生還
1日1話最低どころか、3話ぐらいづつ進んでます……
アラスカ様の後ろ姿を見つめながら、僕は7つ星の騎士の戦う姿を初めて見る。
エティンと言われた巨人は、両手に持ってそれぞれのフレイルを的確に振って攻撃をしてくるけど、アラスカ様はその攻撃を悠々と躱していく。
「スゲェな……武器が振り上げられた時にはすでに避けてやがる」
「騎士魔法の予測だよな。 攻撃が来る場所がわかっていれば当たるわけがない」
アレスさんとフレイさんもアラスカ様の戦いに目を奪われている。 でもそれも僅かな間だけで、剣が届く間合いに入るとすぐに攻撃に転じたアラスカ様が剣を数回振ると、呆気なくエティンを斬り伏せてしまった。
凄かった。 夢にまで見た7つ星の騎士はやっぱりとても強い。
アラスカ様が7つ星の剣についた血糊を振り払って鞘に収めると何事もなかったように移動を再開する。
その後も魔物が現れたけど、僕たちが見つけるよりも早く発見して倒していく様は圧倒的だった。
入り口まで戻った時は既に日も落ちて暗くなっていて、篝火が焚かれている。 僕たちは無事に生還できた事を喜んで、アラスカ様に感謝した。
「本当に助かった。 もうあん時は覚悟を決めていたぜ」
「居合わせたのは偶然だから気にしないで貰って構わない」
麓にいた冒険者たちもアラスカ様の姿を見て黙ってその様子を見ていた。
「さぁて、さっさと冒険者ギルドにこれを持っていかないとな。 えらい事になっちまったぜ」
アレスさんが今度は先頭に立って歩き出した。 僕の横にはアラスカ様が歩いていて、すごく緊張する。
「君の、名前を聞いてもいいか?」
「え、あ、はい! マイセンって言います」
「そうか、覚えておこう」
微笑んくるその顔は、ダンジョンにいるときとは違って可愛らしい……
7つ星の騎士団のそれも英雄セッターの娘であるアラスカ様に名前を覚えてもらえた。 それだけで僕はすごく嬉しくて、ついさっきまで死にかけた事なんかすっかり忘れてしまった。
冒険者ギルドが見えてくると、ヴェルさんが心配そうな顔で立っているのが見える。
「ヴェルさーーん」
手を上げて声をだすと気がついてこちらに走ってきた。
「マイセン君大丈夫? 無事だった? 怪我は?」
「ヴェルさん大丈夫です。 アラスカ様のおかげで助かりました」
ヴェルさんがアラスカ様に今気がついたようで、慌ててお礼を言いはじめた。
「それよりこいつらを頼むぜ。 俺も家族のとこに戻らにゃならんからな」
そう言ってアレスさんが3枚のドッグタグをヴェルさんに渡す。 すぐに意味を理解したヴェルさんは、それを受け取ると冒険者ギルドに僕を連れ添って移動する。
アレスさんとフレイさんは報告は明日行くって言ってそこで別れた。
「マイセン! お前……無事だったのか」
「心配しましたよぉ〜」
普段ならもうとっくに寝泊まりする建物に戻っているはずの、ウルドさんとスクルドさんも待っていてくれた。
「アラスカ様のおかげでなんとか帰れました。 でも……」
僕を助けに来てくれた3人が死んでしまった。 本来であれば僕のドジのせいでこんな事になってしまった。 僕を助けに来なければ3人は死ななかったし、アレスさんもフレイさんも死にかけることはなかった。
「とにかく報告は明日聞くから、マイセン君お腹空いてるでしょ?」
ヴェルさんが夕食代を渡してくる。 そこで薄っすら目が赤くなっているのに気がついた。
「それでは私はこれで。 マイセン君、冒険者をやればこういう事は当たり前に起こることだ。 それが嫌なら君が強くなるしかない」
それだけ言うとアラスカ様が冒険者ギルドを出て行った。
僕も食事をしに〔ヒヨコ亭〕に向かうと、ソティスさんが僕のボロボロの姿を見て驚いた顔をする。
「どうしたの? すごいボロボロだよ」
「ちょ、ちょっと依頼でいろいろあって……」
「うん、でも無事で良かったね。 食事、すぐに持ってくるから」
食事が届けられて、食べながらあの時の光景が蘇ってくる。 バグベアの事、オーガとの戦い、そして最後にアラスカ様が言った言葉の意味……
アラスカ様は僕に冒険者をやめろとは言わないで、強くなれと言ってくれた。
「う……うぅ……」
気がつけば涙が溢れてくる。 今日の夕食はちょっぴりしょっぱく感じた……
そんな僕にソティスさんも気を使ってくれてか、僕のところにはこないでそっとしておいてくれたみたいだった。
ちなみにこの先もすごい勢いで書かれていってます。




