いくつかの問題
久しぶりの本日2話目の更新です。
サハラ様の依頼を受けた僕たちは迷宮探索をする事になったまでは良かったけど、アラスカが渋い顔を見せている。
「どうかしたのアラスカ?」
「うむ……ここの迷宮探索をする上で幾つか問題があってな」
その問題を口にしていく。
まずはリザードマンの寝床と食事が1つ。
続いてこの迷宮は奥深くへ行くにつれて罠に詳しいものが必須らしい。 これが2つ。
そして前衛は僕とアラスカで十分だけど、やはり神聖魔法が使える者は必須らしい。 これが3つ。
最後に僕たちの依頼主の秘密を厳守できる者が難しいそうで、その後も口外しないと約束できる者でなければいけないだろうと。
以上の4つを解決しないと調査もままならないそうだ。
「ウィザードはいいの?」
「それを含めて口が固い者が必要なんだ」
言ってる意味がわからないと首をかしげると、僕の刀を指差してきた。
「ここに優秀なウィザードならいるだろう?」
なるほど! それで口の固い人なんだ。 でもキャロは生気を吸わないといけないはず……
「そこはリザードマンや盗賊、神官がついてくる以上、マイセンにはエナジードレインを受けて貰うしかないだろう。 まさか迷宮で……その、す、するわけにはいくまい?」
僕的には全然オッケーなんだけどね。 あ、でもアラスカ以外もいるのか……
「うん、わかった」
「そうと決まれば行動に移らななくてはいけない。 まずは今日中に彼らの寝床と食事を決めて、あとは連れて行く者だが……」
「それなら僕に任せて! 冒険者ギルドに行って募集してくるから」
なるほどとアラスカが頷いて、リザードマンの方はアラスカがなんとかしてみることになって、僕は冒険者ギルドに向かう事で決まった。
「じゃあゲッコとガーゴはひとまずこの部屋で『ステイ』してて」
早速先ほど教えた言葉の1つを使う。
ゲッコとガーゴは頷いてグアグアと意味不明な言葉を言って座り込んだ。
部屋を出てアラスカと別れた僕は、冒険者ギルドに向かって急ぐ。
僕たちは結婚式で散財しているから、あまり所持金に余裕がない。 一応ギルガメシュさんがくれたお金もあるけど、それは仲間になってくれる冒険者に支払う報酬にとっておかないといけないとアラスカに言われている。
そこでギルガメシュさんがくれたシグネットリングを提示したらいいんじゃないかとも思ったけど、それは宿屋に戻った時にどうにもならなかったら使えばいいかと独り決めをした。
冒険者ギルドに着いて早速受付のお姉さんの元に向かう。
「いらっしゃい、まずは冒険者ギルド証を提示して頂いてからご用件をどうぞ」
ドッグタグを見せると頷いて要件を聞いてくる。 そして急ぎで口の固い腕利きの盗賊と神官を募集したいとお願いした。
「口が固いかまでは分かりかねますが、腕利きの冒険者という事は迷宮の深部に向かうという事で宜しいですか?」
「はい! それでお願いします」
受付のお姉さんがにっこり笑顔で了承してくれて、明日また来るように言われた。
冒険者ギルドを出たところで、後ろから僕を追い越していった人物が僕の正面に来て振り返って立ち止まってくる。
姿格好はフードを深くかぶっていて顔は影になっていてよく見えない。
「あの、何か?」
「腕利きの盗賊を捜していると耳にして売り込みに来たにゃりよ」
そういってフードを後ろにやって素顔を見せてくる。
歳は僕と大差なさそうな獣人の女の子で、耳の形状を見る限りでは猫のようだ。
「えっと、腕利きなんですか?」
「うっわ! バカにしてるにゃりね! っていうかむっさいおっさんよりも、かわゆ〜いあたしみたいな方がよくにゃいにゃりか?」
「僕、妻がいるんで……」
「うにゃーー! 既婚者にゃりかー! どうりであたしのプリチーな容姿にぽろっと行かないわけにゃりね!」
自分で言っちゃうんだ、あはは……
「とにかく、冒険者ギルドにお願いしたんで、もし希望だったら明日にでもお願いします」
結局名前も名乗らなかったけど、まぁ本気なら明日いるかもしれないからいいか。
宿屋に戻った僕はおとなしく待っていたリザードマンたちを見ながらアラスカに報告をして、リザードマンたちはどうなったのか聞くと宿泊料金倍額で、離れの馬小屋でよければという条件で了承してくれたようだ。
早速その離れの馬小屋まで『フォローミー』と言ってついてこさせて、人気がないのを確認してキャロにまた通訳してもらいながら説明する。
“こんな立派な寝床をありがとうって”
「そ、そうなんだ……それで食事の方はどうなったの?」
「ああ、食事までは何を食べるかわからなかったから、聞いてから頼むと言ってある」
というわけで、リザードマンたちに食べ物を聞くと基本的にはなんでも食べられるそうだ。 なので、宿屋で出る夕飯はこちらに運んで食べさせる事になった。
「こんな場所でゴメンね、ゲッコとガーゴ」
キャロの翻訳で伝えてもらうと、ゲッコとガーゴがグアグア騒ぎだす。
“本当に充分贅沢だって言ってるよ”
これで贅沢ってリザードマンってどんな暮らしをしているんだろう。 少しだけ興味が湧いた。
食事姿はやっぱり手掴みで野蛮な食べ方だったけど、口にあってよかった。
“直訳すると、マジコレうめぇ。 だって”
自分たちの部屋に戻ろうとした時に宿屋の主人に声をかけられて、ゲッコとガーゴのお代を請求されて、懐からギルガメシュさんから貰ったお金を取り出そうとした時だった。
「どうした?」
アラスカが僕を見てくる。
「お金が……ない!」
「なんだって!?」
たぶんあの時の猫の女獣人にスられてしまったみたいだった。
次話更新は今度こそ明日です。




