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 歓楽街に入ると雰囲気が一転して、昼間だというのにあちこちからお酒の匂いが漂う。

 もちろんここにもゼノモーフの襲撃があったようで、あちこちに傷痕が残されているけどあまり気にしている風ではなかった。


 仕事柄こういう場所に来る事もあるのか、アラスカは別に慌てたりしている素振りもなく僕の腕を掴んで歩いているのだけど、さすがに休憩所と書かれた宿屋を目にすると顔を赤くさせながら挙動不審な目の動きを見せていた。



「ディルムッドの居る場所は……本当にここなのか?」

「うん、冒険者として稼いだお金はこういうところでパァッと使って楽しむものだってよく言ってるからね」


 ううむと唸り声をあげながら歩いていく。

 そして目的のお店に辿り着いて中へと入ろうとすると、案の定アラスカが止めてくる。



「お、おい! まさかここに入ろうというのか?」


 アラスカが慌てるのも無理はない。 何しろお店の名前は〔ギンザ〕と言って、超高級にして店構えからもゴージャスな男性専門の酒場だからだ。


 僕が頷くと諦め顔で一緒に向かう。 酒場の入り口の前に立っている男が僕を見ると頭を下げてきた。



「ディルムッドは来てる?」

「はい、ただいまお愉しみの頃合いかと思います」

「そっか、ありがとう」


 もう何度も足を運んでいたせいで、慣れた感じでお店のドアを開ける男の人にチップを渡して入っていく。 アラスカはまるで不審者のようにキョロキョロ辺りに目を向けていた。



「あらマイセン様いらっしゃいませ。 という事はディルムッド様に御用ですね?」

「うん」

「今日はいつもお連れの方とは違うようですわね?」

「うん、僕の妻だよ」

「あら……奥様をこの様なお店にお連れになるなんていけない方ですわ。 もっとも、マイセン様はいつもお店の方はついででしたわね」


 慣れたやり取りをしている相手はこのお店のオーナーのソウゾウさん。 もちろん本名じゃなくてお店での名前。

 ここでは源氏名? とかいうのがあって、人気のランクに合わせて名前をつけられるんだそう。


 いつもディルムッドが座っている方を見ると、僕に気がついて片手を挙げながら片目を瞑ってみせてくる。

 ダンジョン組トップパーティでドラウ特有の深い彫りのディルムッドは女性に人気らしく、数名の綺麗なドレスを着込んだお店の女の人に囲まれているのもいつも通りだ。


 僕が席に向かうと、女の人たちが席を空けてくる。 僕の横にアラスカが座ったところで女の人たちから一斉に僕の隣に座ったアラスカについての質問の嵐がはじまった。



「マイセンさんの奥様なんですか!?」

「どうりで全然私たちを相手にしてくれないわけなんですね」

「綺麗な人。 ここで働いたら間違いなくトップに立てると思うよ!」


 アラスカ相手にキャイキャイしはじめて、アラスカは困惑した表情で受け答えをしていた。



「それで? ここに来たって事は……行くのか?」

「うん、ただちょっとだけ今度は趣旨が違うんだけどね」

「ほぉ?」


 僕がディルムッドに説明しはじめると、気を遣って席を離れはじめる。 ただその時アラスカが半ば強制的にどこかに一緒に連れていかれたけど、まぁアラスカ相手に喧嘩売る人はいないだろうし、ここの人たちは悪い人じゃないから女性同士任せる事にした。



「つまり代行者が加わったという事だろう。 半端な冒険者が加わるよりも心強いじゃないかな?」

「まあね」


 説明が済んでディルムッドは特に気にしている素振りはなさそうだった。



「あともう1つあるんだけど……」

「なんだ? 言い難い話なのか?」

「実はね……」


 カルラがディルムッドに好意があるみたいだという事を伝える。 当然ディルムッドは僕の奴隷である事を指摘してくるけど、僕はディルムッドがその気があるのなら奴隷解放するって言ってみる。



「奴隷といえば結構な財産だ。 しかもカルラぐらい若い女となれば相当なもんだろう?」

「僕は譲り受けただけだし、カルラには幸せになってもらいたいって思ってる。 それに奴隷はいらないよ」

「ふむ、その話がもし本当なのであれば考えなくも……」


 そこで視線が僕から僕の後方に移って目を向け開きだす。

 気配で女性たちが戻ったのはわかっていたけど、ディルムッドの驚き様に僕も振り返って視認してみる。


 そこにはいつもいるお店の女の人の他に、凄い綺麗なドレスを身に纏ってとんでもなく綺麗で可愛い女性が立っていた。

 もちろんそれはアラスカ以外ない。 ないのだけど別人の様だった。



「ど、どう……だ?」

「凄く綺麗だよ、アラスカ」


 僕が見惚れていたら、他のお客さんも気がついてアラスカが指名されている。 何を馬鹿な事をって思っていたら、数名のお店の女の人に連れられて行ってしまう。 アラスカも状況が理解できていないみたいだった。



 はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっ!?


 慌ててソウゾウさんに声をかけようと探すけど姿が見当たらない。



「あ、あのお客さん、すぐに手を出してくるエロ親父だ」


 うおぉぉぉぉ! 僕のアラスカがぁぁぁぁ!




次話更新は明日です。

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