ついにアラスカと
新章に入ります。
アリエル様の話だと、ゼノモーフの襲撃が始まる時間は夜らしい。 とはいえダンジョンの中のため朝も夜もないから、判断は町中に灯りがともされだすのを判断基準にするように言われる。
「いいわね、灯りがともされだしたら町外れに集合よ。 遅れた場合、ゼノモーフもゴーストだから救出はほぼ無理だと思っておきなさい」
なんて恐ろしいことを言ってくる。
6人が一緒になっていても仕方がないから別れて情報収集することになるのだけど、2人1組でと言われる。
それぞれ同じ相手だと行動も変わらなくなるだろうということで、毎回ペアは変えていくそうだ。
つまりアリエル様は1度では無理だと思っているんだろう。
「じゃあ今日は私はプリュンダラーと回るわ。 アラスカはマイセンと、ディルムッドはカルラと周りなさい」
そして解散する前に今日は情報よりも町を歩いて作りを覚えるように言われた。
僕はアラスカと町を回りはじめる。
「本当にこれが全員ゴーストだというのか? 普通に暮らしているようにしか見えないな」
「うん、僕にはまったく気配を感じられないから間違いないよ」
なんて言いつつアラスカの手を握る。
2人きりになるのはダンジョンに入ってからなかったから、アラスカも手を握ったら顔を赤めながら嬉しそうにしている。
町の広さは霊峰の町よりは小さいようで、時々ディルムッドとカルラのペアやアリエル様とプリュンダラーのペアとも遭遇して、アリエル様とプリュンダラーが手を繋いで歩く僕らをちょっとだけ睨んできていた。
「やはり手を繋ぐのはやめておいたほうがいいんじゃないのか?」
「なんで? 別に一緒に行動してるわけじゃないんだから良いんじゃないかな?」
ウーンと迷うような声こそあげたけど、アラスカも振りほどく気はないみたいだからそのままになった。
「町の作りはだいたい把握できたかな」
「そうだな、あまり特別な造りもない」
改めて町を歩いてみると、作りとしては商人の姿が多く見られて冒険者っぽい人はいないわけではないけど、さほど多くもなかった。
襲撃が始まるまでまだ時間もたっぷりあったけど結構歩いて疲れてくる。
「休みたくても休む場所もないな。 何しろあるもの全て手で触れられないのだからな」
「そうだね、これで酒場に入りでもしたら料理も飲み物も掴めないからね……あ、そうだ」
「ん、どうした?」
アラスカの手を引いて僕は以前ここに来た時に利用した建物へと向かう。
扉を勝手に開けて入るとアラスカが不安そうな顔を見せてきたけど、ここが以前僕がニークアヴォに連れてこられた場所だよって説明すると納得する。
「ごく普通の家といった感じか?」
「うん、ここならノンビリ休めるよ」
アラスカが珍しそうに家を見回って、触れられるものと触れられないものを確かめている。
僕も一緒について回りながら、あの時は気がつかなかった事なんかが見つかっていった。
「ここだけ少しおかしくはないか? 触れられるものが多いように感じる」
「確かにそうだね、もしかしたらニークアヴォが潜伏している時に使っていたからかもしれないね」
「なるほど、なくはないな」
アラスカがニークアヴォに関連するものが何か残っていないか見回りはじめて、僕もそれについてまわるけどヒントになるようなものは残っていないようだった。
「何も無さそうか……」
「アラスカ」
「ん?」
振り返ったアラスカの手を取ってベッドのあった場所に連れて行く。
「ノンビリしよう?」
僕の意図に気がついたアラスカが顔を赤くさせて頷いてくる。
ベッドに腰を下ろして隣に座ったアラスカに口づけをすると、アラスカもそれに答えてきて抱きしめあう。
そのまま僕がベッドに押し倒して横になろうとした時に、僕の鎧が邪魔なのに気がついいて慌てて外そうとすると、アラスカがにこやかな笑顔を浮かべながら身体を起こして鎧を外す手伝いをしてくれる。
「そんなに慌てなくても私は逃げないぞ」
「雰囲気きわしちゃうと思って……あはは」
鎧も外して改めてベッドで抱きしめあいながら、アラスカの外套を脱がし、衣類も脱がしていく。
「君も脱いで欲しい……私ばかり肌を晒しているのは……その、不公平だ」
下着姿になるとそんな事を照れながら言ってきた。
「ごめん」
謝って僕もパンツ1枚になって、お互いが最後の下着を脱がしていって2人とも裸姿になった。
「初めてだから、その……優しくして欲しい」
「う、うん」
そうは答えたけど、いざ1つになろうとするとそんな余裕はなくなる。 というよりも理性よりも欲望の方が勝って、相手の事を思いやるよりも、早くしたい事しか頭になくなってしまう。
そこを何とかグッとこらえて腰をユックリと突き入れようとした時だった。
ガタンッ!!
急にベッドが傾いて、慌ててアラスカから離れる。 悪い事をしているところをシスターテレサに見つかった時のことを思い出してしまった。
「大丈夫、誰もいない」
アラスカは上半身を起こして焦っている僕を抱き寄せてきた。
「ごめん、違うんだ。 ベッドが傾いてる」
仰向けになっているアラスカには気がつかなかったのか、僕がそう言うと少しだけ口を尖らせながら僕が傾いたベッドの下を覗き込んでいる場所に顔を出してきた。
「これは……」
「うん、ベッドの下に隠し部屋か何かがあるね」
どうするかアラスカに相談しようとベッドに身体を戻すと、そこにはアラスカの他にキャロの姿もあった。
なんでキャロが? そう思ってキャロを見るとなんだか怒っている。
「どうしたのキャロ?」
“どうしたのじゃないわよ! アラスカさんがかわいそうだと思わないわけ?”
かわいそう?
アラスカを見るとなんだか必死に触れないキャロの口を塞ごうとしている。
“そこのベッドの下は私が調べておいてあげるから、マイセンはアラスカさんを抱いてあげなさい!”
……は?
ああそっか……
「ごめんね、アラスカ」
「い、いや、そんな事は別にいいんだ」
キャロがベッド下に消えたのを確認してからアラスカを抱き寄せてベッドに押し倒す。
「ずっと待たせっぱなしだったね」
「う……その言い方だと私が待ち遠しくて仕方がなくしていたみたいじゃないか……」
「ごめん、アラスカを抱きたい。 抱いても良いかな?」
「……はい」
ゴーストだらけのダンジョンの町で僕とアラスカは初めて1つになった。
本日分の更新です。
次話更新は明日の予定です。




