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未だ届かず

この章の最終話です。

 一息つくと移動再開する。 ディルムッドの話ではこの先のエリニュスがいた場所を抜ければデプス8だろうとのことで、いよいよ目的地である古代の町に到着する事になる。


 隊列は先ほど同様プリュンダラーが先頭で進んでいく。



「もう私でも君には勝てないかもしれないな?」

「うーん……」

「どうかしたのか?」

「実はさ……」


 小声でアラスカにレイスとの一件のことを話して、あとで剣の稽古をつけて欲しいって頼んでみると、驚いた顔を浮かべはしたけどアラスカはにこやかに頷いてくれた。



「なるほどね、あれだけの力があるけど意外な弱点があるのね」


 僕たちの前を歩いていたアリエル様も聞いていて、不意に振り向いてきてそんな事を言ってきた。



 アラスカたち7つ星の騎士団が使う感知(センス)は、まるで上空から見下ろすように居場所がわかるそうだから、アンデッドだろうが位置を把握できる。

 僕の場合は気配を辿るため、それと比べれば僕は気がつく範囲は狭く気配のないアンデッドの接近には反応できない。

 加えて騎士魔法の予測(プレディクション)も同様で、僕の場合は気配が読めないと先が見えてこないという違いがある。


 その事を話すとアラスカもアリエル様も、僕にはそれをも凌駕するだけの攻撃的な能力があるから十分だって言われてしまった。




 そんな会話をしているとダンジョンなのに草原に出て、その先に町が見える。



「デプス8だ」


 僕とディルムッドが同時に声をだす。



「あれが……古代の町なのね」

「信じられん……」

「本当にここはダンジョンなのか!?」


 初めてここまで来た3人が思い思いの言葉を口にしている。





「1つだけ確認しておくわ。 1日の終わり、ゼノモーフの襲撃の時、あたし達が襲われる可能性はあるのかしら?」


 アリエル様のその質問に僕は分からないと答える。 なぜなら前回の時は町から離れた場所に来た時にその光景を目にしたからだった。



「そうなると、それも確認しないと過去に食い殺されかねないかもしれないわけね」

「しかしどのようにして確認するのですか代行者様」


 プリュンダラーが尋ねるとアリエル様が考えるようなポーズを取って頷いてくる。



「さっきはみっともないところも見せたし、言い出しっぺのあたしが確認してくるわ。 あなた達はここで待機、いいわね?」


 もちろんそんな事を黙って頷くわけにはいかない。 僕はサハラ様にアリエル様のことを頼まれている。



「何か勘違いしているようだけど、あたしは代行者よ? 貴方がどれだけ強くても、本気を出したあたしよりも劣る事を覚えておきなさい」


 怒られてしまった……

 アラスカも僕の肩に手を乗せてきて頷いてくるから頭を下げてアリエル様に謝罪した。


 まだ僕にはサハラ様の横に立つだけの資格が無いらしい。 僕の前世の英雄セッターの望みは遠いいようだ。


 居合斬り、衝撃波(ショックウェーブ)剣圧(ソードプレッシャー)、これだけでもまだ足りて無いというのか……




 アリエル様が1人で町に向かって待っている間僕は1人、考え続けていた。



「マイセン」


 ディルムッドが僕を呼んできて振り返ると、隣に座り込んできて話しかけてくる。



「お前は十分強い。 人種の中において言えば最強に近いだろうと思う。 だが……代行者となると神の恩恵を一身に受ける故に次元が違う。 あれに近づきたいというのなら……その昔、神に挑んだ男の様に修羅の道を行く事になるぞ」


 その人物が誰なのか僕は知らないけれど、ディルムッドが言うには代行者に倒されたそうだけど、神を2人死に至らしめたのだそうだ。



「それは一体誰なんですか!?」

「そこまでは知らないが、知っているものであればここにいるだろう?」


 そう言って僕の隣にいるアラスカに目をやってくる。

 アラスカは気まずそうにしながら、その人物の名などを話してくれる。 随分長く古い話ではあったけど、すごく興味深い話だった。



「だが私は君に【闘争の神レフィクル】様のような人間にはなってもらいたくない……」


 アラスカが声を震わせながら訴えてくる。 それは僕を心の底から心配していてくれて言っているのは一目瞭然だった。



「大丈夫、話を聞いた限りだと僕と【闘争の神レフィクル】様では考え方が違うみたいだから。 僕は、ただアラスカのお父さんの英雄セッターの望みだった、サハラ様の横に立てるだけの存在になりたい。 それだけだよ」


 笑顔でそう答えたけどアラスカの顔が晴れることはなかった。



 アリエル様が僕たちの元に戻ってきたのはそのすぐ後で、やはり攻撃を仕掛けてきたそうだ。

 つまり、町での調査はゼノモーフの襲撃が終わった後から始まるまでの時間しかできない事になる。



「もう終わる頃合いかしら? 行くわよ」



 移動しながらアリエル様が全員に確認するように説明していく。


 これからあの町でニークアヴォの情報を集めるんだけど、僕たちは過去に戻ったわけではなくて既に起こった過去の場所で、存在しているのはゴーストタウンだと念を押してくる。

 ただし僕の情報から住人は自身をゴーストだとは思っていないから襲いかかってくることはないけど、もし認識させてしまった場合は襲いかかってくる可能性も否定できないからそういう言葉は控えるように言われた。


 そして最後にこう付け加えてくる。

 ゴーストはその強い怨念やらで輪廻に還らずに留まっているため、その場限りの退散させることはできても倒すことはできないそうだ。 完全に成仏させるには最低でもそのゴーストの骨と塩が必要になるらしく、これだけ古いと風化しているからほぼ無理だろうと…………




次話更新は明日です。


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