進むべき道
ニークアヴォが神になる前の生まれ育った場所こそが、ダンジョンにあった町だったようだ。
「くそっ! 僅かだが繋がりが見えてきた。 俺は1度神界に戻って創造神に相談してくる。 アリエルには済まないが太古の町の調査をしてくれ」
「はぁ……仕方がないわね。 【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者として尻拭いしてくるわ」
「主よ、我はどうする?」
「赤帝竜は俺がいないと止められる奴がいないから、俺と一緒にきてくれ」
「随分と酷い言われようだが、あながち間違ってはない。 それに主といられる方が良い」
なんだかどんどん話が進んでいって、僕たちは話についていけなくなっていて、その光景をボンヤリ眺めていた。
「アラスカ、お前にアリエルを任せる。 守ってやってくれ」
「わかりましたマスター、ですが私もその場所までは辿り着いていないのですが」
「道案内は隣にいるアラスカの旦那がいるだろ?」
急に僕に振られて驚いてアラスカを見ると、アラスカは顔を真っ赤にさせて頷いてみせている。
「マイセン、そういうわけだからもうしばらくのあいだ新婚生活は諦めて俺につき合ってもらえるか?」
「僕は、サハラ様の……マスターの横に並び立つ為にこの力をくれた、英雄セッターの思いを遂げてみせます!」
「お前……」
サハラ様が僕の目をじっと見つめてくる。 その瞳は僕の心をまるで見透かすようで、恐怖すら感じる。
「セッターの魂に呼応したのか。 セッターの奴も余計なことをしやがって……」
サハラ様と赤帝竜様が神界に戻ろうとした時だ。
「マイセン、アリエルの身に何かあったら許さないからな。 それと人の身で神の域に到達しようとするのはいいが……ほどほどにして、アラスカの事を大事にしてやれ」
そう言い残して姿が消えていった。
「あーあ、行っちゃったわね。 仕方がないとはいえサハラさん、いつも赤帝竜ばっかりそばに置いてズルいんだから」
アリエル様がそんな愚痴をこぼしている。
「アラスカもキャロンもマイセンもあんまりあたしの前でイチャついていたら許さないわよ?」
「ええっ! ダメなんですか!?」
「マイセン!?」
“私まで!?”
「当然よ! 八つ当たりなんだから。 キャロンさん? あたし一応【自然均衡の神スネイヴィルス】の神官でもあるし、サハラさんと悪鬼やゴースト相手にしてきたから、強制的に成仏させる方法も熟知している事をお忘れなくね?」
アリエル様の顔が怖い! 怖すぎる。
アラスカも引きつった顔をさせて僕から少し距離を置いて、キャロに至っては刀の中に逃げ込んでしまった。
アリエル様が落ち着いたところで今後の話に変わっていく。
アリエル様は神官にしてソーサラーで、神聖魔法とウィザード魔法両方が使える魔法のエキスパートに加えて、始原の魔術まで使いこなせるんだそう。
「それじゃあ明日にでも出発するわよ。 この3人で十分でしょう?」
「えっと、カルラが……」
「カルラ? ああ、奴隷の子ね。 うーん、強制的に奴隷解除してもいいんだけど、本人の意思も尊重した方がいいわね」
というわけで、アリエル様を連れて孤児院に戻っていくことになる。
「私も行きます! お願いします、連れて行ってください!」
説明して第一声がこれだった。
彼女がどうしてここまで一緒に来たがるのかどうしてもわからず、尋ねても答えようともしない。 ただ一緒に同行したがるだけだった。
そしてアリエル様もこれにはあまり否定的ではなくて、本人の意思を尊重したらと投げやりにもとれる返答が返ってきた。
「マイセン……確かニークアヴォといた女性の名前、ディアって言っていたわよね?」
投げやりな返事をしていると思ったら、急に今更ディアさんの事を聞いてくる。
「明日ここに来るわ。 あたしは急用ができたから行くわね」
そういうと孤児院を走って出て行って、直後姿が見えなくなった。
「なんだったんだろう?」
誰にと言わずに独り言のようにつぶやくと、アラスカまで考え込み出しはじめている。
「マイセン様、ディアムッド様はどうしますか?」
「カルラも来るのなら声だけはかけなきゃ悪いでしょ」
「なら! 私が今から報告に行ってきますね!」
ん? カルラが妙に嬉しそう……えっとこれってもしかして……
「ねぇカルラってさ」
「はい」
「ディルムッドの事好きなの?」
1年近い付き合いの中で見たことがないぐらい慌てふためきはじめて、必死に否定してくるけど丸わかりだ。
そうだったんだ。
次話更新は明日です。




