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結婚指輪

 アラスカが良いというからこの件はこれで終わり、要件も伝えた僕とアラスカはギンザを出た。



「なんかゴメん」

「いや、私も新鮮な体験ができた。 あんなドレスを着ることなんてないと思っていたからな」

「うん、アラスカすごく綺麗だった」


 ぼひっと顔を赤くさせてアラスカが嬉しそうに照れてきて、自分から僕の腕を掴んできた。



 時刻はなんだかんだで夕方、そろそろ帰らないといけない時間だ。


 歓楽街を抜けようとしたところでアラスカの歩調が遅くなって何処かをチラチラ見ている。

 その視線の先に目をやると休憩所と書かれた宿屋……ではなくて、アクセサリーを取り扱っているお店があった。


 ここにこんなお店あったっけ? まぁ良いか?



「ちょっとだけ見ていこっか?」


 僕が方向を変えてそのお店に入ってたくさんあるアクセサリーを覗き込んでいると、店主が手揉みをしながら近づいてきた。



「何かお探しで?」

「えっと、結婚の記念になりそうなアクセサリーってあるかな?」


 それでしたらといろいろと見せてくる。


 イアリングや指輪、ネックレスに腕輪にピアス……どれが良いのかわからずアラスカをチラ見すると、意外な事に耳にピアスが付いている事に気がついた。



 アラスカも意外なところがあるんだなぁ。 となると指輪か腕輪辺りが良いのかな?


 この2点を集中して探す事にする。



「恋人ですかい? それとも奥様ですかい?」

「妻です」


 店主が改めてアラスカを見て、僕の事も見てくる。



「なら、これなんかいかがでしょう?」


 出してきたのは2つのサイズ違いの指輪で、特に飾りもなく非常にシンプルなものだった。



「何処かで聞いたんですが、結婚指輪というんだそうですよ。 お互いに同じ指輪を同じ指にはめて身につけるんだそうです」

「へぇなんかそれ良いね。 じゃあそれください」

「まいどあり! お二人のお名前を伺ってもよろしいですかい?」

「なんで?」

「指輪に名前を彫るんですよ……お互いの」


 名前を言うと店主がすごく驚きつつも、ものの数分で完成させてくる。



“永遠の愛を マイセン&アラスカ”


 指輪にはそう刻印されていた。


 アラスカに1つを手渡そうとした時に店主が止めてきて、僕がはめてあげるのが良いんだと教えてくれる。 しかも薬指が良いんだとか?


 アラスカの手をとってはめてあげると嬉しそうな顔を僕に向けてきて、僕の指輪はアラスカがはめてくれた。



「ささっ、そこでぶっちゅうぅぅぅぅぅっとやっちまってくださいな」

「店主、あまり調子にの……んむぅ!」


 アラスカが抗議しかけたところに僕がキスをすると満足気に店主が見つめてくる。




「幸せに暮らすがいい」


 突然、店主の態度が変わって姿まで変わった。



「あ、貴方は、【鍛冶の神スミス】様!」


 アラスカが驚いて声をあげる。

 詳しくは僕にはわからないけど、人種の神々の中で唯一、鍛冶の神だけはスミス様とトニー様の2人で1つの神となっている。


 僕とアラスカは2人で頭を下げて感謝した。



「一応、それには魔法の力もある」


 指輪を見つめるけど特になんの効果も感じられない。



「いずれわかる時が来るかもしれぬし、来ないかもしれぬ」


 曖昧な説明をするだけするとスミス様の姿が消えていき、残された僕たちがいた場所を確認すると廃屋の中だった。



「結局のところわかる時が来た方が良いのか悪いのかすらもわからなかったね」

「神から賜ったものだ。 どういう理由であれ益となるのは間違いないだろう」

「そうだね。 どちらにしても神様がくれたお揃いの結婚指輪だよ!」

「そうだな」


 アラスカも嬉しそうな顔を浮かべながら、指輪を見つめている。



「帰ろう」



 アラスカが僕の腕を掴んできて、寄り添いながら歓楽街を後にして孤児院に向かって帰ろうとしていた時だった。



「ア、アラスカ卿!?」


 僕たちの歩く先からそんな声が聞こえた。




次話の更新は明日の予定です。

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