いろいろな疑念
僕はそこで見た古代の町の事を全てサハラ様に話す。
「にわかには信じられないが……ウェラ、確認を取ってもらえないか?」
アリエル様でもルースミア様でもない誰かに声をかけている。
「あの……ウェラさんとは誰なんでしょうか?」
「ん? ウェラは【魔法の神エラウェラリエル】の事だよ」
「あたしと、ルースミアとエラウェラリエルはサハラさんの奥さんなんだよ」
はい!?
「ち、ちなみに気になっていたんですけど、ルースミア様ってまさか……」
「我は元は赤帝山に住んでいた赤帝竜だ。 今は安住の住処であるサハラと共にいるがな」
えっと……つまり、サハラ様は世界の守護者で、【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者アリエル様と【魔法の神エラウェラリエル】様と赤帝竜様を奥さんにしちゃってるんだ……
うひゃーって驚いているところで、サハラ様が何か頷いている。
「少し時間がかかるようだ」
「それならあと、そこにはゴーストになった住人が今も最後の日を繰り返している事も伝えてください!」
「な……なんだって!? それは本当か? なんでそんな事がわかるんだ?」
サハラ様が驚いてくる。 なのですっかり忘れてキャロから聞いた事を口にしてしまった。
当然半ゼノモーフになったキャロの事は知っていて、どういう事か問い詰められてしまう。
「え、えっと……それはですね……」
どうしよう、喋っちゃってもしキャロが消されでもしたら嫌だ。
「マイセン、大丈夫だ。 マスターは君が考えているような事は決してしない。 キャロンも安心して出てきてほしい」
どうやらアラスカは本当にあの時お墓で会っていたようだった。
“それじゃあ、お邪魔します。 初めましてではないですね。 あの時は本当に申し訳ありませんでした”
キャロが姿を見せて謝罪をする。 服はあの町で手に入れたものを身につけているため裸ではない。
「なるほど、その刀に宿ったのか。 しかしたいした度胸だよ、輪廻に還る道を選ばずに自由のなくなるゴーストの道を選ぶなんてね」
“今のところは結構自由にしているつもりです”
さすがにこれにはサハラ様も苦笑いを浮かべている。
「それで? 君はなぜその太古の町が最後の日を繰り返していると気がついたんだ?」
“ひとことで言えば勘です。 あの時マイセンと一緒にあの町に取り残されて町をうろついて気がついたのですが、みんな自分たちがゴーストである事に気がついていないようでした”
生者である僕とゴーストであるキャロを見てもなんの反応もないことや、町から少し外れればダンジョンが広がっている事にも気がつかないこと、そして何よりも服などのデザインがとても古いものなんだそうだ。
つまりあの時デザインが可愛くないと言っていたのはこういう意味だったのか。
キャロの話を熱心に聞いていたサハラ様が、全てを聞き終えると頭をかかえ出して悩んでいるようだった。
「どうしてそんなに悩んでいるんですか?」
つい不思議になって聞いてしまう。
「相手が神算鬼謀のニークアヴォとなるとな、下手に動けば相手の思う壺になってしまうんだ」
そんなに頭のいい人だったのか……
でもそうなると疑問も残る、それはなぜあの時僕を殺さなかったのかだ。
それだけ頭が良いなら僕のことも調べているだろうから、あそこから食料も水も無ければ生きて帰れる可能性がほぼ無いのはわかるんだけど、0では無いはずだ。
なのでその疑問をサハラ様に聞いてみる。
「一応ニークアヴォは神の属性を持つから、人種を殺すことはできないんだ。 もっともやろうと思えばできるが、それは間接的にしかできない。 だから放置することにしたんだろうな」
「でも、こうして生きて帰ってきてしまいました。 これは想定外なんじゃないですか?」
「想定外というよりは、どちらでもよかったのかもしれないな。 目的は達成したんだからな」
そういうものなのか……
“あの、1つ確認したいんですが、聞いてもよろしいでしょうか?”
キャロが不思議そうな顔でサハラ様に尋ねる。 サハラ様が頷いたとこで言葉を続けた。
“そもそもなぜ、ニークアヴォは神々を、創造神を裏切ったのですか?”
「そりゃあ逆鱗にふれて地上に追放されたから……いや、待てよ……
ウェラ、追加だ。 ニークアヴォは何番目に神になったか調べてくれ」
しばらく待ったあと、その質問で繋がる答えが導き出せたようだった。
「どうやら神になる前、その太古の町の住人だったようだ」
次話更新は明日の予定です。
なんだか思い切り本編に関係する話になってきてしまっているような……
ちなみに目次の1番上、タイトルの上に時の旅人サハラシリーズと書かれたところを押していただけると、シリーズが全て見られます。
と、ちょっぴり宣伝でした。




