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ニークアヴォとは

 その日からは僕とアラスカは当たり前のように一緒のベッドで眠ることになって、しかもシスターテレサがニヤニヤしながら自分の部屋を僕たちにあてがってくれる。


 アラスカはその意味がわかって顔を真っ赤にさせて、僕も意識しちゃってアラスカの顔を見れなくなる。




 食事もお風呂も済んで、普段ならシスターテレサが寝る部屋に僕とアラスカが2人きりになる。


 どうしよう……

 これってつまるところこれからアラスカと……


 隣にいるアラスカの顔を見ると真っ赤にさせた顔で上目遣いに僕を見ている。 こんな顔もできるだって思うほど普段あれだけ凛々しいアラスカが肩をすぼめて小さくなっていた。



「あの……アラスカさん?」

「う、そ……そのだな、言ってなかったが……実を言うと、私はこういう事するのは……は、初めてなんだ……」


 なんて事を言ってくる。


 僕だって初めてだけど、こういう時って女の人に恥をかかせたらダメなんだよね。



 ひとまず2人ベッドに腰をおろしたまでは良いけど、会話も途切れてどうしたら良いかわからなくなる……

 とりあえず何か話をしないと……



「あ、あのさ……」

「ひゃい!」


 僕もアラスカもお互いテンパってるのが丸わかりだ。

 そんな僕はここでミスを犯してしまう。



「昼間に聞けなかったけど、ニークアヴォって誰なの?」


 話題がなくてつい出てしまったんだけど、その名を口にした瞬間、アラスカの態度が一変して普段の雰囲気に戻ってしまう。



「そうだな……マイセンには言っておくべきか……」


 自分で話題を振っておきながら後悔しつつも、ニークアヴォについて知りたかったのも事実だ。


 アラスカが思い出すように顔を上に向けて話し出す。 それは遠い昔、ララノア協定が結ばれたマルボロ王国の女王、ララノアの父ヴォーグが若き王の時代の話のことまで遡る。

 その頃はまだサハラ様が【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者様だった頃らしく、アリエル様も代行者に仕えるゴッドハンドとか言われる頃の話らしい。


 その頃に人種の神をも巻き込む大事件が起こって、人種の神々は創造神の逆鱗に触れて地上に追放されたのだそうだ。

 その中にはそのまま創造神を裏切った神もいて、その中の1人が【勝利の神アロンミット】で、【闘争の神レフィクル】によって倒されたらしい。 そしてその裏で手を引いていたのが……【商売の神ニークアヴォ】だったという。



「今も消息が不明らしく、マスターたちは行方を追っているのだ。 そして今回突如出現したダンジョンを怪しんで姿を見せたというわけなのだ」


 ずいぶん長い昔話を聞かされたけれど、僕の理解力ではわけがわからない次元のもので、正直なところふーんっていう感じで聞いていた。



「今の話を聞いて何も思う事はないか?」

「うーん……なんか壮大過ぎてついていけない感じかな」

「問題なのは知らなかったとはいえ、君はニークアヴォの手伝いをしてしまったという事にあるんだ」

「そんなこと言われても知らなかったものは知らなかったんだから仕方がないじゃないかな?」


 そうだなってアラスカは言うけど、その表情は暗い。

 余計なひと言のせいで変な方に話が進んでしまって、すっかり雰囲気も何も台無しになってしまった。



「ゴメンねアラスカ、せっかくの雰囲気を台無しにしちゃって……」

「いや……ならば1つお願いをしても良いだろうか?」

「お願い?」

「そ、そうだ……その、う、う、う……」

「う?」

「腕枕をしてもらいたい……」


 顔を赤くさせながらそう訴えてきた。



「うん、いいよ」




 僕がベッドに横になって腕を伸ばすと、そこに頭を乗せてくる。

 抱き寄せるように腕を曲げるとアラスカも僕に横向きに抱きつく形になった。



「どう?」

「ああ、とても……幸せな気分だ」


 笑顔を見せて片手は抱きしめるように、片足は僕の足に絡めてきた。



 高鳴る僕の鼓動をよそに、少しするとアラスカの可愛い寝息が聞こえてくる……


 こんな寝顔を見せられたら、手もだせないよなぁ……



 柔らかなアラスカの感触を身体のあちこちに感じながら、僕も眠りに……つけるはずあるわけがない!


 アラスカの満足そうな小さな寝言と寝顔を眺めながら、しばらくすると気がつくと僕も眠りについていた。




真夜中の更新になります。

本日後ほどもう1話更新します。


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