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弱点相手

 プリュンダラーさんと細く曲がりくねった道を歩いていく。



「なぜだ!」


 不意に怒鳴るように声をかけられて、驚いて当然え? とだけ答える。



「なぜお前なんかがアラスカ卿と!」

「僕にだってわかりません。 ただ自然とこういう関係になったんです」

「あのアラスカ卿がお前の一体どこに惚れたというんだ!」


 なんかイラッとくる。 僕だってアラスカが僕の何に魅力を感じたのかあまりわかってないけど、それにしたって改めて他人に言われる筋合いはないじゃないか。



「少なくとも……僕は寝込みを襲ったりしません」


 だからつい頭にきて口走ってしまった。



「そうか、その事もお前に話したのか」


 プリュンダラーさんはそれ以降はまた無口に戻って、さっさと先へ進みだす。 口からはブツブツと何かつぶやいていた。




 重苦しい空気の中、進む先に僅かに広がった空間が見えて、そこに浮遊する霧がかった姿が見えてその手には何やら武器らしいものを持っている。



「レイスか、厄介な奴が待ち構えている……」


 プリュンダラーさんがつぶやいて、僕に身振りで行くぞと合図してきた。



 レイスは実体を持たないアンデッドで、ゴーストタッチの効果がないとその霊体には攻撃しても当たらない。 魔法の武器であってもその魔力分しか通らないため、非常に厄介な相手となる。


 プリュンダラーさんは騎士魔法の聖剣(ホーリーソード)を使って青白く剣が輝いて、一時的に魔法効果を付与させる。


 並んでレイスのそばまで来ると、レイスが襲いかかってきた。

 そう思った瞬間、別の場所から攻撃される『(オーラ)』が感じられて、慌てて身をよじって躱す。 無理な体勢で躱したためその場に倒れてしまった。

 その別の場所とはもちろんプリュンダラーさんで、僕が躱した事に驚きこそしたけど倒れた僕を見てニヤリと笑ってくる。



「何をするんですか!」

「邪魔をしたか? 悪かった。 ここは君に任せろというわけだな?」

「なっ!?」

「それでは私は先に行ってアラスカ卿と合流し、君が来るのを待つ事にしよう!」


 わけがわからない! 急いで身体を起こそうとするものの、レイスは倒れている僕目掛けて手にしている武器で攻撃してきていて、避けるのが精一杯だ。


 そんな僕をニヤッと見つめたあと、プリュンダラーさんは悠々と先へと進んでいってしまった。



 よりにもよって、僕の苦手とするアンデッドでしかも霊体が相手だ。

 なんとか隙を見計らい立ち上がって、(キャロン)に手を掛けてチンっと抜き放つ。


 試しに衝撃波(ショックウェーブ)剣圧(ソードプレッシャー)を使ってみたけれど、やはりレイスの身体に傷を負わせることはできず、居合斬りも気配が読み取れない以上意味がない。

 そのレイスが手にしている武器で僕を斬りつけてくるのを(キャロン)で受け止める。



“マイセン、(キャロン)は神様が作った魔法の武器よ。 普通に戦えば攻撃は通るの忘れてない?”


 隣に現れたキャロの声を聞いて思いだす。 今までシャドーと言われる、やはり霊体のアンデッドとも遭遇することもあるけど、その時はディルムッドが全て相手をしてくれていたため、すっかり忘れていた。


 刀を構えてレイスと向き合い、久しぶりに普通に斬り合いになる。 だけどここでも僕の思わぬ欠点が出てきた。

 それは『(オーラ)』が読めないため、相手の動きが読めない……

 相手がどうしてくるかわからない僕は素人同然であり、レイスの攻撃を(キャロン)で必死に受け止めるのがやっとだ。



“うっわ……マイセンってばこんな弱点があったのね。 仕方がないから私が少しだけ手伝ってあげるね”


 そんな声が聞こえた後———



“我が眼前の敵を爆せよ! 火球(ファイヤーボール)!”


 ゴーストになったキャロが魔法を詠唱して火球を放つ。

 レイスに当たって爆発を起こして、炎で苦しんでいるところを(キャロン)で斬りつけた……





「な、なんとか倒せたぁぁぁぁぁ」


 思わずその場にへたり込んでキャロにお礼を言おうとしたら、苦しそうではないけどなんだか薄っすらとしか見えていない。



「キャロどうしたの!? 身体がすごく薄いよ!」

“えっとね、生気が足りなくなったみたい。 やっぱり私みたいな半端なゴーストに魔法は厳しいのかな”


 詳しく聞きたいところだけど、それは後回しだ。 今はキャロを助けないといけない。



「どうすればいいの?」

“うん……生気を貰えれば戻るよ”

「わかった! 僕から持ち直すだけ吸い取って!」


 キャロが僕に口づけをしてくる……触れた瞬間に身体中に悪寒が走った。 それは決して気持ちのいいものではなく、まるで命を吸い取られている感じだ。



“やっぱりキツイよね……”

「だ、大丈夫。 耐えれるよ!」

“本当はさ、あまり見られたくないんだけど仕方がないよね”


 そう言って僕のズボンを下ろしてくる。



「なっ、なにを!?」

“前に言ったでしょ? 生気は精気なの。 だから……こっちの方がたぶんマイセンも楽だし、そ、その……たぶん気持ちいいから!”


 ゴーストの癖に顔を赤くさせる。 キャロが見られるのは嫌だからって事で、僕は横になってキャロにされるがままになった。




次話更新は明日です。

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