甘いひと時
目が覚める……
「起こしてしまったか?」
肩に心地よい痛みを感じながら顔を横に向けると、ほつれた髪の毛に幸せそうな笑みを浮かべたアラスカが僕の鎖骨辺りに頬をくっつけたまま間近で見つめている。
「今までで最高の朝だよ、おはようアラスカ」
「おはよう……あなた」
めちゃくちゃ可愛くて、空いている手で抱き寄せて口づけをする。
「結婚式、できたらしたいね」
通常、王族や貴族でもない僕たちは、結婚のお祝いに親しい人たちが集まって食事をするというのが一般的なんだけど、一部の豪商なんかは神殿で結婚式を挙げて披露宴を行ったりもしている。
「それは大変なお金がかかるぞ?」
「けっこう貯まってるし、アラスカの花嫁衣装が見てみたいからね。 使い切ったってまた貯めればいいよ」
アラスカが微笑んで僕に跨ってキスしてくる。 ちょうど上から抱きしめられている状態になって、腰を下ろしている位置はお互いの陰部が当たっている。 もちろん服は着ているけど。
「私で……感じてくれているのだな」
「当たり前だよ。 というよりもう我慢の限か……い?」
コンコンッ!
慌てて離れて飛び起きて返事を返すと、扉が開いてカルラが目線を下げたまま入ってきた。
「サハラ様たちがお見えになられました」
いいところだったのになぁ……
「うん、ありがとうカルラ。 すぐに行きますって伝えておいて」
「はい」
扉が閉められて、アラスカを見るとやれやれといった表情を見せてきた。
「続きは今夜しよう? ね?」
「……そ、そうだな」
着替えというほどのものもなく、刀だけ腰に吊るしてアラスカを待っていると、僕の事をジッと見てくる。
「うん?」
「み、みみみ、見ているのか!?」
「前に慣れてるって言ってなかったっけ?」
「確かに言ったが……その、好きな人に見られていると思うと……恥ずかしい……」
なんて可愛らしいことを言ってくる。
「だって服着るだけじゃないの?」
「その、下着も替えたいんだ……」
言ってる意味がわかって慌てて顔を背けるんだけど、チラッと覗くと下着を下ろそうとしたところで僕と目が合う。
「エッチだな、君は」
「ご、ごめん!」
僕の背中越しで着替える音が聞こえてくる。
「もう大丈夫だ」
振り返るといつもの左右の長さの違うアシンメトリーのスカート姿に、7つ星の騎士団の外套を着込んだ姿になっていた。
「前々から思ってたんだけど……」
「うん? どこかおかしいか?」
「大きい動作を取るたびにパンツが見えそうになってて……」
そう言うとアラスカが「ああ」と声を上げてスカートを捲り上げてくる。
「ちょ!」
「これは下着じゃなく男で言うところのズボンのようなもので、下着の上からこれを着ているから問題ない」
アラスカはそう言うけど、やっぱりぱっと見パンツが見えているみたいで目のやり場に困るんだよなぁ。
「なんだ……まさか君は私と会った頃からそんな目で見ていたのか」
少し呆れられたような目で見つめられるとさすがに自己嫌悪に陥る。
「う……その、ごめん」
妖しく僕を見つめてきたかと思うと抱きしめてくる。
「もう、いつだって好きに見られるのだし、君の手の届く場所に私はいるだろう?」
「そ、そうだね、僕のお嫁さんなんだもんね」
ほっぺたに口づけをしてくる。
「さぁ、あまり待たせると余計な勘ぐりをされてしまうから行こう」
「うん」
なんだかこれから戦場にでも行くような気分だ。 気を引き締め直して扉を開けて出て、待っていたカルラの後について孤児院の外に出て行く。
孤児院は朝からシスターテレサとカルラに任せることになるから大変だろうけど、笑顔で送り出してくれた。
孤児院の外に出ると、サハラ様とアリエル様、それとルースミア様が待っていて、少し離れた大木の場所……キャロの墓の側で腰を下ろして話すことになった。
そしてサハラ様の第一声で僕は凍りつくことになる。
「マイセン、君には死極行きが確定した」
次話更新は明日になります。




