迷宮のシステムとルール
あれから結構な数の部屋を超えていく。
もちろん魔物の選択の自由があるのを利用して、僕の苦手とするアンデッドは全部避けていった。
知っている魔物もいたけど、初めて見る名前もわからない相手の方が多い。 やっぱり所変われば魔物も変わるってとこなのかな?
それとさっき会った冒険者たちはこの変化を特に気にしている様子がなかったけど、きっとそういうものだと思っているのかもしれない。
この変化する部屋って開け閉めだけで変化するのは、中の魔物だけが変わっているのか、それとも部屋自体が変わっているのかは調べたほうがいいかもしれないな。
次の扉の前まで来て僕はコインを1枚取り出して準備をする。
扉を開けたらコインを開けたそばに置いてすぐに閉めて、気配が変わってから開けてみれば答えはわかるはずだ。
気配は1つ、内心数が少ないのは惜しいなと思いつつ扉を開けて、魔物か冒険者かの確認だけしたらコインを置いて扉を閉めた。
もっとも冒険者だった場合は変化を起こさないのだから問題ないのかもしれない。 だけど今見たのは間違いなく大トカゲだったから大丈夫だ。
気配が消えて………………そのまま感じない。
「こんな時にアンデッドなんて運が悪いなぁ……まぁコインの確認だけしたら閉めればいいか」
仕組まれているかのようなタイミングでアンデッドだったため、つい声に出して愚痴がこぼしてしまう。
扉を開ける……中にはやっぱりアンデッド……ゾンビが6体いて、ゆっくりと僕に近づいてくる。
ゾンビ程度であればさすがに僕でも倒せるけど、今回は目的であるコインの確認だけする事にした。
その結果……置いたコインの場所には何もなかった。
ひとまず扉を閉めて身の安全を確保してから考える。
間違いなくコインはどこにもなかったとなれば、この扉の先の部屋が変化を起こしているのは間違いない。
ダンジョンではダンジョン自体が変化を起こしていて、ここでは部屋のみが変化を起こしている。
変化の速さの違いは範囲的なものからなのだろうか?
この事はあとで宿屋に戻ってからアラスカに聞く事にして、もう少し先まで行ってみる事にした。
次の扉の場所について、中にいた魔物をあっさりと倒す。
魔物が持っていたもので荷物にならなさそうな金目のものは拾ってきたけど、正直全くと言っていいほど稼げない。
なんでこんなに稼げないのに冒険者が集まるのかが不思議だった。
「この部屋の中に何かあるとか?」
霊峰ではこういったあからさまに部屋みたいな場所はなかったから気にもしなかったけど、さすがにおかしい事に気がついて魔物を倒した後の部屋を調べてみる事にすると、部屋の隅にあからさまにあやしくしか見えない宝箱が見つかった。
こういう事か、と納得しながら宝箱を見る。
霊峰では魔物がいろいろと所持していたけど、ここでは魔物は金品につながるようなものはほとんど持っていない。 これはきっと部屋が変化するからなんだろう。
そして旨味がなければ冒険者は集まらないから宝箱が用意されているといったところなのかな。
宝箱に触れて蓋を開けて見る……
—————————え?
目の前が一瞬揺らいだように見えた。
「しまった! 罠……」
揺らぎが収まって部屋を見回したけど特に変わった様子は見られない。
とりあえず開けてしまった宝箱の中に入っていた護符は掴み取って、今度は歩いて部屋を見て回る。
一体何が起こったのかわからないけど何かしらあったのは確かで、考えられるとしたら鎧が防いでくれた?
こういう場合は一度引き返すべきだろうと、入ってきた扉を出ると来た時と通路の形状が違う。
扉を出てすぐに道は曲がってなんていなかった。
となれば考えられる事は1つ……
「テレポーター……」
つまり僕は完全に迷子になった。
困った。 けど、所詮はデプス1だしと開けたままの部屋に戻って先に進む事にする。
先ほどあった冒険者の話によれば、この迷宮は階層になっているらしく、迷ったらその階層から下に下る階段がある場所まで行ければ、最初に多数あった迷宮の入り口も一箇所に集まるから他の冒険者にもまちがいなく会えて、そこで帰る冒険者に同行すればいいらしい。
便利だよなぁ……
先へ進むと曲がり道の先に20もの気配がある。
そっと覗き込むと、そこには冒険者たちが所狭しと集まっていた。
安心して僕も近づいていき話を聞くと、どうやらこの階層の最後の部屋らしく、順番待ちをしていたようだ。
各階層の最後には必ずと言っていいほど、いわゆるボスのような1ランク強い魔物が現れるそうで、しかも部屋にある宝箱の中身もそこそこな金目のものがあるそうだ。
この町にいる冒険者たちはこの第1階層を攻略するだけで十分に生きていけるらしく、まるで毎日の日課のように第1階層だけを攻略して帰っているそうだ。
もちろん中に攻略組もいるそうだけど、大半はそこまで危険を冒すつもりはない人ばかりなんだそうだ。
霊峰のダンジョン組だった僕からすると、正直なとこ冒険者としてどうなんだろうと思ったりした。
そうこうしているうちに順番待ちをしていた冒険者たちがいなくなって、後続が来ないから僕だけになる。
扉の先では最後に入っていった4人が、中にいる3体の魔物と戦っているようだ。
「お待っとさん、俺ら出るから少ししたら入りな」
扉が開いてそう声をかけられる。
こういう緊迫感のないところもなんだか違和感を感じるけど、とにかくこれで僕の番が回ってきた。
扉の先のに気配が2つ現れる。
気配があるなら大丈夫だ。
僕は扉を開けて中に入り込んだ。
次話更新は明日の予定です。




