配の数は10。 その気配が忙しなく動いているところからそう気がついた。


 迷宮のルールで部屋で戦っている冒険者がいたら待たなくてはいけない。

 ここまで来れる冒険者はやっぱりいるんだと思いながら終わるまで一息つく。



「もしかしたらじゃが、あの冒険者ギルドで騒ぎを起こした猫獣人の兄がいるかもしれんな」

「1体減った。 どちらかはわからない」

「全滅とかはないよね?」


 そんなことを話している間に、1体の気配が無くなってからすぐに2体目の気配も消える。

 これは戦闘において当たり前のことだけど、形勢が崩れると案外一気に崩れていくものだ。 それが冒険者の方か魔物の方なのかまではわからない。



「気配が読めない……みなさんはどうしているんですか?」


 3体目が消えたところで僕は気配の動き方で冒険者の方がやられていると思って仲間に聞いてみる。



「そこは……覗いて確認だ」


 それを聞いた僕は即座に扉を開ける。


 そこでまず目に入ったものは、オーガほどの大きさの青白い巨人のようで、背中からは黒い蝙蝠のような翼に頭には山羊のような角が生えている魔物で、振るう腕の手の爪の一本一本がまるで剣のようだ。 そんな魔物が3体もいる。

 そしてその魔物に立ち向かっている冒険者がいるけど、状況的には完全に不利な状況に見えた。



「あいつだ……あいつに遭遇してパーティは壊滅的状況に陥り……仲間のドッグタグも回収できずに逃げたのだ」

「儂も同じじゃ。 まるで歯が立たなかったわい」

「あれは悪鬼(デーモン)の中でもかなり危険なグレーターデーモンと言って、生半可な攻撃ではあの表皮は傷つかない。 マイセンどうする? このままだと彼らは間違いなく死ぬ」



 もちろん、僕は答えるまでもなく助けに部屋の中に飛び込んで、一番身近にいた悪鬼(デーモン)に向けて居合斬りを放った。



 ドサっと音がして悪鬼(デーモン)が倒れると、残る2体の悪鬼(デーモン)が目の前の冒険者から僕へと視線が移った。

 その目はゾッとするほど一切の感情が読めない丸く真っ黒で、ユックリとした口調で何かを口にしだした。



「気をつけろ魔法が来るぞ!」


 突然現れた僕たちの存在に驚いたのは、先にいて戦っていた冒険者たちも同様だったけどアラスカの声で我に返って、冒険者たちも一斉に詠唱が終わるまでに悪鬼(デーモン)を倒そうと攻撃に意識を戻し、スカサハさんは1体の悪鬼(デーモン)の真後ろに次元扉(ディメンジョンドア)で接近して背面攻撃(バックスタブ)を決める!



「なっ!?」


 完璧に捉えた背面攻撃(バックスタブ)は確かに悪鬼(デーモン)に命中した。

 しかし槍は悪鬼(デーモン)を貫くことはなく、その硬い装甲で食い止められてしまい逆にスカサハさんの脚と同じぐらいの太さの指の手に掴まれてしまった。



「く……しくじったわ……」


 捕らえられたスカサハさんは必死に身をよじって逃れようとするものの、そのまま振り上げられて叩き落とされそうになっている。



「ハッ!」


 それをおとなしく見ている訳もなく、即座にスカサハさんを掴む腕目掛けて『(オーラ)』で斬り裂く。


 青い色の血を吹き出しながら腕を切断したけど、振り下ろされていた腕は勢いを保ったまま地面に落ちていく。



「ゲッコ、ガーゴ、『アタック!』トールさんは治癒魔法の準備をお願いします!」


 直後スカサハさんが地面に叩きつけられた姿が目に入ったけど、前衛である僕は救出には向かわずに片腕を失った悪鬼(デーモン)に向かう。


 ゲッコとガーゴが僕の命令通りに攻撃をしているけれど、その厚い表皮を傷つけるまでには至っていない。


 悪鬼(デーモン)の気配を読んで『(オーラ)』を乗せた(キャロン)で上段の構えから縦に振り下ろす。

 縦に半分ずつ顔がずれたように見えた直後、そのまま悪鬼(デーモン)は真っ二つに割れて青い血を吹き出しながら倒れた。



 残り1体!


 2つに割れて倒れた悪鬼(デーモン)の死を確認してもう1体の方へ顔を向ける。

 アラスカと先にいた冒険者たちが必死に攻撃を仕掛けて魔法詠唱を食い止めようとしている姿が見えた。



「なっ!?」


 僕も向かおうとした時だ。 悪鬼(デーモン)の後方に歪んだ空間のようなものが見えたかと思うと、新たに悪鬼(デーモン)が姿を見せだして驚いていた直後、雹が身体を殴打しはじめ激しい雪とみぞれが降り注いで、雹により打ちつけられる激痛と雪とみぞれによる冷気が襲ってくる。



 氷嵐(アイスストーム)の吹雪による影響で辺りが見えなくなっていて、気配しか頼りにならない。


 さっきスカサハさんが落ちた方からは2つ気配があって、アラスカが居た場所からは7つしか確認できない。

 そんな中2つの気配が僕の側から離れて向かっていく。 おそらくゲッコとガーゴだ。


 吹雪いて視界が効かないなか、気配を頼りに移動して居合斬りの間合いまで近づこうとしたけど、ここで居合斬りの欠点に気がつく。


 それは視認できないと敵味方が混在する場合、対象がわからない事だった。



 手が出せない状況のなか、次第に魔法による氷嵐(アイスストーム)の効果が切れて次第に視界が開けてくると、新たに現れた悪鬼(デーモン)が魔法の詠唱に入っていた。



次話更新は明日の予定です。

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