新たなパーティ結成
この章の最終話になります。
馬小屋の中に入るなりスカサハさんが手に持っていた短槍を構えて、トールさんも背負っていた巨大槌を手に取りだした。
「2人とも待って! ゲッコとガーゴは『ステイ』!」
武器を構えた相手に対してゲッコとガーゴも槍を構えて戦闘態勢を取り出してしまい、慌てて『ステイ』でやめさせようとするとグアグア文句を僕に言ってくる。
“挑んできたのはあっちが先って言ってるわ”
「ぬおお! 何故こんなところにゴーストがいるんじゃあぁぁぁ! 今すぐ退散してくれるわ!」
「トールさんダメです! そのゴーストもリザードマンも仲間なんです!」
……で。
「つまり……これが言いにくかった理由……というわけか?」
落ち着いたところでスカサハさんが最初に理解してくれた様子で聞いてくる。
それにしてもスカサハさんは喋るときに間が空いた喋り方をする人だなぁ。
改めて2人にゲッコとガーゴを紹介した後キャロも紹介する。
「つまりこのリザードマンはお前さんが屈服させて調教して、このゴーストがその刀に宿っておるというわけか?」
「まぁそんな感じです」
「確かにお主を主君と呼んでおるな」
ん?
「ドラウの女はソーサラーだと言っただろう? おそらく魔法でリザードマンの話す言葉を聞き取っているのだろう」
なるほど……って。
キャロの方に顔を向けるとなんかいじけてる。
“もう私は用無しなのね”
つ、疲れる……
それにしてもスカサハさんは凄い。 盗賊だと言うのにソーサラーとして魔法まで使えるし、短槍を構えた時のそれは戦士としての実力も備えているようにも見える。
トールさんは見た目外見はドワーフの戦士と言っても通りそうだけど、ゲッコとガーゴを見てから戦闘態勢を取るまでに間が見れたところから、頑丈な神官といったところなのかもしれない。
「それでいつから行くのじゃ?」
「できれば今日、今からでも」
「気に入ったわい! 儂はいつでも大丈夫じゃぞ」
「私も……問題はない」
アラスカが僕にどうするか決断を求めてくる。
「それじゃあ今すぐ行こう!」
立ち上がって行こうとしたところでトールさんが止めてくる。
「ちぃとばかし気になったのじゃが、2人は一体どういう関係なんじゃ?」
「あ、言ってませんでしたね。 アラスカは僕の妻です」
トールさんとスカサハさんの動きが止まって目を見開きながら、まるで有り得ないものを見たって顔に見える気がする。
「失礼を承知で聞きたい。 7つ星の騎士のアラスカと言えば、儂らからすれば英雄的な存在、その男はそれだけの存在という事というわけかの?」
「ああ、最高だ」
なんだか照れるな。 これから迷宮に向かうから抱きしめてあげられないのが残念だ。
ゲッコとガーゴには『フォロー』と言ってついてこさせて、迷宮のある古城のある湖に僕たちは早速向かって移動を開始する。
なんだかんだで僕がこのパーティのリーダーを任されてしまった。
「よぉお二人さん、迷宮は探索しないんじゃなかったのか?」
「あ、マックスさん、実は急遽仕事の依頼が入ってしまって」
「ほーそうかい、って凄いのを連れてるじゃないかよ」
ゲッコとガーゴの事かと思ったら、トールさんとスカサハさんの事だったみたいだ。
もっとも本人を目の前にして凄いの理由は言ってくれなかったけど、悪い意味じゃないと思いたい。
古城の前の開けた場所まで来ると、7つ星の騎士のアラスカの姿にトールさんとスカサハさん、それとゲッコとガーゴの姿に注目を集める。
僕だけ眼中にはなさそうだったけど……
迷宮の入り口になる古城の傍の牢獄に入り込んでいき、いくつもある迷宮への入り口となる場所まで来ると、スカサハさんが隊列はどうするのか聞いてきた。
「そうですね、迷宮の通路の幅なんかを見た感じだと横に3人並べそうなので、前列に僕とアラスカとスカサハさん、後列にゲッコとガーゴにトールさんが基本隊列で、デプス1の間にそれぞれの戦闘力も見たいと思います」
「ふむ……指揮は安心して任せられそうだな」
ただ不安だったので一応トールさんに前線に出られるか聞いてみると、ドワーフ族を舐めるなよってたしなめられちゃった。
入り口の差異まではわからないから、スカサハさんにどれがいいとかあるのか聞いてみると、分散させるためにあるようなものだからどれを選んでも問題はないそうだ。
僕らの番になって適当に空いてそうな扉を抜けていく。
最初の時は浮かれていてだいたいしか周りを見ていなくて改めて迷宮を見ると、通路は石壁で覆われていて縦横6メートルの非常に規則正しい四角い通路になっている。 薄っすらと明るく石壁が光っていて2ブロック先、12メートルぐらいまでは見通せる。
「君に言われて改めて来てみて、ここが異質な場所であることに気づかされたよ」
アラスカも僕が変化する部屋の事で話をしたせいか、迷宮の作りを見て不自然さに気がついたようだ。
「確かに……そう言われなければ気がつかないな……というより気にも留めなかった」
「そうじゃなぁ」
スカサハさんとトールさんも今更ながらに迷宮の作りを気にしだしたようだ。
何はともあれ、スカサハさんの話ではこの迷宮はデプス4までは確認されているらしい。 既に迷宮の中にいるため『気』を集中させて進みはじめることにした。
こうして僕にとって2箇所目となるダンジョン……今回は迷宮だけど、探索が始まろうとしていた。
次話更新は明日です。
次話から迷宮の探索になります。 いわゆるダンジョンパートになりますので、いつ死人が出てもおかしくない場所です。
主役以外は死ぬ可能性がある事だけは覚悟して読んでください。
ただし、必ず死ぬというわけではありません。




