旅立ち
この章の最終話です。
アリエル様たちが進んだ先はやはりダークゾーンの先にあるゼノモーフたちが潜んでいた場所に繋がっていた。
そうでもなければニークアヴォが僕をここまで運んでなんか来れなかったはずだから。
そうなると以前サハラ様から聞いたゼノモーフを研究していたウィザードというのはニークアヴォの事だったんだろうか?
アリエル様とアラスカも何やら考え込んでいる中、ディルムッドは我関せずといった調子で武器の手入れをしていて、カルラは辺りを警戒して見回っている。
サハラ様が言ったゼノモーフを研究していたウィザードとニークアヴォが別人であれば、どうしてゼノモーフの事を知ったのかという事や、どうやってあの町を襲撃させたのかなどの色々な疑問も出てくる。
のだけど……
「帰りましょ、ニークアヴォがマイセンに言った通りならもうニークアヴォは現れる事はないわ」
どうやらこれ以上の事はサハラ様たちに話してからにするみたいだ。
そして何よりも、やるべき事を達成したであろうニークアヴォは、おそらく僕が生きている間に姿は見せる事は無いらしい。
なんだかモヤモヤするけど、ここから先は代行者や神の領域だからとアリエル様には言われてしまうと、僕たちではどうする事もできないのだろうか?
アラスカにその事を話すと、ダンジョンの帰り道で昔話をしてくれる。
神をも巻き込んだ世界の危機だった時の話で、その時にまともに戦えた者は全て人の領域を凌駕した者たちばかりで、唯一人種の中では生ける伝説の英雄であり、セーラム女帝国の女帝セーラムだけが戦えていたそうだ。
「やっぱり英雄って凄いんだね」
会ってみたいなぁ、でもアラスカの話ではセーラム女帝はあれ以降女帝国ですらその姿を見た者はいないらしく、噂では死んだなんていわれているんだそう。
だけどアラスカは不死であるセーラム女帝が死ぬ事はないって断言した。
「うん? セーラムさんならちゃんと生きてるわよ?」
アリエル様が話を聞いててあっさりと生きている宣言してくる。
昔から国の事は一切何もしない人らしく、当の本人は世界を遊び歩いているんだとか?
しかもつい数年前までは、ホープ合衆国にいたらしい……
みんな本物のセーラム女帝の姿を見た事がないから気がつかないもんなんだって。
ダンジョンを出て地上に戻った僕たちは、異常に懐かしさを感じる気がした。 なんだか凄く長い間ダンジョンにいた気分がする。
地上に帰って早速カルラを奴隷から解放してもらうと、カルラは僕に感謝してきた。
「マイセン様今までありがとうございました」
「こっちこそ今までありがとう。 それと、これからは奴隷じゃないんだから友達としてよろしくね」
「はい!」
「僕が言うのもなんだけど……ディルムッドと幸せになるんだよ」
「はい!」
ディルムッドとカルラはその数日後には結婚した。
ディルムッドが言うには、こういうことはできる時にさっさとするもんらしい。
2人はこの町に家を買って住むことになって、ディルムッドはその武術の腕を買われてアレスさんの後任の訓練場を任されることになり、カルラはシスターテレサに気に入られて孤児院で働くことに。
シスターテレサは相変わらず孤児院と宮廷司祭をしている。
変わったのはカルラとまるで親子のように仲良く孤児院の兄弟たちの面倒を見ている。
ちなみに、相変わらずディルムッドは子供が怖がるため孤児院には近寄れないままだ。
そしてここからは聞いた話になるんだけど……
ギルガメシュさんはその後もダンジョン組のトップパーティで、古代の町までたどり着いちゃったらしい。
なのでアリエル様以外の代行者に頼まれて調査を続けてくれているんだそうだ。
冒険者ギルドの受付をしているヴェルさん、ウルドさん、スクルドさんは変わらず今も受付をしていて、誰が先に結婚するかで密かに争っているんだとか。
3人とも美人だから選り取り見取りだと思うんだけど、お互いに負けないだけの結婚相手を求めるあまり見つからなくなってるとか?
他にも僕と知りあった人たちはみんなあまり変わらずといった感じのよう。
僕? 僕はディルムッドたちの結婚の後にほぼ全財産をはたいて、貴族顔負けの結婚式を挙げたんだけど、その時に神官を務めてくれたのがなんとアリエル様で、サハラ様たちも来てくれて僕たちの門出を祝福してくれた。
そして結婚初夜にアラスカと相談して、僕たちはしばらく世界を旅することに決めた。
1つは消息不明のプリュンダラーの行方を追って、あとは7つ星の騎士団領に行ってアラスカが退団するために。
だから、ここから先は僕とアラスカだけの冒険が始まる……予定だったんだけどね。
エピローグのように見えますが、次話から新章に入ります。
霊峰の町を離れる事になるので、一応一区切りにはなっているとは思います。
そして次話更新は明日の予定です。




