シークレットウォール
その後も順調にデプス6まで来たところで僕が足を止める。
「ちょっとカルラ、ディルムッド、これって……」
2人も僕のところまで来て唸るような声をあげた。
「どうしたのだマイセン?」
アラスカが不思議そうに僕の隣まで来て先を見つめてるけど、アラスカにはわからないだろう。 というよりも僕たち3人だけしか分からないはずだ。
「この先に大きな空洞があるのが見えるでしょ? 今までこんな大空洞は無かったんだ」
「なるほど……」
つまり大きくここからは変化しているだろうと想像がついた。
「これだけの広さとなれば、それ相応の奴もいるのかもしれない、と見るべきだがどうするマイセン?」
僕たちが相談しているとプリュンダラーさんが痺れを切らしたようだ。
「考えても仕方がない。 進むしかないのだろう?」
そういうと勝手に先に歩きだしてしまい、仕方がなく後を追うようについていく。
「あたしにはあれが7つ星の騎士だとは到底思えないんだけど、その辺どうなのかしらね?」
アリエル様がアラスカに聞いたみたいだったけど、ため息で返事をしていた。
広間の場所の手前あたりまで来たところで、突然プリュンダラーさんがゴツッといい音をさせて頭を押さえだす。
「くそッ! 何かにぶつかった!」
アリエル様がそれを見てぷふっと吹き出している。
僕がプリュンダラーさんの側まで行って、当たった辺りを手を伸ばすと見えない何かに触れる。 そのまま触れる場所の終わりを探したけれど、どんどんみんなから放てる一方だ。
「なんか見えない壁でもあるみたいだ」
僕が叫ぶと6人一斉に手を差し出しながら見えない壁に触れだす。
「シークレットドアとかなら見たことがあるけれど、シークレットウォールは初めてでわ……」
アリエル様まで驚きつつも、次々と魔法を詠唱しはじめる。
「ダメね、魔法でどうにかなるものじゃなさそう」
「しかしそうなると相当手間がかかってしまうな」
僕たちが進むルートはないか探している間にアリエル様とアラスカが話しあっている。
「ここから進めそうです!」
カルラの声が上がって近づいて手を伸ばしてみると、確かに先に進めそうだ。
少し前進するとまた見えない壁に触れるけど、今度は横に移動できそうだ。
「こんな馬鹿げた場所、さっさと抜けるぞ」
プリュンダラーさんも僕の側まで来て手を伸ばしながら進める方向を調べている。
振り向いてアラスカたちに手招きしようとしたところで、カチッと嫌な音が近くで聞こえた。
「今の音は!?」
「知らん、何かを押したようだ」
特に何も起こらなかったからホッとしつつアラスカたちの方へ目をやると、こちらに向かってこない。 というよりもまるで壁があるみたいに手で通り抜けた先を触れている。 となれば考えられることといえば一つしかない。
「プリュンダラーさん、ちょっと待ってください。 今のスイッチで壁が動いたみたいです」
「何を言ってる?」
アラスカたちがこっちに来れない様子を見て、プリュンダラーさんが戻ろうとしてみるけど、通ったはずの場所は既に壁になっていた。
そしてご丁寧なことに、アラスカたちの姿は見えるけれど声は聞こえてこない。
「戻る道が見つからない以上、僕たちは先に進むしかなさそうです」
そう言った時、一瞬だけプリュンダラーさんが顔をニヤつかせたように見えたけど、気のせいだろうと思うことにした。
アラスカたちに身振りで先に進む事を伝えて先を進み始めると、アラスカたちに目をやると4人で別の場所を探し始めていた。
その後も進むたびに時折カチッと嫌な音が聞こえて、その度に引き返せなくされていく。
だけど僕たちはどうやら確実に先へは進んでいるけれど、このまま順調に脱け出れてもアラスカたちと合流できなかった場合、僕はプリュンダラーさんと2人で先に進まなければならなかった。
プリュンダラーさんはずっと黙々と黙りながら先へ進むルートを探していて声もかけづらい。
どれだけ経ったのかわからないけど、僕たちの前に通路が近づいている。 それはこのシークレットウォールの終わりを意味しているようだけど、それと同時に不安が的中する。
それは他にも先に進む通路がいくつか伸びているのが見えたからだった。
そして案の定、アラスカたちが辿り着いた場所は僕たちとは違う通路だった。
ディルムッドが僕に身振りでデプス7で落ち合おうってジェスチャーしてきて、僕は大きく頷いて答えて先に伸びる通路へ進んだ。
次話更新は明日の予定です。




